【教材7】ASPによる教材の開発
  神栖町立神栖第三中学校 教諭 内藤 英一
(1)  教材開発のねらい
   コンピュータを活用した授業では,レポート形式にまとめたデータを印刷して提出するなどの機会が数多くある。その際に使用されるワードプロセッサソフトウェアは,指導者,または学習者によって違うというのが現状であろう。しかし,WebページはHTMLの使用が世界の標準になっている。このWebページを生かした教材,いわゆるWeb教材を開発していくことは, 将来性に長けている点も見逃せないが,学習者が同一環境で学習可能な点も重要な点であると考える。このようなWebアプリケーションを研究・開発するのは,とても大きな意味があると感じている。
 今回の教材の開発に用いるActive Server Pages(以下ASPと略す)は,クライアントから送信された各種データをサーバ側で処理し,その結果を返信するための技術であり,またサーバに保存されたクライアントのデータを容易に利用することもできるので,双方向の通信ができる教材を開発しやすいと考えている。これらの特性を生かして,クライアントから送信されたデータをWebページ上に取り込み,学習などに活用していくことができると考えている。
   
(2)  教材の内容
 
 学習内容
   文部科学省から発行された「中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−技術・家庭編−」では,技術・家庭科を二つに分野化し,その中の技術分野においては学習内容が大きく2つに大別され,「A 技術とものづくり」「B 情報とコンピュータ」となった経緯などが示されている。この中の「B 情報とコンピュータ」では,「情報通信ネットワークについて,情報の伝達方法の特徴と利用方法を知ること。情報を収集,判断,処理し,発信ができること。」と,内容が示されている。
 このことを踏まえ,教材開発のねらいと照らし合わせながら,第3学年技術・家庭科(技術)情報基礎領域で使用する教材について研究を進めた。そして,教材を用いた学習内容を, 次のように考えた。
 「電気の正体や最新のロボット事情など,情報基礎に関する題材で,それぞれ個々の興味・関心に応じた調べ学習をインターネットを利用して行う。そして,調べた結果を教材を利用してレポートにまとめる。レポートはデータベース化されるので,これを利用して情報の検索を行い,更に調べ学習などに利用する。」
 教材の構成
    まずは,ASPのインタラクティブな機能を充分に活用することができるように,サーバとクライアントがWindows 98で構成されたイントラネットを構築し,教材をどこからでも利用できるようにした。
 教材そのものは,ASPを利用できるようにVBScriptで基本ページ(以下「ASPページ」という。)が作成されている。また,クライアントから送信されたデータをサーバで管理等ができるように, Microsoft社のデータベースソフトウェアAccess2000をサーバに使用した。
 教材の構成を大まかに言えば,いくつかの項目別になった電子掲示板,そこに学習者が自由に記述した内容をデータベース化するソフトウェアやサーバ,電子掲示板やデータベースを検索した結果を表示するWebブラウザ,以上3つになる。
   
(3)  開発の方法
 
 開発の方針
    開発段階なのでWebページ全体をテキストベースで作成し,できる限りサーバ・クライアント側にアクセスの負担をかけないよう心がける。また,登録されたデータを蓄積し,容易に管理できるようにデータベースを活用する。
   
 開発環境
    Windows 98が動作するコンピュータ(CPU400MHz:PentiumU,メインメモリ128MB)に,OSに付属しているPWS(Personal Web Server)をインストールし,ASPが動作可能な環境を構築した。
 更に,ASPと連携したデータ管理ができるように,Microsoft社のデータベースソフトウェアAccess2000をインストールした。
 ASPページ作成には,「AutoASP」というフリーソフトを利用し,作成後の細かい編集にはWindows 98に付属しているテキストエディタ「メモ帳」を利用した。
   
 開発の手順
 
@  AutoASPでソーススクリプトを自動生成し,ASPページを作成する。
A  拡張子を.asp,または.htmにして,作成したASPページをサーバに保存する。
B  クライアントのWebブラウザからASPページにアクセスし,動作状況を確認する。
C  必要に応じて,メモ帳を使ってソーススクリプトの修正等を行う。
D  これらを繰り返して行い,教材の開発を進める。
   
 ASPページの構成
   児童生徒が利用するページは,基本としては「登録ページ」「検索ページ」の2つである。管理者用として「削除ページ」も設けてあるので,全体としては3つの構成になっている。下に概要を示すが,詳細については「(4) 教材の活用例」に記載した。
 
