外部との連携
   教育課程経営の外的整備の一つに,外部との連携がある。教育課程経営においても外部との連携は今後ますます重要となってくる。
 外部との連携内容をまとめると,次のようになる。


図2 外部との連携内容

 学校は,外部に対して,教育課程経営に関する説明及び情報の発信と連携協力の依頼を行い,学校教育資源を提供する。【実践事例3,7,13,14参照】
  (1)  保護者との連携
    @  教育資源の提供
       特に人的資源の提供は,教育活動に大いに役立つ。保護者は児童生徒を理解しており,教育活動のいろいろな場面で活用できる。また,保護者も児童生徒とかかわることによって,児童生徒を一層理解できるようになる。そして,教師をもより一層理解できるようになる。
    A  教育活動への参画
       ここでの参画とは,教育活動への参加のみならず,活動計画への参加及び実践場面での協力を意味する。学校の裁量権の拡大,自主性・自律性の確立に伴い,保護者は学校の利害関係者であるという意識が高まる。それによって,教育活動へ意欲的に参画するようになる。参画の主たる場となるのは,学級・ホームルームである。参画を推進していくためには,保護者に教育後援者としての意識の高揚を図ることも大切である。そのためには,まず保護者同士のリレーションづくりを行っていかなければならない。
 その他,学校支援ボランティアとしての教育活動への参画があげられる。【実践事例3,4参照】
 ここで重要になるのは,保護者の要望に応えながらも,学校の主体性を維持していくことである。今後,このバランスを図ることが教育課程経営に一層要求されてくる。
    B  外部評価
       教育課程経営においては,教職員の自己評価,内部評価を第一に考える。保護者からの外部評価は教職員の自己評価を補完するものととらえる。よって,ここでは,保護者にできる評価,保護者にしかできない評価とは何かを考え,評価項目,評価方法を明確にする必要がある。保護者としての願いや子どもを通してとらえられる学校についての評価項目を設定することがポイントとなる。また,簡単に意見を記述できる用紙の活用も効果的である。【実践事例3,5,7参照】
  (2)  地域との連携
    @  教育資源の提供
       地域との連携で最も重要なことは,地域の人的資源,物的資源の提供を得ることにある。
 児童生徒の実態により即した教育課程経営を推進していく上で,この地域の教育資源はとても重要である。【実践事例7,8,14参照】
 また,これからは,地域の人的資源に大学生等も加えていくことが望まれる。
    A  教育活動への参画
       保護者との連携同様,地域においても教育活動への参画は必然的に起こっている。ここでも重要になるのは,地域の人々の要望に応えながらも,学校の主体性を維持していくことである。今後,このバランスを図ることも教育課程経営に一層要求されてくる。【実践事例4参照】
    B  外部評価
       地域との連携の一つに,外部評価があげられる。ここでも,地域の人々にできる評価,地域の人々にしかできない評価とは何かを考えることが重要である。
  (3)  学校評議員との連携
     中央教育審議会答申(平成10年9月)「今後の地方教育行政の在り方について」に基づき,学校教育法施行規則等の一部改正が行われ,学校評議員制度が導入されることになった。よって,この導入の趣旨にそって学校評議員との連携を図っていくことが重要である。
    @  助言
       先の答申では,「学校評議員は,校長の求めに応じて,教育活動の実施,学校と地域社会の連携の進め方など,校長の行う学校運営に関して,意見を述べ,助言を行うもの。」と示されている。このことを踏まえて,教育課程経営への助言を得ることが大切となる。【実践事例9,13,14参照】
  (4)  教育委員会との連携
    @  指導助言
       教育行政の地方分権の推進,学校の裁量権の拡大に伴い,学校と教育委員会との連携を一層重視していく必要がある。そして,教育委員会には,教育の専門的立場と学校設置者の立場からの指導助言が強く求められる。
 各学校へは,特に次のような点に対して指導助言をする必要がある。
 教育課程の評価結果に基づいた改善策
 教育課程の編成の工夫改善策
 授業における指導方法等の改善策
    A  各種研修の提供
       特に,市町村教育委員会においては,各学校の教育課程経営を支援するために,各種研修の機会を提供することも重要である。市町村を単位とした研修は,「研修会場までの移動時間が短い。旅費も安価で済む。」「地域に即した教材開発ができる。」「指導助言者も学校の実態をよく理解している。」「教材などを共同開発して,実践し,成果や課題を確認し合える。」などの利点が数多くある。
    B  予算措置
       先の「教育資源の充実」の中で,財政的資源の充実の一つとして,予算の確保をあげた。教育委員会としても,各学校への予算措置の在り方を工夫していく必要がある。学校の裁量権の拡大,学校の自主性,自律性の確立のためにも,教育委員会の基準をもとに,各学校へ予め使用目的を細かく指定して予算を配分していくもの,使用目的をすべて各学校に任せて予算を配分していくもの,各学校からの予算要望をもとにヒヤリング等を行いながら予算を配分していくものとに分けて予算措置を行う必要がある。
  (5)  教育専門機関・専門家との連携
    @  指導助言
       各学校における教育課題が多様化してきているため,その教育課題に応じて教育専門機関や教育専門家との連携を図り,指導助言を得ることは,教育課程経営においても重要である。
 ここでのポイントは,「教育課題に応じて」ということである。例えば,学習指導に関する専門家を招いての定期的な授業研究,学習障害に関する専門家を招き,実際に学習状況を観察してもらう中での指導助言等,様々な連携が考えられる。
 なお,ここでの教育専門家とは,大学等の研究者だけでなく,学校で優れた実践を行っている教員等も含まれる。
    A  調査研究
       教育専門機関や教育専門家は,それぞれに調査研究を行っている。各学校においても,調査研究の依頼に協力し,そして,調査研究の結果の報告を受け,それを教育活動に役立てることも重要である。
  (6)  他校との連携
     教育行政の地方分権の推進,学校の裁量権の拡大に伴い,各学校が自主的,自律的に教育課程経営を展開していくことが求められているが,それは,同校種間の競争意識をあおることではない。競争意識が先行すると学校の孤立化が生じやすくなる。各学校の教育課程経営の質を高めるためには,むしろ,同校種間はもちろんのこと,異校種間を含めて,他校との連携を一層図っていかなければならない。

