(1)  中学校における授業研究
   1年目の中学校における授業研究は第1学年「アルトリコーダーにチャレンジ」において生徒が個性的,創造的な学習活動をより活発に行うことができる指導の在り方を究明した。
  @  個性的,創造的な学習活動をより活発にするための手だて
     生徒のよさや可能性を発揮できる題材の設定
       アルトリコーダーの指導において,生徒達に「できた」,「吹けた」という満足感や達成感を味わわせるために,左手のみで演奏できる容易な教材曲を多く扱った題材の設定を行った。
     基礎・基本の定着を図る段階的な指導
       左手のみでできる教材を準備し,ドからソまでの運指や様々な奏法の技能習得を行いながら「曲を仕上げること」や「表現を工夫すること」のプロセスを学ぶことができる教材構成を工夫した。第一段階は単に運指のみの指導,第二段階ではノンレガート奏法とポルタート奏法を自然に吹き分けていることに気付かせ,第三段階ではノンレガート,ポルタート奏法に加えてスタッカート奏法とレガート奏法の吹き分けを,第四段階ではそれらの奏法を工夫して独自の曲想づくりを,第五段階では仕上げの教材曲を演奏させるという段階的な指導を考えた。
     複数の学習の展開や習熟度を考慮した指導法の工夫
       曲想や表現を工夫する活動では,複数の学習展開を用意し,生徒の興味・関心や習熟度を考慮したコース別学習を取り入れた。単に奏法を工夫する活動のみのAコース,奏法の工夫に強弱の工夫をするやや高度なBコース,さらに,和音や補助音を加えるCコース,運指をもう一度練習してから奏法の工夫に取り組むじっくり型のDコースの4コースを設定し,基礎的な技能の習得に加えて発展的に様々な表現の工夫ができるように配慮した。
  A  授業研究の成果と課題
     リコーダー学習は,単なる演奏技術の習得に終わらせず,個性的,創造的に表現することの楽しさを感じ取らせるのに有効であった。
     左手のみで演奏できるドからソまでの容易で楽しく活動できる教材を数多く演奏する学習は,生徒に満足感や達成感を与えることができた。また,リコーダーに対して苦手意識があった生徒に対しては,苦手意識を解消するのに効果があった。
     生徒の技能や興味・関心等,実態を踏まえて教材構成を工夫し段階的に指導した。生徒全員が「運指を完全に覚えた」と答えていることなどから,段階的指導は運指や奏法の基礎・基本の定着を図るのに有効であった。
     曲想や表現を工夫する活動ではコース別学習を取り入れ,個性を発揮しながら自由に発想できるような授業を行った。その結果,生徒は自らの興味・関心や技能を考えながらコースを選択し表現を工夫することにより,創造的な学習活動をより活発に行うことにつながった。
     コース別学習を行うにあたっては,生徒への教師のかかわり方をさらに研究していきたい。
    2年目の中学校における授業研究は,次の通りである。


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