実践事例2
  個に応じた指導の充実を図る教育課程経営
  北茨城市立精華小学校
 教育課程経営の重点
   本校は,東に太平洋,西に阿武隈山地,そして,そこから流れ出る花園川の清流が近くを流れているという恵まれた自然環境の中に立地し,7月に創立129年目を迎えた。児童数は583名,20学級の規模の学校である。本校では,教育目標である「全校共働の精神のもとに,心身ともに健康で自らの判断に基づき生き生きと活動する児童の育成に努める」を達成するために,教育課程経営では「個に応じた指導の充実を図る教育課程経営の工夫改善」を研究主題に掲げ,次の3つの内容について重点的に実践を進めている。
 
 個に応じた指導の充実を図る指導計画の工夫改善
 個に応じた指導体制及び指導方法の工夫改善
 個に応じた指導に生かす評価の工夫改善
 教育課程経営の実際
   学習指導要領においては,個性を生かす教育を充実するというねらいを実現するために,子ども一人一人の特性等を十分理解し,それに応じた指導方法や指導体制の工夫改善を図ることにより個に応じた指導の充実を求めている。
 本校では学校経営方針の第1項目に「一人一人を見つめ,人間教育の基盤に立ち,公教育の本質的経営に努める」ということを掲げている。「一人一人を見つめる」ことは,個々の姿をとらえることであり,それは個々の実態に応じた指導を展開していくことである。
 また,学校経営の基本的態度を「児童一人一人が学校生活の中で楽しさ(成就感・充実感)を実感できる経営」とし,一人一人の子どもが,「できた」「わかった」「がんばった」という成就感・充実感を味わわせることができる学校生活が営めるような教育課程経営を構想し,実践してきた。以下は,その取り組みの実際である。
  (1)  個に応じた指導の充実を図る指導計画の工夫改善
    @  年間指導計画をより活用し易くするための工夫
       本校では,昨年まで各教科や各領域毎にそれぞれ別々の冊子にしてまとめていた年間指導計画を,今年度からは各学年毎に一つのファイルにまとめて活用している。今まではそれぞれが大きさや形式も不統一であったため使いにくいとの声が多かった。
 しかし,今年度は規格をA4判に統一し,また,形式もある程度揃えた結果,使い勝手がよくなり,日常的に活用し易くなった。また,併せて全体を収録したファイルも作成し,学年間の関連項目や系統的な内容も確認しやすくなった。学年末には,加除訂正が必要な箇所を各学年担当者及び教科領域担当者が学校評価や反省会の結果に基づき,朱書し改善を行っている。
    A  年間授業単元配列表の工夫
       学習指導要領においては,以前のように35週では割り切ることができない授業時数を標準とするものが多い。また,体験的な活動や問題解決的な学習,教科担任制を積極的に進めていくためには,先を見通した学習計画を立てることや的確な授業時数の管理が必要である。
 そこで,各教科や総合的な学習の時間の計画が一目で分かり,児童一人一人の活動がとらえやすくなるように年間授業単元配列表を作成している。また,併せて年間授業時数配列表も作成し,授業時数の管理に役立てている。
      資料1 年間授業単元配列表(第6学年一部)
  (2)  個に応じた指導体制及び指導方法の工夫改善
     本校では,平成7年度に「多様な学習指導方法の研究」の県指定校研究を行って以来,学年内でのティーム・ティーチング(以下TT)による指導や学級の枠を取り外した指導体制など個に応じた指導体制及び指導方法の工夫改善を図ってきた。学習指導要領においては,「指導体制の工夫に当たっては,教師一人一人にも得意の分野,年齢の違いなど様々な特性があるので,それを生かしたり,学習形態によっては,教師が協力して指導したりすることにより,指導の効果を高めるようにすることが大切である。」というように指導体制の工夫改善の必要性を示している。そこで,本校でも以下のような取り組みを行ってきた。
    @  TTによる指導(算数科)
       本校では,児童一人一人の算数の学力を向上させるというねらいで,平成11年度から継続的にTT加配教員を算数に配置し,指導を行ってきた。昨年度の学校評価では,TT体制の有効活用ができたかの問いに教職員全体の8割が「できた」と回答していた。また,学期末の反省でも,各学級担任もTTの指導が個に応じた指導方法として効果的であり,必要であると感じていることや児童もTTの指導に対して好感や期待感をもっていることなどが分かった。