(ア)  登録ページ
   記入項目があらかじめ設定されていて,その空欄へ児童生徒が自由に記述していき,その内容をサーバに送信して,データベースに登録するためのページ。また,データベースに登録した内容の閲覧もできるようになっている。項目記入欄の下に,登録した内容が表示されるようにしている。
(イ)  検索ページ
   登録ページに設けたキーワード検索機能を利用すると,データベースに登録されている内容が表示されるページ。登録されるデータ数が多くなれば,必ず必要になると考えて,このページを設けた。
(ウ)  削除ページ
 データベースに登録された内容を削除して,整理するためのページ。管理者がパスワードを用いて,このページにアクセスする。
   
(4)  教材の活用例
 
 レポート登録板
 
(ア)  登録画面(図7-1)
   ページの題名は「レポート登録板」とした。このページに学習内容を入力していくことになる。
 入力する項目は,学習の流れに沿うように,次の六つにした。
  図7-1
 題名
   レポートの題名を,分かりやすいように工夫して記入する。
 調べた理由
   調べたいと思った動機などを,率直に記入する。
 調べた方法
   調べた方法や手順などを,できるだけ詳しく記入する。
 調べた内容
   具体的に記入していく欄。箇条書きでも文構成でも良く,メインとなる内容を記入する。
 感想
   一連の学習を振り返ってみての感想を記入する。反省なども記入して良い。
 今後の課題
   次の学習につながるように,課題を記入する。これにより学習に広がりをもたせるとともに,学習意欲の向上を図る。
(イ)  入力例
  図7-2 図7-2は,記入している途中の画面である。題名には40文字×1行という文字数の制限を設けている。他の項目では記入できる文字数に制限は設けていないが,画面表示は全角で40 文字×1行にしてある。記入された文字が欄より多くなっても,欄の右側にあるスクロールバーを使えば,欄外の文字が表示できるようになっている。
(ウ)  登録内容の閲覧
  図7-3 今は試作段階なので,図7-3に示すように,テキストベースで表示している。登録した日時をヘッダとして,順次登録した内容が表示される。「登録ページ」の下の部分から表示されるので, 閲覧しづらい面があると思われる。今後は別のウィンドウに表示されるようにするなど,改良を加えていく必要がある。このページに表示しておける期間を今回は30日間とした。登録内容は,保存されているので,期間が過ぎても検索で表示可能である。
(エ)  登録と検索
  図7-4 各記入項目の入力を終えたら,図7-4 の中段部に示す登録ボタンをクリックする。そうすると画面下部に,登録内容が図7-3のように表示される。
 また,図7-4の中段部に示すように, サーバのデータベースから,目的の内容を探すためのサイト内検索ができるように工夫してある。
(オ)  検索結果の画面
  図7-5 図7-5は,キーワードを「神栖」として検索した結果である。現段階では, この画面から「戻る」とクリックすると登録画面に行ってしまい,思いどおりの結果を得るには至っていない。今後は,検索結果の画面から,レポートデータ一覧ページが表示されるような改良をしていく必要がある。
(カ)  削除ページ(その1)
  図7-6 入力されたレポートがサーバにデータベース化されれば,そのデータを管理していくことも必要となる。その管理の中でも,不要なデータ,もしくは重複データを削除することは重要な要素であると考える。削除ページへのハイパーリンクは,登録ページの一番下に設けてある。
(キ)  削除ページ(その2)
  図7-7 データ削除の機能は必要であるが,誰でもその機能が使えてしまうのは好ましくないので,パスワードが合わなければ削除できないようにした。
 パスワード入力後は,「送信」ボタンをクリックする。
 Access2000を使用し,サーバのデータベースのレコードを削除することもできるが,今回の研究の目的により, すべての操作がWeb上で行えるように開発した。
(ク)  削除ページ(その3)
  図7-8 図7-8に示すように,レポートには自動的に通し番号が付いて登録されるようにした。これにより,データの活用と管理が容易となった。削除ボタンで,データベースから内容を削除することができる。
 情報基礎に関する五択問題
   データベースを活用した,簡単な五択問題を作成してみた。学習者な名前や解答結果等をデータベースに登録をしておけば,一人一人の集計結果も容易に確認できるので,Web教材としての活用も広がると思われる。
 
