III  主題設定の理由
   研究主題を設定するに当たり,統一研究主題との関わり,情報化の進展に対応した教育に関する国の施策,茨城県における情報教育の現状,情報教育に関するこれまでの研究成果等を考慮した。その結果,インターネットを利用する教材の充実を図る必要があると考え本主題を設定した。
 
  1. 統一研究主題「生きる力をはぐくむ学校教育」について
     平成8年7月に出された第15期中央教育審議会第一次答申では,「溢れる情報の中で、子供たちが誤った情報や不要な情報に惑わされることなく、真に必要な情報を取捨選択し、自らの情報を発信し得る能力を身に付けることは、子供たちにとってこれからますます重要」であると指摘し,各学校段階を通じた系統的,体系的な情報教育の実施により「生きる力」としての情報活用能力の育成を図ることを提言している。
     また,子供たちの教育の改善・充実のために,情報機器や情報通信ネットワーク環境を整え積極的に活用することに加えて,学校の施設・設備全体の高機能化・高度化を図り,学校自体を高度情報通信社会に対応する「新しい学校」にしていく必要性があると提言している。そして,「高度情報通信社会は、コンピュータを単体で活用するのではなく、それらが情報通信ネットワークによって一体となって機能するところに、その本質がある」と指摘し,情報通信ネットワークを活用した教育について,今後の動向を見据えつつ,更に積極的に研究開発に取り組んでいく必要があるとしている。
     以上のことから,情報教育に関する研究では,子供たちの情報活用能力の育成を図ることをめざして,情報通信ネットワークを活用した教育についての研究開発に取り組み,統一研究主題「生きる力をはぐくむ学校教育」に向けての研究を推進しようと考えた。


  2. 教育の情報化の推進について
     茨城県教育委員会では,平成9年度より,インターネットの環境を整え,学校教育での利用を支援するなどの目的で「茨城県教育文化情報ネットワーク環境整備事業」をスタートし,教育の情報化を推進してきた。
     この事業の主な内容は,平成9・10年度の2年間で全県立学校にインターネットの接続環境(ISDNによる64Kbps)を整備すること,県教育委員会専用のサーバを整備して,各学校のWebページを充実させるためのメモリスペースやメールボックスを無償レンタルすること,教育情報データベースを整備すること,教員研修を実施することなどであった。
     平成11年12月,内閣総理大臣決定のミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)が発表された。このプロジェクトは,夢と活力に満ちた次世紀を迎えるために,今後の我が国経済社会にとって重要性の高い情報化,高齢化,環境対応の三つの分野について,技術革新を中心として産学官共同プロジェクトを構築し,明るい未来を切り拓く核を作り上げようとするものである。
     ミレニアム・プロジェクトでは,教育の情報化について,「平成13年度までに,全ての公立小中高等学校等がインターネットに接続できるようにする」「平成17年度までに,全ての公立小中高等学校等に校内LANを整備する」ことをハード面の施策とし,「教員研修の実施」「学校教育用コンテンツの開発」「教育情報ナショナルセンター機能の整備」などをソフト面の施策とし,これらを推進するとしている。
     このような国の動向を見据えながら,平成12年度,茨城県教育委員会は,先の「茨城県教育文化情報ネットワーク環境整備事業」の見直しを図り,平成17年度までに,全県立学校にインターネットの専用線と校内LANを整備する計画を立てた。その結果,平成13年度には,全県立高等学校に光ファイバーによる1.5Mbpsの接続環境が整備され,また,約半数の県立高等学校に校内LANが整備された。
     小・中学校における教育の情報化は,市町村で取り組む基盤整備の進捗状況にもよるが,県立学校と同様に,高速なインターネットの専用線と校内LANの整備が計画されるものと考えられる。先のミレニアムプロジェクトや,内閣に設置されたIT戦略会議のe-Japan重点計画(平成13年3月)などの施策により,平成17年度を目標に整備が進むものと思われる。
     以上のことから,今後は,インターネットを活用した学習活動の充実を図ることが望まれ,そのための研究を早急に進める必要があると考えられる。


  3. 情報教育に関する研究の成果を踏まえて
     平成10・11年度情報教育に関する研究「インターネットの教育利用に関する研究」(研究報告書第36号)では,インターネットの効果的な活用方法や利用の留意点等について,授業研究を通して考察した。その結果,授業でインターネットを使うときには,インターネットを利用する目的を明確にした上で学習活動を展開し(目標の明確化),学習活動後にインターネットを利用したことを評価する場を設定することで(情報手段の意識化),「児童生徒の興味,関心,意欲が高まり,自主的,自発的な学習が展開できる」ことがわかった。また,交流学習などにインターネットを活用することで,「コミュニケーション能力が高まる」こともわかった。
     今後の課題としては,「情報モラルに関する指導を十分に行うこと」「コンピュータやインターネットの利用環境を整えること」「インターネットで利用可能な教材を充実させること」などがあるとわかった。
     以上のことから,インターネットの特性を生かした教材を充実するために,インターネットを利用する教材の開発について研究する必要があると考えた。


[目次へ]