 他校との連携では,特に情報提供と共同研修・研究が重要となる。
    @  情報提供
       ここでの情報とは,お互いの教育課程経営に役立つ情報ととらえる。例えば,この情報をインターネット上で共有し合うことによって,お互いの教育課程経営がより効率的に効果的に行えるようになると考えられる。
    A  共同研修・研究
       これまでは各学校独自の研修・研究がほとんどだった。一部生徒指導研修や異校種連携の研究において,共同で取り組まれていたに過ぎない。
 今後,次のような分野において,共同研修・研究を行っていく必要がある。【実践事例7参照】
 基礎・基本の確実な定着を図る指導計画の作成
 地域の特色を生かした単元開発
 学習指導法の研修
 目標に準拠した評価(評価基準,評価方法)の在り方
 小・中・高等学校の各発達段階を踏まえた系統性のある教育課程の編成
  (7)  企業との連携
    @  教育資源の提供
       これまでも児童生徒の教科や総合的な学習の時間での見学,職場体験等において,企業との連携は図られてきている。これからは,これまでの取り組みを一層充実させることが大切である。【実践事例15参照】
 次に,企業のもつ固有の教育資源に注目して,それを学校教育に積極的に生かしていくことも求められる。例えば,企業の最先端の施設・設備を活用した授業を行っていくことがあげられる。特に,高等学校の専門学科においては,このような取り組みを行うことにより,生徒の学習意欲の一層の高まりが期待できる。また,教職員も企業の教育資源の提供を積極的に受けることが求められる。例えば,企業で取り組んでいる品質管理システムやマネジメント技術等を学び,教育課程経営に生かしていくことがあげられる。


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