研究の成果
   算数・数学科では,2年間にわたり,理論研究,研究主題にかかわる調査,「多様な見方や考え方を発見するまでの数学的な直観力にかかわる工夫」や「多様な見方や考え方を生かして話し合い,論理的な思考力を育てる学習にかかわる工夫」に視点を当てた授業研究を行った。
 小学校では,自由な発想で多様な見方や考え方のできるようにオープンエンドの学習問題を設定したりコンピュータを活用したりした。また,個を生かす支援に努められるように,複数の教員によってきめの細かな支援を工夫することや児童同士の相互援助が得られるように自他の考えの相違を比較できるような活動を工夫することによって,子どもは多様な見方や考え方で追求し,楽しみながら集中して取り組むことが分かった。
 中学校では,生徒自身が自分なりの学習課題を設定し,コンピュータ活用や思考実験などを通して自由な発想で考えながら課題解決を図ることができるようにした。また,グループや学級全体での話合いを通して,生徒同士がお互いの考えの価値を認め合いながら,よりよく深められるように考えを練り上げる場の設定を工夫した。これらの手だてから,生徒は自分と友達の考えを検討して,問題解決の筋道を自分なりに組み立てながら,新たな価値を生み出していくことが分かった。
 高等学校では,学習課題「一次不等式」の内容を日常の具体的な事象「てんびんの支点からの距離とおもりの重さ」と関連させ,生徒自身がてんびんを操作し,思考実験ができるようにし,具体的な操作と問題解決のための考え方とを結びつけて考えられるようにした。このことから,生徒は自ら数学的に考察の対象となる現象に着目し,規則性・法則性を発見しようとすることが分かった。さらに,公式化およびその証明を試みて,簡潔・明瞭・的確などの数学的な考え方に触れ,数学のおもしろさやよさを実感した。
 
お わ り に
 本研究を通して,多様な見方や考え方を育てる指導方法や学習過程の工夫に取り組んできた結果,算数・数学科学習の一つの方向性を見いだすことができた。児童生徒の五感が働く場,解決方法の話合い活動の場の工夫をすれば,児童生徒は自ら想像的・直観的な思考を基に問題解決できるようになり,論理的に思考する楽しさを感得できるようになることである。児童生徒が「自ら学び自ら考える学習へ」と学習の在り方を転換できることを示すものと考える。

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