第4 新学習指導要領の要点
 改訂の基本的なねらい
   H.10/7/29 教課審答申 → 完全学校週5日制の下,「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し,生徒に「生きる力」を育成する。
   
 改訂の4つのねらい
  (1)  豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成する。
  (2)  自ら学び,自ら考える力を育成すること。
  (3)  ゆとりのある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を充実すること。
  (4)  各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること。 特に(4)は特色ある学校づくりの要の時間として「総合的な学習の時間」を創設し,各学校が創意工夫を生かした教育活動を展開するという今回の改訂で新たに取り上げられたねらいである。
   
 校種ごとの改訂の要点
  (1)  小学校学習指導要領改訂の要点
     学習指導要領の実施基準の大綱化・弾力化を図り,「総合的な学習の時間」のように各学校の創意工夫を生かした教育課程編成を進めることは今回改訂の学習指導要領の基本的な性格であるが,特に小学校の改訂の要点は次の5点に絞られると考えられる。
     教育内容の厳選
       平成14年度からの完全学校週5日制実施を踏まえて教育内容の厳選を図り,学校生活に「ゆとり」を取り戻して「生きる力」をはぐくもうとすることが改訂の大きなポイントである。 授業時数は週当たり2単位時間の削減に過ぎないが,教育内容の見直しを図り,上級学年に移行すべき内容や中学校へ先送りする内容を削減して小学校教育のスリム化を進めた。合わせて,生み出される「ゆとり」の中で,基礎・基本の学習を重点化し,総合的な学習に代表されるように,生活体験に根ざした知のネットワークづくりを前面に打ち出したのである。
     各教科学習目標の弾力化
       各教科の学習目標や学習内容について教科の特質に応じて2学年分にまとめて示すこととした。その内容を2年間かけて指導することができるよう,各学校の創意工夫を生かした指導が一層進むことができるように配慮した。それだけに,各学校とも,子どもの実態を十分踏まえた指導計画づくりが期待されるのである。
     授業時間の弾力的運用
       授業の1単位時間について,45分を常例とするとの従前の規定を改めて,各教科等の年間授業時数を確保しつつ,児童の発達段階及び各教科や学習活動の特質を考慮して各学校が適切に定めることとした。また,年間授業週数については,35週(第1学年は34週)以上の計画にすることは従来から同じであるが,各教科等や学習活動の特質に応じ効果的な場合には「特定の期間」に行うことができるとして,創意工夫を生かして教育課程編成の弾力化を図ったのである。
     クラブ活動の時数配当の工夫
       従来は,クラブ活動は学級活動と並んで別表第1に規定されていたので毎週実施されてきた。今回改訂により,年間を通じて各学校で適切に配当することになり,児童会活動や学校行事と同様に,内容に応じて,年間,学期ごと,月ごとなどに適切な授業時数を割り当てて指導計画を工夫することになった。中学校や高等学校の教育課程ではクラブ活動が廃止されたが,小学校ではクラブ活動の継続が打ち出された背景には異学年集団の同好の活動が一定の役割を果たしてきた経緯が評価されたのである。
     道徳教育の充実をめざして
       心の教育推進の教育改革の動向を踏まえて,特に家庭や地域社会との連携を図りながらボランティア活動や自然体験活動など豊かな体験と関連付けて道徳教育の充実を目指す方針を明確にした。さらに,従来から学級担任に任されていた道徳授業が管理職まで含め全教職員で指導に当たるべき必要性を打ち出したことも大きな特徴である。道徳教育の要である「道徳の授業」が学年が進行するに従い興味関心が減退する課題にどう対処していくかが学校教育改善の要点の一つである。
  (2)  中学校学習指導要領改訂の要点
     教育課程編成にあたって
   
 「創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する」ことが付け加えられ,学校の主体性の発揮の必要性が一層強調された。
 学年,教科をこえた教師間の協働体制づくりの必要性の高まり。
      (ア)  編成の主体
   
