【教材8】 CGIを利用したインタラクティブな教材の開発
  茨城県立鬼怒商業高等学校 教諭 広瀬 信幸
  茨城県立那珂湊第一高等学校 教諭 青山 昌俊
(1)  教材開発のねらい
   近年,インターネットが急速に発展してきており,学校教育において情報活用能力や国際性を養う必要性が高まるなど,これからの時代を担う生徒にとっては,インターネットの活用が重要な課題になっている。
 現在の専門高等学校は,コンピュータ室はもちろんのこと,普通教室でもパソコンを利用できるなど,情報教育の環境は整っている。文字,音声,動画等の大容量の情報を高速かつ高品質に送信,受信できる光ファイバーの導入も完了している。
 この急速なハードウェアの進展に対して,ソフトウェアの整備が遅れているのが懸念されている。インターネットを通じて,多くの情報を入手することは容易であるが,必要なソフトウェアを瞬時に用意して,授業に有効な手段として活用することは難しい場合が少なくない。
 そこで,私たち教師が授業などで,容易に利用できるコンテンツの研究に重点を置きながら,生徒も,時間帯を問わず,いつでも学習できることをねらいとして「インタラクティブな教材の開発」に取り組んだ。この教材により,生徒がインターネット活用の実践力を,大いに高めることができればと思っている。
   
(2)  教材の内容
 
 学習内容
 教材の構成
   CGIを利用するため,Perlスクリプトを基本として構成されている。CGIという仕組みを利用すれば,動的でインタラクティブな教材を開発できる。インターネットでよく利用されている電子掲示板やチャット,アンケート集計などは,このCGIを用いている。
 
(ア)  Web教材のタイトル
   専門高等学校の商業科の生徒が簿記実務検定試験の学習に利用する内容なので,「簿記実務検定直前クイック問題集」とした。
   
(イ)  Web教材の構成
 
  1. 「簿記実務検定直前クイック問題集」メインページ
     次ページの図8-1,図8-2に示すように,問題と解答用の選択肢が記載されており,スクロールしながら解答できるようになっている。解答するときの手軽さを考慮して,使い易いシンプルなページにまとめてある。
     問題数や選択肢の増減については,比較的容易に変更できるようにしている。
図8-1
 
 
   ラジオボタンをクリックしていって,解答がすべて終了したら,図8-2 の下方に示す「採点ボタン」をクリックする。これにより,選択された内容が簡易データベースファイルに転送され,解答を照合した後,採点された結果が表示されるようになっている。無解答については,誤答として扱われるので,すべての問題を解答しなくても採点が可能となっている。
 また,採点前に選んだ解答を別のものに変更する場合は,図8-2 の下方に示す「やり直す」のボタンをクリックすると,ラジオボタンの選択された内容がすべてクリアされ,はじめから解答することができるようになっている。
図8-2
 
 
 
  1. 「簿記実務検定直前クイック問題集」の結果表示ページ
     図8-3,図8-4に示すように,採点結果を,正解数および得点で表示する。合格基準点の設定は,出題数によって定めている。また,「よくやった。合格です!」や「努力が足りません!」というコメントの表示は,文字がスクロールするようにMarquee を設定している。
     コメントは,生徒とのコミュニケーションを図り,受験に向けての激励にもなると思う。
図8-3
図8-4
 
 
 
  1. 簡易データベースファイル(テキストファイル)
     問題文や選択肢,正解などについては次ページの図8-5 のように,あらかじめテキストファイルとして作成しておく必要がある。図8-5 のテキストファイルの内容は一問ごとに,表8-1 に例示した5項目から成り立っている。
表8-1、図8-5
   
