実践例9
地域への広がりを求めて
A市の実践


T 平成13年度校内支援体制構築のために
  平成13年度の取り組み
 「校内委員会」等の校内の支援体制を構築するにあたり、次の2点について研修を進めました。
○アンケート調査を実施し、基礎的情報の理解度についての実態把握。
○支援体制の構築方法の検討。
  アンケート調査から
    (1)  アンケート調査の実施(資料参照)
支援体制を組織していくにあたり、特殊教育部員の特殊教育に関する基礎知識や、各小中学校の支援状況等を明らかにする目的で、アンケート調査を実施しました。その結果から、特殊教育研究部の研修計画を作成しました。
    (2)  アンケート調査からの支援体制構築のための課題
     
@キーパーソンとなる特殊教育担当者が基礎的な情報を理解していない。
A支援体制の構築に関する情報提供が少ない。
B特殊教育担当者として通常学級での支援方法が分からない。
C専門機関と、効果的な連携がとりにくい。
    (3)  支援体制づくりに関する研修計画
アンケート調査の結果から、「校内委員会等」の校内の支援体制づくりに関して4回の研修会を企画実施しました。その内容を表2に示します。@支援体制を組織するにあたって必要とされる情報を得ること。A支援体制を構築する方法について検討すること。この2つの課題を中心に研修を進めました。
  支援体制構築のための検討
    (1)  特殊教育研究部の研修計画
      表2 支援体制づくりに関する研修計画及び内容
    (2)  支援体制構築を目指した具体的な取り組み(第4回目の研修内容)
     
     
@テーマ1  個別に配慮を必要とする児童生徒とはどんな児童生徒ですか。
Aテーマ2  それらの子どもたちは,どういう状況になっていますかそれらの子どもたちをサポートする必要がありますか。
Bテーマ3  どうすればサポートが可能ですか。
Cテーマ4  校内の支援に関する委員会の立ち上げの問題,あるいは運用上の問題はどこにありますか。
     
 この研修により、LD・ADHD等を含む特別な教育的支援を必要とする児童生徒の状態像や、「校内委員会」等の支援体制を構築する上での課題等について意見交換したことにより、「校内委員会」等の支援体制のイメージがより鮮明になりました。
    (3)  支援体制の構想についての協議(第5回目の研修内容)
     
     
@  校内委員会等の支援委員会を独立して設置しよう。
A  生徒指導部会を充実させよう。
B  ケース会議を定期的に実施しよう。
C  既存の組織を生かした取り組みをしよう。
D  職員会議を利用できるかな。
  成果と課題(平成13年度)
    (1)  成果
       以上、特殊教育研究部として、「校内委員会」等の校内の支援体制構築を目的に、年5回の研修会を企画実施しました。その結果、特殊教育研究部員が、
       特殊教育に関する基礎的な情報の理解ができたこと。
       「校内委員会」等の校内の支援体制づくりについて、具体的なイメージがもてたこと。
       各小中学校で「校内委員会」等の校内の支援体制づくりで生かせる既存の組織は何か、情報交換できたこと。
    (2)  課題
       「校内委員会」等校内の支援体制を全ての小中学校に組織するためのそれぞれの課題を把握すること。
       特殊教育研究部以外の研究部、生徒指導部等との連携を図ること。
       支援内容を充実するための方法を検討すること。
課題は、次年度の研修内容にすることとしました。
U 平成14年度 校内の支援体制を組織し充実させるために
   平成14年度の取り組み
 「校内委員会」等校内の支援体制の組織化、充実化を図るために、次の2点について研修を進めました。
   「校内委員会」等校内の支援体制を組織化するための、各小中学校での課題把握と検討。
   各小中学校での支援内容を充実するための研修の実施。
  支援体制組織化に向けて
    (1)  支援体制づくりに関する研修計画
       平成14年度の研修計画を表4に示します。

表4 平成14年度支援体制づくりに関する研修内容
回 数 月 日 内    容
第1回 6月14日 ・各小中学校における校内支援体制の現状と課題
・記録用紙調査(各小中学校における進捗状況把握)
第2回 8月2日 ・生徒指導部・特殊教育部・養護教諭部3部会合同研修会
 講義 「校内支援体制の構築について」
   講師 国立特殊教育総合研究所主任研究官
第3回 11月29日 ・特別な教育的支援の必要な児童生徒の支援内容方法
第4回 2月 ・支援組織の検討及び支援内容の検討と課題
    (2)  各小中学校における「校内委員会」等校内の支援体制進捗状況の報告
      どのような校内の支援体制が構築されたか、学校ごとに報告し合い、支援体制の進捗状況と課題について検討しました。表5の平成14年6月での現状の覧参照して下さい。
       B小、C小、E小、J中の4つの小中学校に、「校内委員会」等の学校独自の校内支援体制が組織されました。
       その他の小中学校では、既存の生徒指導部の内容充実を図ることや、毎月行われる職員会議において支援状況を報告する等、各小中学校の実態に即してできる支援の方法が構築されました。
       支援体制を校務分掌に位置づけた小学校が2校となりました。
さらに、
       「校内委員会」等校内の支援体制を組織するための課題として、校内の生徒指導部とどのように連携していくか。
       「校内委員会」等校内の支援委員会の内容充実をどのように図るか。
等の検討をすることができました。
     
