第5 実践事例
 
   実践事例1
  基礎的・基本的な内容の確実な定着を図る教育課程経営の工夫改善
  水戸市立渡里小学校
 教育課程経営の重点
   本校は,水戸市の北西に位置し,創立130年目を迎える。児童数は664人,20学級の規模を有する。学校の教育目標「自ら学び,心豊かでたくましい児童の育成」達成のための重点課題の一つに,「学力の向上」をあげている。これを受け,教育課程経営では,「基礎的・基本的な内容の確実な定着を図る教育課程経営の工夫改善」を研究主題に掲げ,次の2つの内容について特に重点的に研究実践を進めている。
 
 指導目標と指導内容を明確にした指導計画の作成
 指導と評価の工夫改善
 教育課程経営の実際
   「基礎的・基本的な内容」とは,学習指導要領に示された各教科等の目標及び内容ととらえる。「確実な定着を図る」とは,この基礎的・基本的な内容をすべての児童が確実に習得できるようにし,生きてはたらく力として身に付けた状態にすることととらえる。このような力を身に付けるために,次のような教育課程経営の工夫改善に取り組んでいる。
  (1)  指導目標と指導内容を明確にした指導計画の作成
     基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るためには,評価結果をもとに指導計画を見直し,指導目標と指導内容を明確にした指導計画を作成しなければならない。そこで,教科部員会や学年会の協働体制のもとに,次のように指導計画の作成を行っている。
    @  年間指導計画の作成
       実施状況及び定着状況の確認
        (ア)  年間指導計画をもとに,指導した単元と内容を確認する。
        (イ)  学力診断テストの結果をもとに,基礎的・基本的な内容の定着の実態を把握する。
       指導計画の改善点の確認
        (ア)  各学年ごとに教科部員が中心となって,前年度に実施した内容をもとに,指導目標,指導内容,授業時数,指導方法,指導体制,教材の適性,体験活動の導入等の改善点を確認する。
       指導内容の系統性・発展性の確認
        (ア)  昨年度の学習内容を押さえるとともに,今年度の学習内容が次年度以降どのような学習へ発展していくかという系統性・発展性を押さえ,指導内容の重点化や単元配列に生かす。
       指導内容の重点化と時間配当の吟味
        (ア)  各教科ごとに学習指導要領に示されている内容を正しく押さえ,改善点を踏まえながら,特に重点化して指導する単元を明確にする。
        (イ)  指導内容に応じた時間配当を吟味する。
       単元ごとの指導目標,学習活動,指導上の留意点の明確化
         先に示したア〜エをもとに,単元ごとの指導目標,学習活動,指導上の留意点を明確にした指導計画を作成する。
 特に,指導目標については,学習指導要領,国立教育政策研究所教育課程研究センターから出されている資料,児童の実態等をもとに,全教職員で共通理解を図りながら設定する。
       評価基準,評価場面,評価方法の明確化
         評価計画の右側に,評価場面と評価方法,評価基準,支援策を示し,目標と指導と評価の一体化が図られるようにする。
        資料1 評価計画(一部)
    A  単元配列一覧の作成
       各学年ごとに,教科,道徳,特別活動,総合的な学習の時間の単元の相互関連を図り,多様な指導法や体験的な活動を計画的に取り入れられるように,単元配列一覧を作成する。
      資料2 単元配列一覧(一部)
    B  1単位時間の指導計画の工夫
       本時の基礎的・基本的な内容の明確化
         単元の目標達成のために,本時で押さえるべき基礎的・基本的な内容を明確にする。
       1単位時間の弾力化
         本校では,15分を1モジュールとするモジュール制を取り入れている。1単位時間の指導計画を立てる際には,学習のねらい,児童の実態と学習内容を考慮し,1単位時間の長さを柔軟に設定する。
  (2)  指導と評価の工夫改善
     本校では,各教科において学習指導と評価を工夫改善し,基礎的・基本的な内容の確実な定着につなげるように努めている。特に,教科部員会や学年会での協働体制により,それらの工夫改善を進めている。
 次に,その具体的な取り組みを示す。
    @  目標に準拠した評価と児童への対応
       指導目標,学習内容・学習活動に即した適切な評価規準と評価基準の設定
        (ア)  基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るために,指導目標(単元のねらい)と学習内容から評価規準を設定する。
        (イ)  評価基準については,評価規準をもとに「十分満足できる」状況の評価基準と「おおむね満足できる」状況の評価基準を設定する。
       評価の時期,場面,方法の明確化
        (ア)  1単位時間のねらいとそれを実現するための学習内容・学習活動から,評価の時期と場面を明確にし,評価計画に具体的に示す。評価を行うには,評価方法も重要な要素の一つである。そこで,1単位時間のねらいと学習内容・学習活動から最も適した評価方法を考え,評価計画に示す。
