研究の成果
   研究では,家庭科及び技術・家庭科における創造性に関する実態調査を実施し,その結果を踏まえて,問題解決的な学習において,創造的な思考の仕方を学習できるような学習カードの工夫等の手だてを講じ,授業研究を行った。研究主題に迫るための手だての有効性について,特に効果の大きかった次の3つの手だてについて述べる。
  (1)  ワークシートの工夫と活用
     問題解決的な学習の学習過程の「課題形成」段階で,「住まいの見直しカード」を活用(平成10年度中学校)することにより,生徒が普段何気なく生活している自分の住まいの中から,安全面や健康面での問題点を見付けることができた。「解決への見通し」段階では,「どんな立場から考える?の欄を設けたワークシート」を活用(平成11年度小学校)することにより,気持ちのよい住まい方をするために,様々な立場からの追究方法を考えることができ,多面的に課題解決の方法を見通すことができた。
  (2)  ゲストティーチャーの活用
     「解決への追究」段階で,役場職員,学校栄養職員,電力会社社員,青少年育成町民会議役員,主婦など多彩なゲストティーチャーを活用(平成11年度中学校)することにより,専門的かつ広い視野に立った支援活動ができた。そのため,生徒はよりよい生活環境を目指して視点を変えた発想ができるようになり様々な物の見方ができるようになった。
  (3)  情報交換の形態の工夫
     「まとめ,生かす」段階で,情報交換の形態の工夫(平成10年度小学校)をした。まず,全体での発表の場を設けることで,住まい方の工夫の基礎的な情報を得ることができた。その後に,自由な情報交換の場を設けることで,児童一人一人の興味・関心に沿った学習が展開できた。さらにここでは,体験コーナー・実験コーナーを取り入れたため,児童は目で確かめ,耳で聞き,実際に触れることで,自分の生活に適した住まい方の工夫を見付け,実践化へつなげることができた。
 
お わ り に
 2年間にわたり,児童生徒の創造的な思考の仕方を培うために,理論研究,調査研究,授業研究を行ってきた。実態調査から,教師が創造的に思考する仕方を学習させるために重視している事項は,新しい問題点を見つけ出すこと,物事を多面的に検討すること,自分に適した考え方ややり方を作り出すこと,であることが分かった。そこでこの3つを中心に手だてを考え授業研究を行った。その結果,「課題形成」段階での学習カードの工夫と活用は,あたりまえと見逃さず新しい問題点を見つけ出すこと,「解決への見通し」段階でのワークシートの工夫と活用は,多面的に課題解決の方法を見通すことが分かった。次に「解決への追究」段階でのゲストティーチャーの活用は,多面的な物の見方を育てることが分かった。そして「まとめ,生かす」段階での情報交換の形態の工夫は,これまでにとらわれず自分に適した考え方ややり方を作りだすことが分かった。このように,問題解決的な学習において,創造的な思考の仕方を培ういくつかの方向性を見い出すことができた。 これからの社会がさらに変化の激しい社会であると予想される中にあって,創造的な思考の仕方を培うことはますます重要になってくる。より有効な手だてを考え,創造性の育成を図っていきたい。

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