(ア)  ログイン画面
  図7-9 図7-9は,情報基礎に関する五択問題のログイン画面である。組番号をIDとして入力し,ログインボタンをクリックする。
 学習記録を保存するファイルは,テキストファイル形式でもCSV形式でも,Access2000のデータ形式に変換できるものを選べばよい。
(イ)  メニュー画面
  図7-10 図7-10のような項目で作成した。管理者だけが,「集計を見る」を利用することができる。「学習の終了」をクリックすると,ログイン画面に戻るようになっている。
(ウ)  五択問題実行画面
   解答を選択するに当たっては,図7-11に示すように,ラジオボタンを利用した。今回は全部で15問ほど用意し,内容としてはマウスやキーボードの操作,ネットワークエチケットなど,基本的な設問にした。
  図7-11
(エ)  解答結果画面
  図7-12 図7-12は解答結果の画面である。正答数と正答率が表示され,それに応じた簡単なコメントも表示される。
 その下には,視覚的に確認できるように,個人の成績推移グラフを表示させた。
(オ)  正答画面
  図7-13 設定した問題についての正答(図7-13)と,その解説のページを設けた。正答は,赤色で表示されるようにしてある。
 解説画面は,このページからハイパーリンクしており,別のウィンドウに表示される。
(カ)  集計画面
  図7-14 図7-14は,管理者が利用できる集計画面である。図7-9で管理者用のIDを使ってログインすると,画面が開くことになっている。
 この画面では,学習者全員の正答率グラフが表示されるようになっている。
(キ)  この教材について
   この五択問題の教材開発により,ASPでは容易にデータベースを利用できることが示されたと考える。UNIX系OSのCGIでデータベースを運用する場合には,より多くの知識を必要とする。今回は,AutoASPという優れたフリーソフトを活用したので,更に容易に教材開発を進めることができた。
   
(5)  今後の課題
   今回の研究では,ASPを用いたWeb教材の開発を試みたわけだが,研究を進めていく中でいくつかの問題に直面した。特に,問題となったのは,開発の基礎となる動作環境である。
 今回は,Windows NTサーバのような強固なシステムではなく,パーソナルユースのWindows 98SEにPWSをインストールしてサーバを構築した。大きな問題は生じなかったが,いくつかの機能の欠落が問題となった。特に,データベースを利用する際に様々な問題が多発した。この問題の解決に多くの時間を費やしてしまった。
 また,動作確認をするために,PWSをインストールしたパソコンをネットワーク上に接続するときにも問題が発生した。自宅ではネットワーク環境が整っていないため,もっぱら学校のネットワーク設備を利用して確認作業を進めたが,これにより開発時間が制約され,予定よりも開発がかなり遅れてしまった。これは動作環境と言うよりも,開発環境の問題であろう。
 さて,今後の課題を次に示す。
 今回の研究で開発したWeb教材は,まだまだ試作段階であり,改良やデバッグする必要がかなりある。また,学習者の視点での使いやすさや見やすさの向上など,更なる改良が必要不可欠である。この点については,今後,実践を重ねて,教師や生徒からの声などを参考にしながら進めていきたい。
 次は,セキュリティに関することである。今回開発したWeb教材を,現段階でインターネット上で公開してしまうと,誰でもレポート登録板への記入が可能な状態なので,悪質ないたずらなど,大きなトラブルが発生する可能性がある。そこでアクセス制限をどのように設定していくかが,この課題の焦点となってくる。IDとパスワードでアクセス制限をかければ,手軽に利用できない状態になってしまうのではと考える。この点については,今後も研究を重ねたいと思う。
 また,登録ページのバリエーションを豊富にしていく必要がある。今回は1つだけしか開発しなかったが,学習内容などによって記入項目を変える必要があると考える。今後,様々な場面に対応できる柔軟な教材へと発展させていきたい。
 ASPとデータベースの連携についても課題となった。データベースソフトウェアを活用してデータの管理をしていくのだが,ASPとの連携についてはまだまだ知識不足なので,思ったとおりの実行結果を得られなかったり,またやりたいことができなかったりした。今後は,数多くの協力者を得て,ともに研究を進めていきたい。よりよいもの,より使いやすいものを求めるとなると,一人だけでの研究開発は困難な面があると思う。今回のWeb教材の開発を機会に,今後は,研究開発の輪を広げていきたいと考える。


【参考文献等】
・「中学校新教育課程の解説技術・家庭」 河野公子・渡邉康夫 第一法規
・「はじめ て使うASPのすべて」 高尾哲朗 ソシム
・「ASP実践プログラミング入門」 生形 洋一 技術評論社
・「ASP300の技」   技術評論社
・「図解でわかるWeb技術のすべて」 小泉 修 日本実業出版社
・AutoASP http://www.fsinet.or.jp/~joudai/autoasp.htm


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