先進校視察
  (1)  視察校の教育課程経営に関する取り組みの実際
    @  小学校
       茅ヶ崎市立浜之郷小学校
         現行の教育課程を踏まえ,教育活動を「礎カリキュラム」「教科領域」「教科発展領域(総合的な学習の時間)」の三つの領域から構成している。
         カリキュラム管理室を設け,授業等で活用した指導計画,指導案,資料等を蓄積している。
         校内研修を学校経営の中核と位置付け,大学の研究者や各研究機関との積極的な連携を図りながら,授業研究,ケア・カンファレンスの確立,カリキュラムの開発に取り組んでいる。
       台東区立根岸小学校
         各教科等と「総合的な学習の時間」を調和的に位置付けた新しい教育課程の編成と実施を進めている。また,教科相互の関連的展開を重視している。
         学期に2回程度教科部会及び学年会で年間指導計画について検討し,改善している。
         週案を全教師が作成し,それに基づいて実践し,その週案の中に実践に基づいた改善点を記入している。週案を金曜日の放課後または月曜日の朝校長に提出し,校長はそれにコメントを入れて指導助言している。
       品川区立伊藤小学校
         より客観性のある評価と学校改善につながる実効性のある評価を目指して,学校内部と外部の両面から評価活動を行っている。
         校長が外部評価者を推薦し,区教育委員会が委嘱する方法をとっている。
         外部評価項目は区で統一されている。「学校の総体について」「基礎学力の定着に関して」「社会性・人間性の育成に関して」「保護者・地域との連携に関して」「独自の特色ある教育活動に関して」の五つの大項目から構成されている。
       品川区立上神明小学校
         品川区立伊東小学校,品川区立富士見台中学校とともに,文部科学省の研究開発校として教科の再編と小・中の一体的接続を目指している。
         教科の枠を柔軟化し,「言語系」「自然系」「社会教養系」「健康系」「芸術系」の五つの系に再編し,児童生徒の学習と認知の実態に即して,方法習得型のカリキュラムを開発している。
         系ごとに求めるものを「スキル」として明確化している。
    A  中学校
       新宿区立牛込第三中学校
         各教科,道徳,特別活動,総合的な学習の時間相互の役割を明確にし,調和のとれた教育課程を編成している。
         基礎的・基本的事項に厳選した必修教科,補充と発展を主体とした選択教科,学習スキルの習得を目指す総合的な学習の時間相互の関連を明確にし,一体的な指導を展開している。
         評価と評定の内容及び方法についての工夫改善を進め,達成度評価や絶対評価への転換を図っている。
       相模原市立谷口中学校
         総合的な学習の時間「谷口ドリーム学習」を中心に生徒の主体性を重視した学習を展開している。
         ポートフォリオ評価の工夫改善に努めている。
         地域とのふれあいを深める学校行事の工夫改善に努めている。
         教育課程の改善に生かす全生徒,全保護者対象のアンケートを実施している。
       八王子市立松木中学校
         基礎学力の確実な定着のために,一人一人の生徒に応じた指導や習熟の程度に応じた指導,補充的な学習を行っている。
         個人課題追求学習を重視した選択教科の実践と評価の工夫改善を図っている。
         豊かな体験活動を生かした心に響く道徳教育を推進している。
         自らの心と体の健康管理ができる生徒を育てるために,ライフスキル教育を推進している。
    B  高等学校
       都立つばさ総合高等学校
         平成14年4月に開校する。
         民間出身の校長のもと,顧客第一,教育品質第一の開かれた学校経営を目指す。
         進路指導の充実のために,「進路学習」「ガイダンス」「カウンセリング」の三つのシステムを計画している。
         企業との連携を重視した教育活動を考えている。
       都立戸山高等学校
         進学指導重点校として,研究成果を外部に公表するとともに,指導内容と指導方法の改善にも取り組んでいる。
         平成15年度入試から独自問題で実施する。
         地域から校長への支援体制をつくることを目的として,学校運営連絡協議会を設置している。
       都立八王子東高等学校
         進学指導重点校となり,7時間授業を年間20日実施している。
         年12回の土曜日授業公開を行う。また,その日の午後に保護者会を実施している(年5回)。
         平成15年度入試から独自問題で実施する。
       都立足立東高等学校
         エンカレッジスクールの指定を受け,学力検査によらない入学者選抜を行う。調査書,志願理由書,面接,小論文等により選考し,学ぶ意欲と熱意をみる。
         1クラス2人の担任(正副ではない)を配置し,きめ細かい指導を行う。
         国語,数学,英語等の教科の授業を30分で実施する(30分×3を2単位とする)。
         毎週1回のキャリアガイダンスを実施する。
  (2)  考察
    @  学校の特色
       目指す児童生徒像が明確に示され,その児童生徒像の実現を目指して,教育課程が展開されている。そして,教育課程の改善や更新が図られている。
    A  教育課程の編成
       校種ごとの課題や各学校の課題を踏まえ,これまでの取り組みをもとに,創意工夫を生かした教育課程が編成されている。また,このような教育課程の編成を実現させるために,協働体制,外部との連携及び校内研修の充実が図られている。
    B  教育課程の評価・改善
       教育課程の評価の中では,教科等の評価を重視している学校が多い。教育課程経営の中核は教科等であるという共通認識があるものと考える。また,その教科等の評価においては,児童生徒の変容のみならず,指導内容や指導方法を評価項目として位置付けている学校もある。このような位置付け方は,教育課程経営の評価を考える上で重要な示唆を与えてくれる。
 小学校においても,保護者や地域の人々の声はもちろんのこと,児童の声を教育課程の評価に生かしている学校がある。この点も大いに参考になる。
 さらに,カリキュラム管理室を設け,日常的な評価・改善に取り組んでいる学校もある。改善のための評価という評価の本来の目的を踏まえた取り組みが行われている。
    C  教職員の協働体制
       校長のリーダーシップのもとに,協働体制がとられている。また,組織を見直し,よりよい協働体制が図られるよう組織の改善を行っている学校が多い。
    D  校内研修の充実
       自己申告書を作成させたり,個人研究を取り入れたりするなど,一人一人の資質能力の向上を目指して校内研修を行っている学校がある。また,外部講師を積極的に招聘し,年間指導計画の作成方法や評価の在り方について研修を行っている学校が多いことも特徴の一つと言える。
    E  外部との連携
       各学校の共通点として,地域との連携を大切にしていることがあげられる。学校評議会のような組織をつくり,意見交換会を行っている学校もある。また,教育委員会,各種教育専門機関等との連携を重視している学校も多い。
    F  その他
       各学校とも,校長の示した明確な経営理念とビジョンをもとに,校長自らがリーダーシップを発揮して学校経営,教育課程経営に取り組んでいることが分かった。校長の経営理念やビジョンは,協働体制づくりを進める上にも大切であるが,教育課程経営の最も核となる部分であるととらえることができる。


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