「情報ベースキャンプ」を活用した総合的な学習
― 身近な自然や環境に目を向けたT小学校の事例 ―
 研究のねらい
  (1)  「 情報ベースキャンプ 」である不思議発見の部屋を設置し,それを児童に有効に活用させることによって「総合的な学習の時間」での課題の発見や解決の手がかりをつくり,児童の自分で課題を見付け, 自ら解決したり表現したりできる資質や能力を育成する。
  (2)  環境教育に焦点を当て,学校周辺の樹木の日々の変化の観察を通して,樹木の成長や保全に何が必要かを調べたり,近くを流れる利根川の恵み・利根川と住民・利根川と動植物等の関連などを追究したりして,児童の環境問題や 環境保全活動に対する関心を高めそれらに対する実践力を育成する。
   
 基本的な考え方
   総合的な学習を進めていくためには,児童の「課題をつかむ」「課題を追究する」といった自主的な学習活動が必要になってくる。本年度本校では,一木運動の樹木の観察体験をさらに発展させる形で課題の持たせ方,探求の仕方,表現の場の設定等を工夫し,児童の活動を支援している。しかし,本校の児童にとっては,今までの自主的学習のための学習体験が十分ではなく,いろいろな手だてや工夫が必要である。
 そこで本校では,「総合的な学習の時間」で,児童に身につけたい力を「見る力」「聞く力」「 集める力」「調べる力」「まとめる力」「表す力」等と考え,不思議発見の部屋をより充実させ,課題設定や探究活動がある程度児童自身で進められるよう学習環境の整備に努めている。
   
 学校・地域の実態
   本校は創立 127年を迎える歴史のある学校で,児童数 500人弱の中規模校である。学校のまわりは多くの樹木や先人が残してくれた貴重な樹木等がたくさんあり,豊かな自然環境に恵まれている。また,本校は利根川からわずか数百m北に位置し,児童が歩いて観察に行ける場所にある。このように,樹木の日々の変化を観察したり,利根川を日常的に調査・研究したりする上で,本校の児童はとても恵まれた生活環境で暮らしている。
   
 具体的な工夫
  (1)  「 情報ベースキャンプ 」である不思議発見の機能
     不思議発見の部屋は,隣のコンピュータ室と連動し,課題発見の支援・課題追究の支援情報交換の支援の3つを考え設けている。課題発見の支援としての課題例一覧の掲示物や課題カード・関連図表等,課題追究の支援としての環境キーワード検索フロッピー・児童の手作り参考資料・参考ビデオや図書等,情報交換の支援としてフャイルコーナーやテーブルや椅子が置いてある話合いコーナー等がある。また,児童に興味・関心を持たせるように利根川上流の石や魚を入れた水槽も展示している。この部屋は常時開放してあり,児童は休み時間や放課後等も自由に活用できるようにしている。
  (2)  課題発見の支援
     中学年用・高学年用・共通と3つに分けた課題例一覧を作成し,それに対応した発展課題例を書いた課題カードを作成し置いてある。児童の興味・ 関心にあった課題を設定させる際参考にさせた。また,他の児童の課題や調べたことが見ることができるように,各自のファイルもファイルコーナーに置かせている。
  (3)  課題追究の支援
     不思議発見の部屋は隣のコンピュータ室と連動しており,本年の7月からインターネットによる検索もできるようになった。現在高学年の児童を中心に積極的に活用しているが,より活用しやすくするために環境学習キーワード検索システムを作成した。これは,文書作成ソフトを活用して,環境に関する「 水 」「 空気 」「 ゴミ 」等のキーワードの意味と関連事項をフロッピーに保存しておき,児童がキーワード一覧を見て捜したいものをフロッピーから呼び出すことのできる仕組みである。現段階ではキーワード数は60程度であるが,低学年でも取り扱うことができるように,全文字をひらがなで表記してある。これによって児童はことばの意味や定義とあわせてどんなものに関連するかを知ることができ,環境学習がある程度スムーズに進められるようにした。
  課題例と課題カード
   
 評価の工夫
   不思議発見の部屋のファイルコーナーのファイルには,児童の自己評価と教師が児童の自主的な活動の様子を捉えて書いたメッセージが書かれている。このファイルはいろいろな児童が自由に見れるので,他の児童への意欲付けという点で効果がある。
   
 成果と今後の課題
  (1)  不思議発見の部屋は,総合的な学習の課題設定や課題追究の支援に効果があった。
  (2)  児童の設定した課題が広範囲になり,教師が対応しにくくなった場面もあり,今後は学年テーマ等を設け,課題例一覧や課題カードを工夫していく必要がある。
  (3)  インターネットの利用については,児童に膨大や資料の中から本当に必要な情報を取捨選択できる情報活用能力を身につけさせていくことが重要である。合わせて,環境学習キーワード検索システムの充実や,課題追究をサポートする学校独自の人材バンクの創設にも着手していく必要がある。


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