(3)  開発の方法
 
 開発の方針
   インターネットのWebページは,HTMLで作成されている。HTMLは,相互にWebページを参照しあったり(ハイパーリンク),テキストはもちろん,画像や動画,音声なども扱うことができる。
 しかし,HTMLの機能だけでは,インタラクティブなWebページを作成することはできない。インタラクティブなWebページを作成する方法はいくつかあるが,今回のWeb教材開発では教材の拡張性などを考慮して,CGIを選択した。
 また,CGIを利用するためのスクリプト言語として,参考文献の多さなどの理由により,一般的によく使われているPerlを選んだ。
   
 開発環境
 
(ア)  OS
   Webサーバ→ UNIX
 クライアント→ Windows 98
(イ)  言語
   Perl 5
(ウ)  主な使用ソフトウェア
   テキストエディタ,FTPクライアント,Telnetクライアント
(エ)  CGI
   CGIもHTMLと同様に,クライアントのブラウザからWebサーバに対して指定アドレスの情報を要求することから始まる。要求を受けたファイルの拡張子が「.cgi」になっていれば,Webサーバはスクリプトを実行させる。スクリプトはデータベースなどにアクセスしながら処理を完了させて,実行結果をWebサーバに返す。Webサーバは,この実行結果をクライアントのブラウザに送信して処理を完了させる。下図8-6 にWebサーバによるCGIの仕組みを示す。
図8-6
(オ)  インタプリタ
   CGIを利用するには,Webサーバが動作しているコンピュータであることと,スクリプトを翻訳して実行させるインタプリタをWebサーバが装備していることが必要である。今回の開発にはインタプリタとして,Perl version 5を使用している。
 
  1. Perlの長所
    スクリプト言語は簡易プログラムであるため,次の長所がある。
    パワフルな文字列処理が実証済みである。
    プラットフォーム間で,互換性が認められている。
    スクリプトのサンプルやライブラリが充実している。
    テキストエディタでスクリプトの作成や修正が容易にできる。
    コンパイルの必要がなく,メモリ管理も安心である。
  2. Perlの短所
    インタプリタはスクリプトを1行ずつ翻訳しながら処理を実行するため,次の短所がある。
    動作がやや遅い。
    超高度な処理はできない。
   
 開発の手順
 
(ア)  開発方法
   Perlスクリプトの作成
  図8-7
   
(イ)  詳細設定等
 
  1. 「簿記実務検定直前クイック問題集」の合格点設定
     出題数によって,合格点の基準を変更しなくてはならない。上の図8-7 の1行目が,合格点の設定である。
  2. 簡易データベースファイルのフルパス設定
     問題文や選択肢等のデータを引き出すために,簡易データベースファイル(テキストファイル)のフルパスを設定する。上の図8-7 の3行目が,データファイルへのフルパスである。
  3. Perlインタプリタへのフルパス設定
     Perlスクリプトを翻訳するインタプリタへのフルパスを記述する。もしも,フルパスの設定に誤りがあると,Perlで作成したスクリプトが正しくても動作しないことになる。
     上の図8-7 の1行目で,Perlインタプリタへのフルパスを設定している。
     フルパスは,使用するWebサーバによって異なることがあるため,あらかじめ環境を確認する必要がある。
  4. 文字コードの設定
     FTPクライアントを使用してファイルを転送する前に,文字コードを適切に設定しておく必要がある。Windows 98ではShift−JISという漢字コードで日本語を表現しており,UNIX系OSでは,EUCやJISという漢字コードを使用している。そのため,UNIX系OS上で動作しているPerlスクリプトは,漢字コードをEUCに設定する必要がある。
  5. Webサーバへアップロード
     Perlスクリプトやデータファイルは,FTPクライアントを使用してWebサーバへアップロードする。今回の開発では,フリーウェア「FFFTP Version 1.82」(曽田純氏が作成)をFTPクライアントとして使用した。フォルダの転送や日本語コード変換機能などを備えた,高機能なFTPクライアントである。
     FTPクライアントを使用する際には,転送モードに十分注意をする必要がある。転送モードには二つの方法がある。一つはASCII(アスキーまたはテキスト)モードで,もう一つはBinary(バイナリ)モードである。前者は,Perlスクリプトやデータ等のテキストファイルを転送するときに使用される。後者は,画像や音声,動画などを転送するときに使用される。
     また,UNIX上のPerlの改行コードは,LineFeedであるため「LF」に変換する必要がある。今回のFTPクライアントの使用例を,下の図8-8に示す。
    図8-8
  6. 転送ファイルのパーミッション設定
    @  パーミッション
       アクセス権限をパーミッションと呼んでいる。
    A  パーミッションの詳細
       表8-2 の数字の和を利用してアクセス権限を指定することができる。例えば,あるファイルへのユーザの読込・書込・実行を許可した場合は,4+2+1で7となる。
      表8-2 パーミッションの詳細
    オーナー グループ (一般)ユーザ
    読込 書込 実行 読込 書込 実行 読込 書込 実行
    4 2 1 4 2 1 4 2 1
    r = read w = write x = excecute
    B  設定
       Perlスクリプトファイルは「755」に設定して,データファイルは「644」に設定する。FTPクライアントを使用して,ファイルをアップロードした後に,パーミッションの設定をする。パーミッション「755」は,オーナーは「7」なのですべて許可,グループとユーザは「5」なので書込は不許可,を意味している。
   
