国立特殊教育総合研究所の充実
   
  1.  国立特殊教育総合研究所は、独立行政法人に移行するに当たって、我が国の特殊教育のナショナルセンターとしての機能を高めるため、特に次のような機能を充実すること。

    @  国の行政施策の企画立案及び実施に寄与する研究を行うとともに、国内外の研究機関や各都道府県の特殊教育センター、盲・聾・養護学校、小・中学校等との協力を推進すること。また、課題に応じて総合的、弾力的に研究に取組める体制を整備するとともに、特に大学等の研究機関との協力を進め、研究の深化・高度化を図ること。
    A  体系的、専門的な研修の一層の充実を図るとともに、情報通信技術を活用して特殊教育に関する専門的な講義や新しい課題に対応した講義等を全国に配信するなど、各都道府県の取組を積極的に支援すること。
    B  教育相談について、臨床的研究との関連を深め、相談活動の在り方や方法に関する実際的な研究を充実するとともに、インターネット等を活用して都道府県等の特殊教育センターとの間で全国的な教育相談情報の流通を促進するようなネットワークの整備を検討すること。
    C  特殊教育のデーターベースを充実し、広く一般への研究成果の普及に努めること。また、教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)等を整備するなど、その情報発信機能の充実に努めること。
    D  特殊教育分野の国際共同研究や国際協力事業を推進するため、引き続き、ユネスコと共催している「APEID 特殊教育セミナー」の充実を図るとともに国際機関や諸外国の研究機関との連携、協力、交流を積極的に推進すること。
    (1)  国立特殊教育総合研究所は、昭和46年に設立された我が国唯一の特殊教育に関する総合研究所であり、実際的な研究、専門的な研修、教育相談、情報普及、国際交流等幅広い分野にわたって多くの成果を挙げている。
 研究については、例えば特殊教育に関する指導内容や指導方法など、主として実際的な研究を総合的に実施してきている。具体的には、@障害種別に組織された各研究部・室ごとの基礎的、日常的な一般研究、A特別な研究テーマについての研究部・室の組織を超えたプロジェクトチームによる特別研究、B国内外の特殊教育の現状や動向に関する調査研究など、これまでのべ約470課題にのぼる研究が実施されている。
 研修については、研究の成果を活かし、長期研修(1年間)及び短期研修(3か月)を行い、特殊教育関係教職員の指導者の養成と中堅教員の資質の向上に努めてきた。平成11年度までの両研修の修了者は6千4百人にのぼっている。これらの研修は、認定講習の指定を受けており、単位修得者はのべ1千6百人近くになる。また、新任の校長・教頭講習会を行うとともに、教育相談、通級による指導、学習障害など時代に応じた重要な課題について人材の養成を行い、各都道府県の特殊教育を担う教職員の専門性の向上に大きな貢献をしてきた。平成11年度までのこれらの講習会の総修了者数は、3千人を超える。
 教育相談については、家庭等からの依頼に応じて障害のある子どもの養育や教育に関する相談が行われており、平成11年度までの相談総件数は5千件を超えている。
 情報普及については、内外の大学や研究機関の研究論文集や盲・聾・養護学校等の教育実践研究論文集約8千4百種、図書、学術文献約5万冊などを収集し提供したり、特殊教育関係文献目録や特殊教育実践研究課題等のデータベース化や、インターネットによる情報提供、研究成果報告会及びセミナーの開催などが行われている。
 国際交流については、毎年1回 ODA 事業の一環として、日本ユネスコ国内委員会との共催により、APEID(アジア・太平洋地域教育開発計画)参加国から特殊教育の専門家を招聘して「APEID 特殊教育セミナー」を開催したり、海外の研究機関と交流協定を締結し、共同研究の実施、特殊教育情報の交換、研究者の交流などを行っている。
    (2)  国立特殊教育総合研究所は、平成13年4月に独立行政法人に移行することになるが、独立行政法人に移行するに当たって、我が国の特殊教育のナショナルセンターとしての機能をより一層高めるために、特に次のような機能を充実する必要がある。
      @  国の行政施策の企画立案及び実施に寄与する研究の推進と実践的な研究の充実
 国立特殊教育総合研究所では、今後、特殊教育をめぐる状況の変化に対応し、より質が高く、よりニーズに対応した研究を行う必要がある。
 このため、今後、国の行政施策の企画立案及び実施に寄与する研究を積極的に行うなど国との連携を引き続き図る必要がある。また、国内外の研究機関や各都道府県の特殊教育センター、盲・聾・養護学校、小・中学校等との協力を推進する必要がある。特に、大学等の研究機関との連携による共同研究等の効果的な研究体制をつくり、研究の一層の深化・高度化を図ることが必要である。
 さらに、各障害ごとに設けられている研究部・室の組織を超えて、課題に応じて総合的、弾力的に研究に取り組めるような体制を整備するとともに、競争的資金の活用、効果的な運営、業績の評価等について検討する必要がある。
      A  体系的、専門的な研修の充実及び情報通信技術を活用した研修の提供
 障害の重度・重複化や多様化などから特殊教育の専門性の向上がますます求められる中で、長期研修や短期研修、様々な課題に応じた講習会などの研修プログラムを見直し、より体系的、専門的な研修の一層の充実を図る必要がある。
 また、都道府県教育委員会や特殊教育センター等が行う、特殊教育関係教職員に対する研修への支援機能を強化する必要がある。このため、情報通信技術を活用して特殊教育に関する専門的な講義や新しい課題に対応した講義等を全国に配信したり、国立特殊教育総合研究所の研究者が講師として協力するなどにより、各都道府県教育委員会等の取組を積極的に支援する必要がある。
      B  教育相談活動の研究の充実と教育相談に関する情報提供
 教育相談については、臨床的研究との関連を深め、相談活動の在り方や方法に関する実際的な研究を充実するとともに、インターネット等を活用して都道府県等の特殊教育センターとの間で研究成果の普及及び全国的な教育相談情報の流通を促進するようなネットワークの整備を検討する必要がある。その際、平成17年度を目標として開発中の「教育情報ナショナルセンター(教育情報ポータルサイト)と」の連携も考慮する必要がある。
      C  情報発信機能の充実
 都道府県教育委員会や特殊教育センターあるいは盲・聾・養護学校等においては、特色ある事業を実践したり、豊かな教育実践を展開する上で、国の情報提供・発信機能の充実に期待する声が多い。国立特殊教育総合研究所は、このような要望に応えるため、特殊教育の改善・充実に関わる種々の研究成果や盲・聾・養護学校等の創意工夫した取組を積極的に情報収集したり、教育現場での様々なニーズを常に把握しながら、特殊教育のデーターベースを充実し、広く一般への研究成果の普及に努めることが必要である。
 また、教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)等を整備するなど情報発信機能の充実に努める必要がある。
      D  国際交流、国際協力の推進
 国立特殊教育総合研究所は、特殊教育分野の国際共同研究や国際協力事業を推進するため、今後も引き続き、ユネスコと共催している「APEID 特殊教育セミナー」の充実を図るとともに、国際機関や諸外国の研究機関との連携、協力、交流を積極的に推進することが必要である。


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