【授業研究2】 中学校第2学年「学校紹介のWebページをつくろう」における基礎的な知識と技術を習得するための指導の在り方
(1)  授業研究のねらい
 来年度から完全実施となる新学習指導要領では,技術分野が2つの内容に大別され,「B情報とコンピュータ」(5)において,生徒の興味・関心に応じて選択的に履修させる内容としてコンピュータを利用したマルチメディアの活用を取り上げている。高度情報通信社会の変化に伴い,多様なメディアを複合して一元的に活用することが可能になってきた。さらに,コンピュータの操作など実践的・体験的な学習活動を通して,情報手段の果たしている役割を理解させ,情報を収集,判断,処理し発信できるようにするとともに,自ら課題をもって解決する能力と生活に生かす態度を育成することが重要であると考える。
 そこで,生徒の身近な題材を基にマルチメディアを活用したWebページの作成を通して,基礎的な知識と技術を身に付けるとともに,情報モラルの定着を図り生活に生かすことができるようにするための技術・家庭科学習の指導の在り方を究明する。
 マルチメディアの素材に関しては,放課後等を利用して収集できるようにするとともに,学校生活の中で,収集できるような環境整備に努めたり,個人情報等の情報モラルに十分注意させたりして,学習を進めていきたい。
(2)  研究主題に迫るための手だて
 題材の工夫
 題材選定にあたり,学校に関する内容と地域に関する内容を取り入れ,問題解決的な学習が展開されるようにする。内容については,身近な題材を選定することにより,生徒の興味・関心が高まるとともに,学校や地域の様子をより多くの人に知ってもらおうとする意欲につながるようにする。
 学習形態の工夫
 実態調査からも,「友達と活動しているときが楽しい」と答えている生徒が多く見られた。そこで,学習活動をより高めるために,グループ活動を主として,友達と協力し合い,学び合いながら学習が進められるようにする。また,ネットワークを生かし,Webページの作成,素材の編集コーナーを設置して,作業の効率化を図るようにする。
 教材・教具の工夫
 基礎的な知識と技術を身に付けるために,Webページ作成の手引きや著作権に関する事例集を用意し,生活に生かすことができるようにする。
 指導方法の工夫
 初めて取り入れる題材・内容なので,ティーム・ティーチングを取り入れ,基礎・基本の確実な定着が図れるようにする。
(3)  授業の実践
 題材  学校紹介のWebページをつくろう(マルチメディアの活用)
 題材の目標
生活や技術への関心・意欲・態度  マルチメディアに関心をもち,生活に活用できる範囲や使用方法を考えようとしている。
生活を工夫し創造する能力  目的に即した課題を設定し,その課題解決のためにソフトウェアを適切に組み合わせて活用する方法について工夫することができる。
生活の技能  マルチメディアを活用して,情報の表現や発信ができる。
生活や技術についての知識・理解  マルチメディアに関する基礎的な知識を身に付け,その特徴と利用方法について理解している。
 指導計画
(ア)  全体計画(17時間扱い)
第1次 マルチメディアの特徴や利用方法 --------------- 2時間
第2次 情報の表し方 --------------- 2時間
第3次 Webページ作成の作成 --------------- 10時間
@ 計画作成 ----- 2時間
A Webページ作成ソフトの使い方 ----- 1時間
B Webページの作成 ----- 5時間 (本時は第3時)
C Webページの修正 ----- 2時間
第4次 作品発表会 --------------- 2時間
第5次 情報社会とわたしたちの責任 --------------- 1時間
(イ)  本時にかかわる指導計画及び評価規準(第3次)
 本時の学習
(ア)  目標
 Webページ作成ソフトを活用し,使いやすいWebページを作成することができる。
 個人情報などの情報モラルに注意し,Webページを作成しようとしている。
(イ)  準備・資料
 Webページ作成用手引き,ビデオプロジェクター,スキャナー,学習シート,計画書,社会科副読本(桜川版)
(ウ)  展開
 授業実践における生徒の反応

(4)  授業の結果と考察
 題材の工夫について

図1 Webページの構成

 身近にある題材により生徒の興味・関心を高めるために生徒たちが話し合い,5項目設定した。その内訳は,学校に関することを4項目,地域に関することを1項目とした。特に,ボランティア活動と桜川村紹介が関連する内容にリンクを設定することができ,より広がりのある内容構成となった。また,グループで作業しても,個人で最低1枚はWebページを作成し,相互にリンクを設定できるようにしたため,延べ39ページものWebページを作成することができた。
 学習形態の工夫について
 実態調査からも,「友達と活動しているときが楽しい」と答えている生徒が多く見られた。実際,Webページを作成してみると,22人の生徒がグループで取り組んだ方がよかったと答えている。その理由として,「グループでやるとわからないことを教えてもらえて便利だった。」と感想を述べている。さらに,Webページ作成と素材の編集場所をそれぞれ設置することにより,作業を分担して協力して行うことができた。



図2 学習形態の工夫
 (平13.9.20実施 桜川村立桜川中学校2年A組28人)

 教材・教具の工夫について
 マルチメディアの活用で,Webページ作成用ソフトを導入したので,手引きを作成した。ページの作成の仕方,リンクの設定の仕方,素材の取り入れ方などを記述することにより,生徒自身が自力解決をすることができた。さらに,Web作成に関連する事例集を作成し,情報モラルについて意識を高めるとともに,活用できるようにした。生徒の調査結果図3からも,情報モラルについて,「理解できた」16人,「まあまあ」11人と, ほとんどの生徒が理解できた。また習得した知識である情報モラルについて,これからの生活で気を付けたいと考えている生徒は非常に多く意識が高まったと考えられる。



図3 授業後の生徒の意識調査1
 (平13.9.20実施 桜川村立桜川中学校 2年A組28人)



図4 授業後の生徒の意識調査2
 (平13.9.20実施 桜川村立桜川中学校 2年A組28人)

 指導方法の工夫について
 初めて取り入れる題材・内容なので,ティーム・ティーチングを取り入れ,基礎・基本の確実な定着が図れるようにした。他教科の教師の協力を得て取り組んだが,基礎的・基本的な技術の習得に効果があった。



ティーム・ティーチングの活用

(5)  授業研究の成果と課題
 授業研究の成果
(ア)  生徒の身近な題材を活用することにより,意欲的に取材に出かけたり,友達と協力して学習に取り組むことができた。さらに,地域を紹介し,より多くの人に完成したものを見てもらうことにより情報モラルに関する意識が高まった。
(イ)  学習の手引きや事例集を活用したり,ティーム・ティーチングを取り入れたりすることにより,基礎・基本の定着を図ることができた。
(ウ)  作成を進める内に,ロゴづくりなどの装飾に時間をかけ過ぎてしまい,作成が思うようにはかどらない場面があった。
 今後の課題
(ア)  基礎・基本の定着を図るために,題材の開発や教材・教具の工夫改善について努めていく。
(イ)  情報モラルに関して,技術・家庭科で学習していくとともに,他教科との連携を図り,年間指導計画等に位置付け,計画的に指導していかなければならない。

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