    (3)  「校内委員会」等の校内支援組織拡充のために(第2回目の研修)
各小中学校に「校内委員会」等の支援体制を組織し強化していくためには、キーパーソンである特殊教育研究部員以外との連携が必要になりました。生徒指導主事や養護教諭の理解啓発が重要であると考え、合同研修会を実施しました。
      生徒指導部会・特殊教育研究部・養護教諭部の合同研修会
講 演  校内の支援体制構築について
講 師  国立特殊教育総合研究所主任研究官
日 時  A市教育研究会一斉研修日
参加者  生徒指導部員・特殊教育研究部員
 養護教諭部員
       参加者からの感想として、
       支援委員会の必要なことが理解できたが、中学校なので時間の確保が難しい。
       生徒指導部を定期的に開きながら全職員で支援にあたりたい。
       今まで通りプロジェクトチームを活用しながら個別に支援していくと思う。
       個別に支援の必要な児童生徒が増加傾向にあるので、校内の支援体制を組織整備することは非常に重要であることが理解できた。校内で少しずつ支援体制構築に向けて努力していきたいと思う。
       という校内の支援体制の重要性について述べられている感想が多く、支援体制を校内に組織することの是非や意義についての理解が広まったと考えられます。
  支援内容充実のために
    (1)  支援内容を充実させるために(第3回目の研修)
     
       ケース会議を実施することは、児童生徒を支援するばかりではなく、担任教師を支えていくことや、教師として培った経験を持ち寄ることにより、支援内容や方法がより具体的になることが再確認できました。
    (2)  各小中学校における支援検討状況記録用紙の活用(資料参照)
     
       これにより、「校内委員会」等校内の支援している組織の確認や実施状況、支援内容や方法、研修の取り組みや専門機関との連携等について、各小中学校での取り組みを情報交換したり、課題を明確にしたりすることができました。
  成果と課題(平成14年度)
    (1)  成果
       以上、特殊教育研究部として「校内委員会」等校内の支援体制を組織し、充実させるために、年4回の研修を進めてきました。その結果、次のような成果を得ました。
        「校内委員会」等校内の支援体制を組織するにあたり必要な生徒指導部や養護教諭部との連携ができつつあること。
       各小中学校の実態や特性を生かした校内の支援体制が組織されてきたこと。
       支援内容を充実させるため、ケース会議の運営方法を研修し、子どもたちへの支援方法や教師を支えることの意義について学習できたこと。
       支援状況記録用紙を用いたことで、常に支援状況について評価することができたこと。
    (2)  課題
       「校内委内の支援体制を組織として校務分掌に位置づけるために、校内にどのように働きかけていくかをさらに検討する。
       時間の確保が難しいという各小中学校の現状を考慮し、効率的に運営するため「校内委員会」等校内の支援組織の運営について情報交換する。
       支援内容や方法について蓄積してくため、個別支援計画や支援ファイルの活用等について検討する。
       ケース会議を充実させ、支援内容や方法の効率化を図ること。
V まとめ
   「校内委員会」等の校内支援体制をA市に広めるために
   
    (1)  ポイント
       特殊教育担当者がキーパーソンとなり、それらの部員を支えるために特殊教育研究部として研修にとり組む。
       特殊教育研究部員の意識調査、各小中学校の実態やニーズを基に支援体制を組織するための研修計画を企画する。
       実践モデル校から学ぶ。
       「校内委員会」等校内の支援体制づくりに向けた具体的なワークショップを実施する。
       生徒指導部、特殊教育研究部、養護教諭部等特殊教育研究部以外の研究部との連携を図る。
       上記に述べた支援体制構築のための具体的な取り組みについて、特殊教育研究部として研修を行ったことが、大変効果的であったと考えられます。また、キーパーソンからコーディネ―ターとしての役割を考える時、生徒指導主事との連携は不可欠です。特別な教育的支援が必要である児童生徒を、「支援」という視点でとらえ、校内の職員のニーズや意見を反映させ、無理のない時間設定、効果的な研修や「校内委員会」等の校内支援組織を運営していくことが重要であることが明らかになりました。
    (2)  今後の課題
       さらに、「校内委員会」等の校内支援組織を確立したり、校内支援組織の運営の在り方や支援方法及び内容を構築したりするために、次のような点について研修や提案をする必要があると考えます。
       校内の支援組織の是非について、文部科学省の報告や学校の実態から、再度特殊教育研究部員として生徒指導主事や学校長に提案し、理解を深める。
       校内の支援体制が組織されている小中学校の情報を共有する必要がある。
       校内の支援体制が継続できるよう校務分掌に位置付ける。
       支援内容の充実を図るため校内委員会等の支援委員会の研修の在り方を探る。
       支援内容や方法についてデーターベース化する。
       支援内容を記録するためのフォーマットの作成や個別支援計画を作成する。
       専門機関との連携や巡回相談等の効果的な利用について研修する。
       校内支援体制を組織したことについて各小中学校教師による価をする。
  資料
   平成14年度 小・中学校支援状況記録 <1学期>
   平成14年度 小・中学校支援状況記録 <2学期>
   平成14年度 小・中学校支援状況記録 <3学期>


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