第4章 特殊教育の改善・充実のための条件整備について

   盲・聾・養護学校や特殊学級等における学級編制及び教職員配置について
   
  1.  都道府県教育委員会においては、各学校で児童生徒の実態等に応じた特色ある教育活動を積極的に展開するため、地域や盲・聾・養護学校の実態や規模、児童生徒の実態に応じて、機動的、弾力的に教職員配置を行うこと。
  2.  都道府県教育委員会においては、指導の充実等を図るために必要があると判断する場合には、義務標準法に基づく教職員定数を活用して、義務標準法で定められている学級編制の標準を下回る学級編制の基準を定めることが可能となるよう法改正の準備が進められている点を考慮して、盲・聾・養護学校の児童生徒の実態等を踏まえ、必要の応じ適切な学級編制を基準を定めることについてを検討すること。
  3.  盲・聾・養護学校は、その自主性、自律性を確立し、児童生徒の障害の状態等に応じた特色ある教育課程を編成することが求められているため、学級という概念にとらわれず、より柔軟に工夫を凝らして多様な学習指導の場を設定するなど指導形態、指導方法を工夫すること。
  4.  盲・聾・養護学校や特殊学級においては、総合的な学習の時間をはじめとする多様な教育活動の展開や、自立活動や職業教育の指導の必要性に対応するため、非常勤講師や高齢者再任用制度等の制度を活用したり、地域社会の多様な人材を特別非常勤講師やボランティアとして活用することにより、幅広い指導スタッフを整備すること。
  5.  小・中学校の特殊学級については、特殊学級の教育を教職員全体で支援するとともに、通級による指導については、対象児童生徒に対し適切な教育ができるよう教員の配置に努めること。
     また、盲・聾・養護学校の教員が通級による指導を実施したり、小・中学校を支援すること。
    (1)  障害のある児童生徒の教育については、自己のもつ能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するために必要な力を培うため、盲・聾・養護学校や特殊学級等において、障害に応じた特別な教育課程を編成したり、専門性ある教職員を配置し、比較的少人数による指導を行っている。
 盲・聾・養護学校では、従来から公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下「義務標準法」という。)で定められている学級編制とは別に個別指導やグループ別の指導等を行ってきたが、近年、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化、社会の変化により児童生徒一人一人に対する指導の内容、方法等の実態が大きく異なっているため、児童生徒の特別な教育的ニーズに対応したきめ細かな指導が行えるよう指導方法や指導体制の工夫や改善がますます必要となっている。
 また、教科指導に加え、障害に基づく種々の困難を改善・克服するための自立活動の担当教員や教育相談担当の教職員、養護教諭等児童生徒が学校生活を送る上で必要な教職員の充実が求められており、このような教職員の定数の改善を図る必要がある。
 各都道府県教育委員会においては、各学校で児童生徒の実態等に応じた特色ある教育活動を積極的に展開するため、義務標準法に示されている学校の学級数に応じた係数は、都道府県全体の教職員の総定数を算定するものであり、各学校への配置数を決めているものではないことを踏まえ、地域や盲・聾・養護学校の実態や規模、児童生徒の実態に応じて、機動的、弾力的に教職員配置を行うことが必要である。
    (2)  また、指導の充実等を図るために必要があると判断する場合に、義務標準法に基づく教職員定数を活用して、義務標準法で定められている学級編制の標準を下回る学級編制の基準を定めることが可能となるよう法改正の準備が進められている点を考慮し、各都道府県教育委員会においては、盲・聾・養護学校の児童生徒の実態等を踏まえ、必要に応じ、適切な学級編制基準を定めることについて検討する必要がある。
 なお、盲・聾・養護学校の指導の充実や地域の特殊教育センターとしての機能の充実を図るため、盲・聾・養護学校間や盲・聾・養護学校と小・中学校間で交流教育や共同の授業研究などの取組を進めることが期待される。
    (3)  実際の指導に際しては、盲・聾・養護学校は、その自主性、自律性を確立し、児童生徒の障害の状態等に応じた特色ある教育課程を編成することが求められているため、学級という概念にとらわれず、より柔軟に工夫を凝らして多様な学習指導の場を設定するなど指導形態、指導方法を工夫する必要がある。このため、各学校においては、このような多様な指導形態、指導方法について教職員が適切な指導組織を構成したり、校務を分掌するなど学校全体で取り組む必要がある。
    (4)  盲・聾・養護学校や特殊学級においては、今後、総合的な学習の時間をはじめとする多様な教育活動の展開や、自立活動や職業教育の指導の必要性に対応するために、非常勤講師や高齢者再任用制度等の制度を活用して、自立活動、外国語教育、情報教育等に専門分野、得意分野を異にする幅広い指導スタッフを整備することが求められる。また、地域社会の多様な人材を特別非常勤講師やボランティアとして活用することにより学校の指導体制の充実を図ることも重要である。
 また、近年、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化に対応するため、都道府県の中には、独自で福祉、医療と連携して理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等を特別非常勤講師として雇用する、看護婦等を非常勤職員として活用したり他機関から派遣する、労働省所管の緊急地域雇用特別交付金制度において情報技術の専門家を特別非常勤講師として雇用するなどの取組が見られるが、こうした人材活用例を参考にして、今後、各都道府県において、地域や学校の実態等に応じてこのような取組が進むことを期待したい。
    (5)  小・中学校の特殊学級については、特殊学級の児童生徒の障害の状態が多様化しているため、それに応じて様々な教育課程の編成、実施が求められている。また、近年、通常の学級との交流が積極的に行われるようになっているが、特殊学級の児童生徒に対する指導は特殊学級担任教員だけに任される場合も多く、ともすれば孤立しがちであるとの声が聞かれる。このため、特殊学級を教職員全体で支援するとともに、通常の学級の児童生徒への理解・啓発に努めるなど、学校全体で特殊学級における教育の充実を図っていくことが必要である。
 通級による指導の導入に伴う教員配置については、平成5年度から実施してきた第6次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画を、毎年度計画的に推進し、平成12年度で完成したところである。今後とも、通級による指導を受ける児童生徒に対し適切な教育ができるような教員の配置に努めることが必要である。
 また、例えば、聾学校の幼稚部等において早期からの教育的対応によって十分な言語習得を図り、小・中学校へ就学した難聴の児童生徒については、引き続き聾学校の教員が支援する必要があるとの指摘がある。このような事例を踏まえ、小・中学校に就学した軽度の障害のある児童生徒の更なる指導の充実を図るために、盲・聾・養護学校の教員がもっている専門的な指導力を生かして通級による指導を実施するなど、小・中学校を支援することが必要である。
    (6)  なお、就学指導の在り方の改善に伴い、特別な場合に小・中学校に就学する児童生徒に対し教育上の配慮が必要になることが想定される。今後、こうした障害のある児童生徒に対して適切な指導を行うために特殊教育で培ってきた指導方法等を生かすことがますます必要になる。このため、小・中学校においては、教職員全体が障害のある児童生徒に対する理解・啓発に努めるなど学校全体で指導体制の充実に努めるとともに、日頃から盲・聾・養護学校との連絡を密にとり、障害のある児童生徒への教育的対応についての情報を常に交換できるようにしておくことが重要である。


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