 学校の教育活動を進めるにあたっては,各学校において,生徒に「生きる力」を育むことを目指し,創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で,自ら学び自ら考える力の育成を図るとともに,基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。(総則第1の1)
      (イ)  「生きる力」を育む各学校の特色ある教育活動の展開
     教育内容の改善
       「総則」に見る今回の改善の主な要点を整理してみると,以下のようになる。
      (ア)  「生きる力」の育成及び各学校の創意工夫を生かした教育の推進
         各学校が生徒に「生きる力」を育むことを目指し,創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する中で,自ら学び自ら考える力の育成を図る。
      (イ)  道徳教育の充実
         ボランティア体験や自然体験などの体験活動を生かした学習を充実する。
      (ウ)  体育・健康に関する指導の充実
         現行の体育に関する指導を体育・健康に関する指導とし,日常生活における実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送る基礎を培う。
      (エ)  選択教科の拡充
         第1学年から全教科について選択が可能になった。また,課題学習,補充的な学習や発展的な学習など,多様な学習活動を展開できることが示された。
      (オ)  各学校の創意工夫ある教育の推進
         地域や学校,生徒の実態等に応じて,横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行う時間として「総合的な学習の時間」が創設された。
      (カ)  授業の1単位時間の弾力化
         1単位時間については各教科等の年間授業時数を確保し,各学校が適切に定める。
      (キ)  ガイダンス機能の充実
         生徒が学校や学級の生活によりよく適応し,現在及び将来の生き方を考え行動する態度や能力を育成するため,学校の教育活動全体を通じてガイダンス機能の充実を図った。
      (ク)  個に応じた指導の充実
         個別指導やグループ別指導,教師の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図る。
  (3)  高等学校学習指導要領改訂の要点
     教育課程編成の原則
      (ア)  法令及び学習指導要領の示すところに従うこと。
      (イ)  生徒の人間として調和のとれた育成を目指すこと。
      (ウ)  課程や学科の特色を十分考慮すること。
      (エ)  生徒の心身の発達段階及び特性等を十分考慮すること。
     道徳教育
       人間としての在り方生き方に関する教育を行うという基本的な考え方を継承し,特に,心の教育の観点から「豊かな心」を育むことを示し,道徳教育の一層の充実をめざす。
     体育・健康に関する指導
       日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康安全で活力ある生活を送るための基礎を培う。
     就業やボランティアにかかわる体験的な学習の指導
       望ましい勤労観,職業観等の育成や社会奉仕の精神の一層の涵養を図る。
     各教科・科目の履修等
      (ア)  普通教育では教科「情報」の新設,9教科62科目から10教科59科目に再編 専門教育では教科「情報」及び「福祉」が新設,11教科224科目から13教科209科目へ再編した。
      (イ)  普通教育では教科のすべてに必履修教科・科目を設け,保健体育を除き選択的履修を可能にした。必履修教科・科目及び単位数の変化は8教科11〜12科目,普通科38 単位以上,専門学科及び総合学科35単位上から全学科とも10教科13 〜14科目31単位以上となる。
      (ウ)  学習指導要領に示す教科・科目以外に各学校が名称,目標,内容,単位数を定め設定すること(学校設定教科・科目)を可能にした。
     「総合的な学習の時間」
       各学校が,地域や学校,生徒の実態等に応じて創意工夫を生かした教育活動を展開きるようにとの観点から設けた。
     授業時数等
      (ア)  週当たりの授業時数
         完全学校週5日制の実施に伴い,32単位時間標準を30単位時間標準とした。
      (イ)  特別活動の授業時数
         部活動や学校外活動との関連を考慮し,クラブ活動を廃止し,ホームルーム活動,生徒会活動及び学校行事から構成した。ホームルーム活動は毎週行うこととし,原則として年間35単位時間以上とする。
      (ウ)  1単位時間の弾力的運用
         各教科・科目等の授業時数を確保しつつ,生徒の実態及び各教科・科目の特質を考慮して,各学校において適切に定める。単位の計算は,1単位時間=50分,35単位時間の授業=1単位を標準とする。
     教育課程編成に当たって配慮すべき事項
      (ア)  選択履修の趣旨を生かした適切な教育課程編成
         単に生徒の自由選択に委ねるだけではなく,学校や生徒の実態を踏まえ,生徒の進路を十分配慮して適切な教科・科目の履修を確保する。
      (イ)  分割指導
         従前から各教科・科目の内容を1単位ごとに分割指導できるが,単位制高校の増加などを踏まえて,弾力的編成の観点から4単位の科目の2単位ごとの分割指導を可能にした。
      (ウ)  職業教育の充実
         すべての学科において,就業体験の機会の確保に配慮すること。
      (エ)  特色ある学科の設置
         職業学科について,標準的な学科を学習指導要領に示さず,各設置者が創意工夫を生かして特色ある学科を設置できるように一層促進した。
     教育課程の実施等に当たっての配慮事項
      (ア)  ガイダンス機能の充実
         生徒の選択幅の拡大や進路の多様化等に伴い,また,自己の在り方生き方,学校生活への適応指導の充実の必要性などを考慮し,この機能の充実を図ること。
      (イ)  個に応じた指導の充実
         具体的な指導方法や指導体制として,個別指導やグループ指導,教師の協力的な指導(ティーム・ティーチング)などを示し,一層の充実を図った。
      (ウ)  コンピュータ等情報手段の活用
         学習効果を高めるために,各科目でコンピュータや情報通信ネットワークなどを活用し,教育活動全体でも情報手段の積極的活用を図ること。
      (エ)  開かれた学校づくりの一層の推進
         従前から家庭,地域社会との連携や学校相互の交流を図ってきたが,豊かな人間性や社会性をはぐくむ観点なども踏まえ,障害のある幼児児童生徒や高齢者などとの交流の機会を設けた。
     単位の修得及び卒業の認定
      (ア)  単位制の弾力的運用
         高等学校では,学年制とともに単位制が併用されていることに基づき,各学年の課程の修了の認定を弾力的に行うように配慮する。
      (イ)  履修即修得の見直し
         各学校は,履修と修得を明確に区別し,卒業までに履修すべき教科・科目を定め,必ずしも修得は必要としないこととし,単位の修得については,卒業に必要な単位 数を定めればよい。
     定時制・通信制教育の充実
       高等学校入学以前又は在学中の大学入学資格検定合格科目を高等学校の単位として認定できる。


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