実践事例11
  文武に活力ある学校づくりと教育課程経営
  県立磯原高等学校
 教育課程経営の重点
   本校は,北茨城市の中心磯原町の高台に位置し,創立50周年を迎える。生徒数は704人,18学級の規模を有する。本校の教育方針の大きな柱に「文武不岐」がある。文武に生徒のもっている能力を引き出すことによって,個性の伸長を図り,たくましく生きる力を育成することを目指している。部活動・学校行事等の学校全体の取り組みが生徒の活動意欲を向上させている中で,教育課程経営においても実践の見直しを図り活力ある学校づくりを目指し,次の4つの内容について重点的に研究を進めている。
 
 一人一人の自己実現を図る教育活動
 サンライズハイスクール事業の継続・発展
 学校の情報化推進のためのネットワーク活用方法研究開発事業の継続・発展
 カリキュラムセンターの研究
 教育課程経営の実際
  (1)  一人一人の自己実現を図る教育活動
     推進事業や研究開発事業の研究指定校を受けたことを機会に,教職員が一体となって,より一層の特別活動の活性化や,生徒一人一人の学力の向上を図り,生徒が自ら学ぶ意欲の育成や情報化社会,国際化社会に対応することのできる人物の育成に努め,活力ある学校づくりに取り組んでいる。
    @  「文武不岐」を具現化し,「あ(あいさつ)そ(掃除)ぶ(部活動)べ(勉強)な(仲間づくり)」を全職員・全生徒および保護者の共通理解のもとに実践し,一人一人を大切にした指導と基本的生活習慣の定着に努めている。
       「あ(あいさつ)」,については基本的な生活習慣の定着を目指しホームルーム活動,学年集会,全校集会等を通して実践化を図っている。
       「そ(掃除)」については,校内の清掃分担により,全職員・全生徒で清掃に当たり,学習環境の整備,美化に努めている。
       「ぶ(部活動)」については,部活動を通して,体力,技能の向上を図り,忍耐,責任,協調性等たくましい心の育成に努めている。1年生全員部活動加入により,運動の楽しさや文化的な楽しさを体験させ,将来にわたって運動や文化的なものに親しむ基礎づくりを図っている。また,部活動相互研修会を通して,部活動への取り組みや練習法等を見聞することにより,部活動の質的向上を図っている。
       「べ(勉強)」については,生徒の本分として,学校生活の中心であり,「文武不岐」の意識の定着に努めている。
       「な(仲間づくり)」については,ホームルーム活動,部活動,学校行事を通して,互いに協力し,理解を深めるなどの機会とし,問題行動等についても,ホームルーム活動の他あらゆる機会をとらえ,未然防止及び早期発見に努め,早急そして丁寧な指導に当たっている。
    A  基礎的・基本的内容を重視した学習指導を充実させることにより,生徒一人一人の学力の向上を図るとともに,生徒の自ら学ぶ意欲の育成に努める。
       学年会,教科研修会,各部会等を通して情報交換,指導の工夫改善を図る。
       一般常識を身に付けさせるために「基礎学力コンクール」を年4回実施し,時事問題を含めた様々な基礎学力の向上を図っている。
       生徒の実態に応じ,各教科で公開授業等を行うなど,基礎・基本の定着を図るべく授業内容及び指導方法の創意工夫に努めている。
       生徒の学習の習熟度により,早朝,放課後に授業担当者による個別指導を行っている。
       学力差に応じた個別指導,課題学習,少人数による習熟度別学習など,より一層の工夫をしていきたい。
       完全学校週5日制の実施に伴い,学校行事の精選を図り,授業時間の確保に努め,生徒一人一人の学力の一層の向上を図りたい。
       平成15年度より実施される教育課程及び総合的な学習の時間の効果的な導入を図る。
    B  一人一人の生徒の多岐に渡る進路希望実現のための教育課程の編成を行っている。
       第1学年から希望による進路別クラス編制を行い,早期より進路についての意識の高揚を図っている。
       部活動生徒の進路希望実現のため,早朝課外授業,衛星放送を利用した学習や学習時間の確保に努めるとともに,進路希望に応じた少人数による課外授業,放課後及び長期休業中における課外授業の工夫改善に取り組んでいる。
       自ら主体性をもって将来の進路を選択し,決定させるため,インターンシップによる就業体験などの体験学習の参加者を増やし,その充実を図る必要がある。特に就業体験及び職場見学会において,多様な職種の協力企業の開拓に努めていきたい。
    C  生徒一人一人を大切にした学習指導を基本に,文系,理系等進路希望に対応した講座の設定を行っている。
       第2・3学年については,類型別クラス編制や選択科目を取り入れるなど進路実現のための方策を講じている。
       年度始めに全生徒の面接を実施し,生徒理解を深めるとともに,将来への進路に対する意識の高揚を図っている。
       6月には担任・生徒・保護者による三者面談を実施し,進路希望を踏まえた学校生活についての連携を図っている。
       進路別見学会においては,進学希望者は1年次に1回,就職希望者は1,2年次に各1回,見学会を行い,各自の進路決定に役立てている。また,今年度より2年生の就職希望者には夏季休業中の3日間,サービス業においてインターンシップを行っている。
  (2)  サンライズハイスクール事業の継続・発展
     生徒が主体的に活動する学校行事の実践は,生徒の自ら学び自ら考える力や意欲の向上に大きく貢献し,進学率の向上や部活動の活性化等に好影響を与えている。
    @  地域文化を学ぶ学校行事
       磯原高校の三大行事の一つ「雨情を偲ぶ会」は,3年ごとに行われる伝統ある行事である。磯原出身の野口雨情を偲び,各クラスや全校で雨情に関する研究・発表・展示を行い,関連の催しを通じて,地域や地域の文化を学ぶ機会としている。
       開かれた学校づくりを進めるため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携をさらに深めたい。