 そこで,今年度はできるだけ多くの学年でTTの指導が実施できるように,担任外をTT担当とし,1学年,2学年(少人数指導),3学年,6学年で,TT指導での基礎・基本の充実を目指してきた。6学年では,担任と担任外がT1・T2の役割を交代しながら授業を行っている。その結果,担任は児童一人一人についての見方の幅を広げることができた,担任外の方でも児童についての情報を指導に生かすことができた等,指導法の工夫改善を行う上でとてもよかったというプラス面の評価が得られている。また,研修の時間を確保するために,本校では毎週金曜日の放課後を学年協議会(学年研修の時間)として位置付けている。児童についての情報交換を行い,学年との連携を一層図るという狙いからTTの打合せもできるだけその中で行うようにしている。
 4学年ではTT担当は入っていないが,補充的学習や発展的な学習の指導を効果的に行えるように単元の終末では,学年を解体して3グループに分け,課題別学習を行っている。また,教科の特性,指導者の専門性や得意分野を考慮し,学級の枠を取り外した形態の授業は,算数の他に体育と総合的な学習の時間で実施している。
    A  少人数指導
       平成13年度は,算数科の指導において,5学年の2学級(75名)を解体し,3学級に再編成して指導してきたが,教師と児童一人一人との関わりは1学級を二分割した場合と比べて薄くなりがちなこと(教員一人当たりの児童数は25人,二分割の場合には20人以下)が課題となっていた。平成14年度は1学級を二分割する方法で行った。さらに,実施する学年としては,2学年は人数が多く,また,内容的な面でもかけ算の九九など今後の学習の基盤となる事項があり,少人数指導がより効果的であるということから,2学年で実施することとした。
 指導形態の工夫としては,単元や内容に応じて教師と児童の組み合わせを変えたり,毎週水曜日の1校時を学年同一時間割(算数)として,TT担当の教員が各学級を回り,学習の遅れがちな児童や配慮を要する児童の指導を行っている。このことにより以前より児童一人一人に対する支援もより手厚く行えるようになった。
 その結果,「算数の学習は好きですか」という問いに「とても好き」と答えた児童が6月の調査時点では,全体の41%であったのに対し,10月末時点では63%に上昇している。このことからも児童の興味関心及び意欲は高まりつつあり,指導の効果も上がってきていると言える。
    B  教科担任制
       高学年では,各教師(担任)が専門教科や得意とする教科・分野を指導することにより,基礎・基本の確実な定着を図ることを視野に入れ,教科担任制を取り入れている。例えば,5学年では音楽科と社会科の授業を教科担任制で実施している。
 教科担任制については,教師と児童の双方から「満足している」と評価され,成果をあげることができた。
 具体的実践として,まず,教師側としては,専門性や得意分野を発揮した指導に多くの時間を使うことができ,ゆとりをもって個に応じることができるようになった。さらに,基礎・基本の確実な定着を図ることができるようになってきた。また,自分の学級だけではなく,学年全体を指導していくという意識が高まり,生徒指導上でも成果をあげている。
    C  学年同一時間割
       本校では,各教師(担任)の専門性・得意分野の発揮をねらい,同一時間に同じ教科を設定して指導にあたっている。(算数,体育,生活科,総合的な学習の時間等)
 その結果,生活科,音楽科,体育科の授業や総合的な学習の時間等,学年で協力して指導に当たる際に,教師それぞれが状況に応じて役割を分担して指導に当たることで,個に応じた指導の充実を図ることができるようになってきている。
      資料2 学年同一時間割(一部)
  (3)  個に応じた指導に生かす評価の工夫改善
    @  学習の場面での評価の改善
       学習指導要領に示された基礎基本の確実な習得をねらうために,評価方法の工夫改善は必要不可欠なことである。本校でも,個に応じた指導に生かし,児童一人一人の学力を伸ばしていけるように,学習カードや自己評価カードの活用,補助簿の作成等評価方法の工夫改善に取り組んでいる。
    A  学校評価(外部評価・内部評価)の工夫改善
       本校では,昨年度から学校評価を行っている。外部評価の項目は20項目あり,4段階の評価で回答を得ている。回収率は82%であった。今年度は内容を検討し,分かり易い表現に改めたり,また記述する部分も加えて行っている。
 内部評価については,昨年度は57領域・214項目で実施した。今年度は,領域や項目の焦点化を図り実施し,学期末に結果を比較検討して指導に生かすとともに,TTによる指導,少人数指導,教科担任制,個に応じた指導の評価についても内容の改善を図っている。
 今後の課題
  (1)  TTについては,全学年での実施を目指し個に応じた指導に生かしていきたい。そのためには,空き時間を調整することなど,運用面から職員間の共通理解を一層図る必要がある。
  (2)  教科担任制については,時間割との関連から,どのように弾力的に運用していくかが課題である。


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