第4 実践の視点
   理論研究と調査研究をもとに,特色ある学校づくりと教育課程経営の実践の視点をまとめてみた。
 特色ある学校づくりと教育課程経営
  (1)  特色ある学校づくりとは
       特色ある学校づくりを次のようにとらえる。

 児童生徒の実態や課題及び学校のこれまでの取り組みや地域性を踏まえて,創意工夫を生かした教育活動を展開し,よりよい学校をつくっていくこと。

 特色ある学校づくりの「特色」とは,他校と比較しての独自性とか,奇をてらうものではない。児童生徒の実態や課題及び学校のこれまでの取り組みや地域性を踏まえて,創意工夫を生かした教育活動を展開するところに特色が生じるのである。結果として他校と同じような取り組みであっても,このような過程を経て取り組んだ活動であれば,特色ある活動であり,その積み重ね,即ち,絶えざる改善を繰り返し,よりよい活動をつくり,よりよい学校をつくっていくことが特色ある学校づくりなのである。
 特色ある学校づくりは,第15期中央教育審議会第一次答申(平成8年7月)において,「[生きる力]をはぐくむ上で,特色ある学校づくり等を一層進める必要がある。」と示されているように,児童生徒の生きる力の育成のために行われるべきものである。また,学校の自主性,自律性の確立が求められるのに伴い,この特色ある学校づくりがますます重要視されてきている。
  (2)  教育課程経営とは
       教育課程経営を次のようにとらえる。

 学校の教育目標の実現を目指し,創意工夫を生かし,責任をもって,最も効率的,効果的に教育課程の編成,実施,評価,改善に関する一連の行為を行っていく取り組みの総体。

 教育課程経営は,学校経営の中核と位置付けられ,特色ある学校づくりにつながるものである。教育課程は運営するものではなく,経営するものであるという考えに立ち,教育課程経営の特徴を四つの視点から述べる。
 第一に「創意工夫と責任」があげられる。学校の自主性・自律性の確立が求められるのに伴い,できるだけ学校の自由裁量権を生かして経営にあたっていく必要がある。そのことは同時に,説明責任,結果責任を負うということも忘れてはならない。第二に「効率性と効果性」があげられる。経営では常に効率性や効果性が求められる。教育課程経営も当然のことながら,最も効率的,効果的に行っていくよう努力することが求められる。第三に「編成,実施,評価,改善」があげられる。これらはスパイラル的に,常に連続して展開され,更新されていく。第四に「取り組みの総体」である。教育課程経営では,児童生徒,教職員はもとより,これにかかわるすべての人,もの,ことを対象とする。
  (3)  教育課程経営の図式化
     
図1 教育課程経営の図式

 教育課程経営を外的整備と内的整備に分けてとらえる。図1に示したように,外的整備には,「教職員の協働体制」「教育資源の充実」「外部との連携」がある。これらの取り組みを推進していくことが,内的整備における教育課程経営のより円滑な展開につながる。
 内的整備には,授業及び単元における教育課程経営と学期及び年間における教育課程経営とがある。授業及び単元における教育課程経営は,「計画」→「実践」→「評価・対応」→「改善」→「計画」という一連の過程で展開される。ここでの「改善」では,「計画」のみならず,「実践」「評価・対応」に対しても改善策を見いだし,次の「計画」「実践」「評価・対応」に反映させ,常に「計画」「実践」「評価・対応」を改善,更新させていく。また,ここでの教育課程経営では,まず「評価・対応」に目を向けるようにする。
 学期及び年間における教育課程経営は,「編成」→「実施」→「評価」→「改善」→「編成」という一連の過程で展開される。ここでの「改善」では,「編成」のみならず,「実施」「評価」に対しても改善策を見いだし,次の「編成」「実施」「評価」に反映させ,常に「編成」「実施」「評価」を改善,更新させていく。また,ここでの教育課程経営では,まず「評価」に目を向けるようにする。
 授業及び単元における教育課程経営は,学期及び年間における教育課程経営の「実施」にあたるととらえることができる。
 教育課程経営の外的整備を進めながら,内的整備にあたる授業及び単元における教育課程経営と学期及び年間における教育課程経営が展開されていくが,これらの教育課程経営が展開されていくことによって,外的整備にあたる「教職員の協働体制」「教育資源の充実」「外部との連携」の三つの取り組みも一層の充実が図られるようになる。


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