(2)中学校における授業研究
  一年目の授業研究では,自分の思いや願いを強く意識し,素材選びの段階から生徒自身が選択し,その素材に合わせた制作方法も自ら模索できるような題材,そして,表現することに関心をもち,豊かに発想し構想する能力を育てることに視点を置いて,中学校第3学年,題材「ほっとするかたち」―心を癒すオブジェ―を展開した。
  本題材で取り上げた「ほっとするかたち」とは,様々な悩みをもつ生徒たちが,ひととき生活の中で心を癒すことができるように,生徒自身の様々な感覚を生かしてつくりあげるかたちを指している。生徒それぞれがもつ「ほっとする」感覚を生かせるよう,素材も用具も制作手順もつくりたいオブジェに合わせて選んでいけるようにすることで,できるだけ自分の思いを豊かに表現できるようにしたいと考えた。
  授業では,毎時間欠かさずに3分間クロッキーを行うことで,身近なもののかたちを素早く描く意欲が身についてきた。また,年度当初より描くことに対して苦手意識が薄れてきたように思われる。
   制作時には,生徒それぞれに作品に使われる素材や制作方法が異なるので,授業毎に,一人あたり平均すると2〜3分という短時間だが,必ず生徒に声をかけたり,話を聞いたりと一対一で向き合った指導が行えたことで,生徒の制作活動を活性化させることにつながり,これまで作品が仕上げられなかった生徒も完成発表がで制作中の様子き,満足した様子を見ることができた。
  作品の完成が近づき,1つの教室の中で様々な素材や用具が効果的に使われるようになると,生徒相互のかかわりにより,友だちの作品に使われた素材や道具を取り入れ,自分の作品に生かせないかと思案する生徒がでてきた。一方で,他の制作は気にせず自分の素材や道具にこだわりをもって,徹底して制作にのぞむ姿も見られた。
  授業の成果と課題として,生徒にあらかじめ制作にはいる前に,一斉に美術便りを配布し,題材について知らせるとともに,素材や技法は様々に組み合わせることができることを伝えた。それにより,生徒は,事前に材料を準備したり,生徒の持っているものの中から作品となるかたちのヒントを見つけたりして意欲を高めている姿が見られた。また,子どもと一緒に買い物に行ったり,展覧会に見に行ったりするなど保護者の協力が得られることもあった。
  授業中では,生徒が自由に素材を選択できるということは,生徒自身がその素材をどうやって扱えばよいか経験している場合が多く,素材についての説明や用具の操作についての指導に手間取ることはあまりなかった。また,一つの学級内で多様な表現活動が行われているので,生徒はお互いに扱っている素材に興味をもち,素材や道具を見てその美しさや特徴を知り,自分の作品に取り入れ試行錯誤する様子がしばしば見られるようになった。また,授業毎に確実に生徒一人一人に声をかけたり,話を聞いたりと一対一の指導を行ったことで,生徒の制作活動を活性化させることにつながり,これまで作品が仕上げられなかった生徒も完成させ,発表することができ,満足した様子を見ることができた。今後の課題として,長時間でじっくりと完成に向かう題材や,短時間で完結する題材を組み合わせていき,学校教育としての美術の価値を考えていく必要性があると考える。
  なお,二年目となる本年度の中学校における授業研究については,次のとおりである。


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