(4)  教材の活用例
 
 休み時間などを使った活用
   簿記実務検定試験が間近になると生徒は,問題集を頼りにドリル学習に徹している。また,各専門高等学校では,早朝や放課後に課外を計画するなどして,簿記実務検定試験の合格に向けて万全の学習体制を整えている。もちろん,こういったことは簿記実務検定試験に限ったことではないが,修得単位の比重からすれば力の入る検定試験であることは事実である。
 こういったことを踏まえると,今回開発したWeb教材を活用する場面としては,次のような方法が考えられる。すなわち,「簿記実務検定直前クイック問題集」は問題を解く時間がかからず即答できるので,生徒が休み時間などを使って自主的に活用をする,ということである。基本的な知識がしっかりと定着しているのかどうかを自己評価できるとともに,生徒への励みにもつながり,学習意欲を高められると考える。
 自宅での活用
   自宅学習用教材としての活用はかなり効果的であろう。Web教材の本質は,インターネットを利用した遠隔学習にあると考えている。
   
(5)  今後の課題
   CGIの有効利用と教材の充実という二つの観点でとらえると,次の二つが今後の課題であると考える。
 まず,今回開発したWeb教材「簿記実務検定直前クイック問題集」は,学習者の採点結果などを個人の履歴ファイルとして,Webサーバに保存させるまでには至っていないという点である。つまり,市販されているCAI教材のように,体系的な個別学習の支援はできていないのである。CGIを利用すれば,Webサーバ上でファイルへの書込等ができるので,学習者のIDなどを利用して個別的なファイルを作成できる。進捗状況に合わせた個別学習ができるようになれば,更に生徒の学習意欲も高まると考える。今後,研究を重ねてこの点についても取り組みたい思う。
 もう一つは,問題文や選択肢などの教材データの更新についてである。「簿記実務検定直前クイック問題集」は,教師は容易に教材の準備ができ,生徒は手軽に使えるといったことを考慮して開発している。教師が新たに教材データを付け加えるときは,テキストエディタなどを利用して,直接にソースファイルを修正する必要がある。このとき誤って重要なコマンドなどを削除してしまったら,元に戻すのにかなりの労力を要する場合もあり得る。こういったことがないように,Webブラウザ上で更新ができるなどの工夫をしていきたいと思う。


【参考文献等】    
・「一歩先行くインターネットCGIプログラミング入門」 秋本 祥一 翔泳社
・「そのまま使えるCGI」 Forest Co.,Ltd エーアイ出版
・「HTMLデザイン辞典」 足立 裕司 翔泳社
・「HTMLタグ辞典」 アンク 翔泳社
・文部科学省 http://www.mext.go.jp/
・茨城県立岩井高等学校 http://www.iwai-h.ed.jp/


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