【授業研究3】 中学校第3学年「幼児の発達と家族」における学び合いを中心とした授業の在り方
(1)  授業研究のねらい
 現代社会では少子高齢化に伴い,子どもの成長やそれを支える家庭の役割についての関心が高まっている。中学校技術・家庭科の学習でも中学生が積極的に幼児とかかわりをもち,自分への振り返りを行いながら,子どもの成長を支える家庭の役割について考えることを重視している。
 そこで,来年度から第3学年の技術・家庭科の授業時数が35時間になることを受けて,13時間での指導計画を立て,「幼児の発達と家族」を題材に「幼児」についての問題解決的な学習を展開する中で,専門的な知識をもつ地域の人材を活用した学び合いを中心とする授業の在り方について研究する。
(2)  研究主題に迫るための手だて
 ウェビングマップの活用
 「幼児」ということばから自由な発想でウェビングマップを書かせる。出てきたことばを手がかりに,幼児について自分が最も知りたいことを各自の課題として設定する。
 テーマ別グループによる学び合いの場の工夫
 似通った各自の課題からグループを編制し,グループごとに情報収集やまとめ方の工夫,発表方法の検討を行い,自分が幼かったころを振り返ることができるように支援する。また,幼児についての基礎的・基本的な事項を含んだまとめができるように援助する。
 ゲスト・ティーチャーの活用
 幼児の成長発達に関して精通している地域の人材を活用することにした。市保健センター所属の保健係長の方をグループ別の発表の段階でゲスト・ティーチャー(以下「G・T」という。)として招き,生徒からの疑問に答えていただく。多くの幼児と接しているG・Tの生の声を生徒に聞かせることにより,学んだことを実生活に生かすための意識つけとする。
(3)  授業の実践
 題材  幼児の発達と家族
 題材の目標
生活や技術への関心・意欲・態度  幼児について関心をもち,課題に向かって意欲的に学習に取り組むことができる。
生活を工夫し創造する能力  幼児の遊びや幼児の発達とのかかわりについて,調べたことを効果的に発表する方法を考え,資料づくりを工夫して行うことができる。
生活の技能  幼児について調べたことを分かりやすくまとめたり,発表したりすることができる。
生活や技術についての知識・理解  幼児についての問題解決的な学習を通して,幼児の発達と家族とのかかわりについて理解することができる。
 指導計画
(ア)  全体計画(13時間扱い)
第1次 自分の成長と家族 --------------- 1時間
第2次 幼児の発達と家族 --------------- 7時間
@ 幼児を知ろう ----- 6時間(本時はその第6時)
A 幼児の発達と家族の役割 ----- 1時間
第3次 幼児との触れ合い(保育園訪問) --------------- 4時間
第4次 学習のまとめ --------------- 1時間
(イ)  本時にかかわる指導計画及び評価規準(第2次)
 本時の学習
(ア)  目標
 テーマ別グループの発表を聞いて,幼児への理解を深めることができる。
 発表を聞くことによって,幼いころの自分を振り返ることができる。
(イ)  準備・資料・協力
 発表用資料集,掲示資料,実物資料,ワークシート,G・T(市保健センター保健係長)
(ウ)  展開
(4)  授業の結果と考察
 ウェビングマップの活用について
 ウェビングマップでは,予想以上に多くの語いが書き込まれており,幼児に対する素朴な疑問も拾い出すことができた。「幼児はなぜ兄弟のまねをするのか」等,履修前だからこそ出てくる疑問点には驚かされるものがあり,生徒にとって興味のある課題を設定することができた。
 テーマ別グループによる学び合いの場の工夫について
 グループ内の情報交換により,新たな気付きが生まれたり,情報を組み合わせてまとめができたりと,より深まりのある学習となった。また,不足している情報や発表方法のアイデアを教師が提供することで,基礎・基本を押さえた発表ができた。生徒は,拡大した資料を用いたり,食品やおもちゃ等の実物を使ったりして,より実感の伴った発表ができた。また,発表の際に生徒が「自分が幼かったころ」のエピソードを話すようにしたところ,友だちの話に共感する様子が見られた。
 G・Tの活用について
 グループ別発表の時に授業に入っていただき,発表の内容に関する質問に答えてもらったり補足してもっらたりしたことで,幼児についてより深く理解できたように思う。幼児についての学習の基礎・基本を押さえる上で,G・Tの存在や役割は貴重であり,大変効果があったといえる。



G・Tを招いてのグループ別発表

(5)  授業研究の成果と課題
 ウェビングマップを活用したことで,生徒の課題設定に広がりが出て,生徒の学習意欲を高めることにつながった。教師側から課題を絞って提示するよりも自分が興味をもっている内容で課題を設定したことにより,その後の調べ学習にも意欲的に取り組めていた。
 個人の調べ学習に続いてテーマ別グループによる学び合いを行ったことで,生徒はその後のまとめに生き生きと取り組めていた。基礎・基本を押さえるためにも,まとめの段階での様々な情報の提供や発表方法のアドバイスといった教師側からの援助は必要であり, 今後もその方法での研究を続けたい。
生徒にG・Tが入った授業について聞いてみたところ,表12 にあるように25人の生徒が「よかった」と答えている。その理由として多くの生徒が「疑問点に適切に答えてくれた」,「調べた内容以上のことを教えてくれた」ことを挙げている。今後G ・Tの協力を得ていくためにも,意図をしっかり伝え,時期や方法など打ち合わせを十分にとることが必要である。 表12 G・Tについて(人)
 (授業後のアンケートから 生徒33人回答)
想感 人数
 よかった 25
 まあまあ よかった
 あまり よくなかった
 よくなかった
 研究授業後に保育園を訪問し,園児との触れ合いを行った。
 幼児に会うことで,これまでに学んできたことを生かしたかかわり方ができた。保育園訪問は重要であり,指導計画の早期の段階で訪問したり,回数を増やすなど検討する必要がある。

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