6. 研究の成果
   英語科では「言語の実際の使用場面を踏まえたコミュニケーション活動の指導の在り方」という研究主題のもとに,2か年の研究を行った。実態調査の結果を踏まえ,教科書を用いた指導を基にしつつ,生徒が生きた英語に触れられるような教材を用いたり,外国語指導助手の支援を得たりしながら,言語の使用場面を適切に設定し,目的が明確なコミュニケーション活動を授業研究で試みた。中学校では,Job Interview という場面を設定し,生徒は自分自身の10年後の姿をイメージしながら,活発なコミュニケーション活動を展開することができた。外国語指導助手の生きた英語による支援は生徒の意欲を高め,コミュニケーション活動を円滑に進める上で有意義なものであった。高等学校では,実際にコミュニケーションで用いられた心情表現に触れた上で,生徒はそれをドラマという創作的なコミュニケーションの場面で使ってみるという活動を行い,心情表現の理解を一層深めることができた。また,中学校,高等学校共に,インターネットで入手した生きた英語の情報を教材として効果的に授業に取り入れることができた。その結果以下のことが明らかになった。
  (1)  教科書を用いた指導をした上で,生きた英語に触れられるようにしながら,言語の実際の使用場面を踏まえたコミュニケーション活動の指導を行うことは,教室での指導を実社会に近づけることになる。そのような活動を通して,生徒は自ら学び自ら考え,実社会に対応できるように,英語を使おうと努力をするようになる。
  (2)  コミュニケーション活動を実施する際,生きた英語に触れられるような教材を取り入れたり,外国語指導助手の英語による支援を得ることが,生徒の活動意欲を引き出す上で有効である。
  (3)  ある場面でどのような語彙や文法が用いられることが多いのか,その場面にかかわる人は相互にどのような関係にあるのかなど,実際の言語の使用場面を踏まえた上で,コミュニケーション活動に必要な語彙や表現などの指導をし,活動の手順を分かりやすく説明することが,コミュニケーション活動を円滑に行う上で有効である。
 
おわりに
 教科書のみを用いた指導で終わらせず,教科書の題材や内容を基にして,生きた英語に触れられるようにしながら,目的が明確なコミュニケーション活動を展開することが,実践的コミュニケーション能力の育成には大切である。このようなコミュニケーション活動を行うことで,生徒は自分が今何を学んでいるのかを自覚し,場面にふさわしい表現を自ら考えて使ってみたり,コミュニケーションが円滑に図られなかった場合にはその理由を自ら考えて対応するようになる。実践的コミュニケーション能力の育成を目指した指導は,自ら学び自ら考える力を育てる学習指導の一翼を担うものであると言える。今後は,実際の言語使用についての談話分析などの分野の研究成果をさらに取り入れて研究を進める必要がある。
 
参考文献
文部省 『中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−外国語編−』 平成11年9月
文部省 『高等学校学習指導要領解説外国語編英語編』 平成11年12月
Savignon, S. 1997. Communicative Competence: Theory and Classroom Practice.New York: Addison-Wesley.

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