       評価結果をもとにした児童への対応
        (ア)  1単位時間における対応
 授業中の評価結果をもとに,その授業の中で個別指導を行う。
 個別指導でも不十分な児童が多い場合は,次時の学習内容を工夫し,前時の復習から入ったりする。
        (イ)  単元ごとの対応
 単元のまとまりごとの評価結果をもとに,補充的な学習や発展的な学習を設定し,指導にあたる。
    A  指導の改善につなげる評価
       指導の改善につなげるために,目標に準拠した評価以外に,次のような点について評価する。
       単元や1単位時間の指導目標は適切であったか。
       体験的な活動などの学習活動は適切であったか。
       評価基準は適切であったか。
       児童の主体的な学習の場が構成されていたか。
       その他(指導内容,教材,指導時期,指導形態,指導体制,指導方法)
    B  指導体制等の工夫
       少人数指導
         本校では,平成13年度から少人数指導を取り入れている。平成14年度は,1学級の人数の多い第3学年と第5学年の算数と理科において少人数指導を実施している。
        (ア)  平成14年度の改善点
           平成13年度の実践における評価結果をもとに,次のような改善点が明確になった。
 算数においては児童の習熟度に応じた学習集団を編成する。その際,保護者に少人数指導の趣旨を説明する。
 指導者同士で指導目標,内容,評価等について十分協議し合い,実施する。
        (イ)  少人数指導の実際
           算数では,第3学年第5学年とも習熟度別の集団を編成し少人数指導を行っている。その際,単元の学習前にレディネステストを実施し,児童の実態を把握している。また,児童にも自分に適した学習集団を選択させる機会を設けている。
 理科では,興味関心に応じて学習集団を編成している。
 いずれの教科においても,各教師が協力し合って指導案を作成し,実践するとともに,授業における児童の取り組みの様子を報告し合い,指導の改善に努めている。
 習熟度別少人数指導での評価は,個性の一層の伸長を図るという視点から,児童のよい点を積極的に評価し,その結果や学習状況について情報を交換している。
       社会人講師やゲストティーチャーとの連携
         総合的な学習の時間や生活科の学習において,社会人講師とティーム・ティーチングで行ったり,ゲストティーチャーと連携を図って指導したりしている。
    C  教師の指導力の向上を図る研修
       全学年において基礎的・基本的な内容の確実な定着を図ることができるようにするためには,教師の指導力の向上が必要不可欠である。そこで,本校では,次のような学年を主体とした研修をとおして,指導力の向上を図っている。
       校内研修での共通理解(月2回,第1,第2月曜日)
        (ア)  指導案作成上配慮することを共通理解する。
       研究主任と授業者との協議(随時)
        (ア)  基礎的・基本的な内容の定着を目指す本時の指導の重点内容について協議する。
        (イ)  本時の指導の重点に沿って,展開について協議する。
        (ウ)  評価基準,評価場面,評価方法等について協議する。
       学年会での授業実践計画についての立案・検討(毎週金曜日)
        (ア)  これまでの指導計画や評価計画を検討しながら,本時の指導目標と学習内容・学習活動を明確にし,授業の展開方法及び評価について検討する。
        (イ)  授業者は自己の課題を明確にし,その課題解決のための方策について検討し合う。
       学年内での研究授業と協議
        (ア)  授業者は基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るための手立てを明確にする。また,授業者自身の課題解決に向けて授業に臨む。参観者も授業者の手立てと課題の解決策について特に留意して参観する。
        (イ)  授業実施後に,基礎的・基本的な内容の確実な定着が図られたか,指導目標に迫るための適切な指導内容であったか,授業者自身の課題の解決策が適当であったか等について協議する。
       全体での研究授業と協議
        (ア)  年に2回程度研究授業と協議を全体に拡大して実施する。その際,市総合教育研究所の指導主事を講師に招いて,協議し合い,助言指導を受ける。
 今後の課題
  (1)  児童がより主体的に学習に取り組みながら基礎的・基本的な内容を確実に習得できるように,指導過程を工夫したり,教科等間の関連を重視した指導計画を作成したりしていきたい。
  (2)  児童による自己評価や教師自身の授業評価などを積極的に取り入れ,指導法の改善を図り,基礎的・基本的な内容の確実な定着を一層推進していきたい。
 
   ホームページ http://www.magokoro.ed.jp/watari-e/


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