研究の成果
   生活科においては,「こどもの創造性を培う生活科学習の支援の在り方」ー子どもの豊かな感性を伸ばし,表現力を育てる支援の工夫ーという研究主題のもとに,2か年にわたり,理論研究,実態調査及び授業研究を行った。
 平成10年度の中間まとめでは,子どもが様々な活動を通して,時間をかけながら自分にあったやり方を発見したり,物事を他の事柄と関連付けながら推察したりして思考するために,授業に振り返りの時間を設定することは,大切であることが分かった。また,授業の展開にあたっては,思いや願い,気付きなどの自己実現に向けて,子どもが楽しく活動や体験をしながら,活動への意欲を高める学習環境や場の設定が必要であること。具体的な体験や活動を実践した子どもたちに,その思いや願いを表現するためのカードと支援表などにより,支援を明確にした活動の工夫を図ったことは,学習を発展させていくことにつながること。そして子どもが自分とのかかわりを深めるために,家庭や地域の人々の理解と協力のもとに,身近な環境と積極的にかかわることを想定したり計画したりして,学ぶことの楽しさや成就感を味わうことができ,学習活動の展開に効果的であることなどが,判明した。
 平成11年度は前年度の考え方を発展させながら,前年度の課題点を踏まえ,なお一層,子どもの主体的な学習活動を中心とした授業研究を行った。そして,豊かな感性を伸ばし,表現力を育てる支援の在り方を追究してきた結果,以下のことが明らかになった。
  (1) 創造的な表現力の育成のために,子どもの主体的活動が展開される場や環境を設定することにより,子どもの思いや願いが育ち,主体的な活動が展開されることが分かった。
  (2) 地域の特性や環境を生かした単元構成や学習材の工夫をすることにより,子どもたちの発見の喜びを大切にした活動計画を作成することができ,活動で得られた気付きが次の活動へ広がり,深まることが分かった。
  (3) 子どもたちの活動の多様性に対応するためにT・Tなどの指導形態を取り入れることにより,意見やつぶやき,気付きなどに応じて支援することができ,活動が広がり知的な気付きを深めることにつながることが分かった。
  (4) 子ども一人一人の特性を支援表などで的確に把握することにより,活動への支援の見通しを持つことができ,子どもの気付きを次の活動に広げたり,深めたりする気付きに発展させることができることが分かった。
 
お わ り に
 生活科における子どもの創造的な能力を培うために,子どもの豊かな感性を伸ばし,表現力を育てる支援の在り方を追究してきた結果,生活科学習の指導の方向性を見いだすことができた。
 それは,子どもが人,社会及び自然などの身近な環境とかかわることである。子どもが身近な環境に興味・関心をもち,それらに体全体で働きかけ,そこから返ってくることを受け止め,試行錯誤を繰り返しながら,さらに新たな働きかけをしていく。そうして,子どもは自分を取り巻く環境を豊かに感じ取り,既有経験,知識や技能などを役立て,子どもながらに全力で傾注していく創造的な活動を展開できるということである。このような双方向性と広がりや深まりのある活動や体験が今後の視点となると考える。

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