    A  ボランティア活動を実践することにより,一人一人が地域との連帯を深め,主体的に活動できるような独自の学校文化を創造すること。
       ホームルーム活動の時間を利用し,年1回,全学年で磯原海岸の清掃を行っている(10数年になる)。更に3年生は通学路清掃等を行うことにより,地域の自然や環境保全への理解と感謝の心の育成を図っている。
       北茨城養護学校との交流体験を通して,思いやりや豊かな心の育成を図っている。
       JRCや個人でのボランティア活動を通しての奉仕の心の育成を図っている。
       地域との連携を深めながらボランティア活動を行うことは,社会奉仕の精神の涵養,社会生活における役割や自己責任の自覚の育成など意義深いものであり,継続させたい。
    B  特別活動の活性化
       入学から9月までは1学年全員部活動加入制度を取ることによって,学校生活の充実を図り,集団社会の一員としての生きる力の育成,個人のもっている能力の開発,自主性等の伸長を図っている。
       研究指定は終了したが,ほとんどの行事は改善を加えながら毎年実施している。それらが一人一人の中に定着し,新しい本校の文化となりつつある。
       生徒がさらに主体的に活動できる学校行事の実践に努め,活性化を図りたい。「総合的な学習の時間」との連携についても検討中である。
  (3)  学校の情報化推進のためのネットワーク活用方法研究開発事業の継続・発展
     情報化社会に対応する基礎づくりとして,各教科でのコンピュータを利用した授業展開の実践,手作り教科書「情報科学」による授業や「課題研究」の授業を取り入れるなどの工夫・改善をして継続・発展させている。
    @  各教科での活用
       ほとんどの教科でインターネットの活用が研究され実践されて現在に至っている。特に数学科や国語科では授業の中で積極的に取り入れている。
       知識を教え込むことになりがちであった教育の基調を転換し,自ら学び自ら考える力を育成するため,各教科・科目においても更に積極的なコンピュータやインターネット の活用により体験的,問題解決的な学習の充実を図り,思考力,判断力,表現力の育成を目指したい。
    A  新教科「情報」を想定した授業研究
       平成6年度から数学の授業で「統計」を学習した後,コンピュータを使って実際のデータを扱ってデータの集計・処理・考察を行い,まとめのレポートを作成する授業を行ってきた。その後コンピュータが更新となり,平成9年度にはインターネットを利用できる環境が整った。授業で扱える内容が豊富になり,年間の授業展開の見通しも立ったことから,平成10年度より数学科の選択授業として「情報科学」を実施している。現在は新教科「情報」を視野に入れ,教材研究や指導方法・評価方法の研究を行っている。
       コンピュータ教室の利用が多いため,教科「情報」が2年次で導入される平成16年度は,選択授業等でコンピュータ教室を利用できなくなる。教室に配備されたコンピュータを含めた活用方法を検討している。
    B  ネットワークを通した学校の活性化
       磯原高等学校ホームページの作成への生徒の参加や,ネットワークケーブル敷設やIT講習会の補助員としてのパソコン部生徒の活躍など,生徒の積極的参加により手作り ネットワークの意識が高まった。またインターネットを授業や就職・進学のための情報収集などに積極的に活用しているため,学校生活の充実感や自信にもつながり,活性化の要因の一つとなりつつある。
       教育活動を十分に理解・実践し,かつ,ネットワークシステムを理解して授業内容に配慮した運用のできる人材は本校ではまだ少ない。校内の情報化,授業での利用や高度のネットワーク・サーバ管理技術を有する者の育成やシステムづくりが必要である。
  (4)  カリキュラムセンターの研究
     本校のホームページ上で,研究実践・授業実践の記録と資料については[サンライズハイスクール][ネットワーク活用方法研究開発事業][インターネット活用レポート][「数学」(情報科学)][教科「情報」への取り組み]などが閲覧可能となっている。研究実践,授業実践以外でもネットワーク管理規定や文化祭などの特別活動や部活動の実践の記録と資料なども多数掲載している。これらに対して,校内はもちろん全国及び海外からもアクセスがあり,内容やリンクの問い合わせも多い。本校ではサイトやデータが多岐にわたる場合の整理・活用として,キーワードを入力して検索する「磯原高校サーバー内文字列検索」の設定がされているため,カリキュラムセンターとしての基礎は確立されている。今後,実践記録の収集を図り,整理・充実させることが,教育活動全般の貴重な資料となり,カリキュラムセンターのみならず,学校内外のデータセンターとして活用されることにもなると思われる。
 今後の課題
   以上のような研究や実践を通して教育課程経営に伴う諸条件の整備が行われ,整いつつあるが,評価内容や方法を含め教育課程経営についての理解と実践はまだまだ不十分である。
  (1)  本校の生徒にとって,より多くの活動や体験の機会をもつことが,豊かな人間性や,一人一人の個性を生かし,自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を培うためにますます必要になると思われる。これらについても授業時間や学校行事,学校週5日制などとの関連の中で研究実践していかなければならない。
  (2)  「総合的な学習の時間」や教科「情報」・インターネットなど情報化社会で生きるための技術や考え方の指導方法や効果的な導入・活用の研究を行い,全教職員の協力の下に創意工夫を生かし,特色ある教育活動や特色ある学校づくりを進めていきたい。
 
   ホームページ http://www.isohara-h.kitaibaraki.ibaraki.jp/


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