授業研究
   研究主題「児童生徒の個性を生かす図画工作・美術科学習の指導の在り方」に関する基本的な考え方と実態調査の結果を踏まえ,研究主題に迫るための手だてを講じ,二年間にわたり小学校,中学校で授業研究を行った。
  (1)  小学校における授業研究
     一年目の授業研究では,素材から感じる一人一人の思いを大切にしながら,自分に適した表現方法などを選ぶことができ,表現の幅が広がるような題材,一人一人に応じた指導の在り方に視点を置いて,小学校第6学年,題材「校庭の木とわたし」の授業を展開した。
 この題材では,自分たちの校庭の身近にある木々に触れ,自分たちが生活してきた6年間や季節の移り変わりや周りの空気・光・木々との歩みを感じ取る。そして,木々とのかかわりから感じたことや想像したこと,素材や場所から受けた新鮮な感動をもとに,多様な表現が生まれてくると考えた。製作の時には,今までの学習体験を総動員し試行錯誤を繰り返す場面を設定する。また,多くの種類の素材を用意したり製作意図に合わせた技法を提示したりして,児童が広く表現方法が選べるような環境を用意する。そして,児童相互が,学び合えるような場をつくる。このように,自分の思いに合わせた素材の選択や表現する方法の工夫を通して,感性や想像力・表現力などの技能などの資質や能力が育っていくと考えた。
 製作の時には,図工室でつくったものや素材を持ち寄って表現した。実際に木を目の前にして,初めに思い浮かべた構想とは違っていく児童や木の存在感にとまどう児童も見られた。しかし,時間が進むにつれて,多くの児童が製作中に,遠くから木を何度も観察したり,友だちと表現について話し合ったりする姿が見られた。とまどう児童には,表現したいものを確認し合うことで製作する意欲が失われないように支援した。
 素材の利用としては,素材を自分の思いに合わせて選び,ペットボトルで家をつくるなど製作に生かす姿が見られた。この学習では,いろいろと素材を試し,自分の表現へつなげるための試行の時間であることも確認しあい,どんな表現ができるかいろいろと試してみることをすすめた。
 学習カードを利用して,児童自身が,自分の木に自分の思いを寄せて思いや表現したいことが確認できた。そして,教師としても,児童の感じ方や思いの変化がよく分かり,個に応じた指導ができた。
 授業の成果と課題として,校庭の木など素材と触れ合うことで,木に対する感じ方や表し方が授業のたびに広がってきた。一人一人の感じ方を話し合いや学習カードから理解し指導することができたため,幅広い活動を通して,自分の思いにあった表現ができたと考える。また,学習カードやビデオ,写真を使い,児童が活動したことを振り返る場面を設定したことで,自分の表現の過程や作品を自己評価するとともに,友達の作品の工夫したところなどを認め合うことができた。課題として,木を選んだ理由を最初からより明確にしておけば,発想や表現がさらに深まったと思われる。
 なお,二年目となる本年度の小学校における授業研究については,次のとおりである。


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