研究の成果
   本研究では,表現することにかかわる意識・実態調査を踏まえて,基礎的・基本的な事項の徹底と学習したことの充実感や成就感を感得できるようにする場の設定,学習意欲を高める学習指導の工夫・改善,及び児童生徒相互の交流を重視した学習活動の展開に関する手だてを講じ,授業研究を行った。以下に,実態調査の結果明らかになった問題点と,研究主題に迫るための手だての有効性の中から主なものについて述べる。
  (1) 意識・実態調査から
     表現の学習上困っていることとして,小学生は,「興味や関心がない」ことを挙げ,中学生と高校生は「表現技能」を挙げているのに対し,小学校の教員は技能的な面の指導,中学校と高等学校の教員は学習意欲を高めることの指導に重点を置き,児童生徒とのずれが見られた。小学生には,表現することの目的意識,相手意識,必要感をもたせるような指導,中学生と高校生には目的意識や相手意識を明確にし,技能的な面の指導や系統的な指導を生かして,表現の学習意欲を高める指導の工夫が望まれる。
 表現の評価にかかわる面については,児童生徒がよいところや足りないところの具体的な助言を強く期待していることがうかがえた。これは別の面から見ると,児童生徒が受け身的に他者からの評価を待っている姿ととらえることができる。児童生徒が積極的に自分の表現力の伸びを自覚できるような方策をとることも必要であると考える。
  (2) 授業研究から
     小学校第1学年「おはなしするのは,たのしいね」の実践では,生活科との関連を図りながら,伝承遊びを題材に採り上げ,祖父母から教わったことを幼稚園児に教えるという一連の学習過程を設定した。その結果,児童は伝えることの必要性と楽しさを実感し,よりよく話そうとする意欲をもつとともに,主体的な学習態度を持続させることができた。
 中学校第1学年「言葉を使ってゲームをしよう『20のとびら』」の実践では,ラジオ番組「20の扉」をもとに,情報収集・活用能力及び話す・聞くことにおける論理的表現力の育成を目指した教材の開発,活用を試みた。その結果,生徒はゲームの作成や実施を通して,目的意識や興味・関心に支えられながら,自らの提案や自己確認を生かして,伝え合う力を高めることができた。
 高等学校第2学年「自分の意見を相手に伝える方法を身に付けよう」の実践では,生徒が自らの課題に合わせた意見文を作成する学習活動において,課題設定の工夫,推敲や添削等に重点を置いた学習過程の明確化,図書館との連携などの手だてを講じた。その結果,生徒は自分で調べ,自分で書くことの重要性をとらえ,充実感を味わった。また,推敲や添削という形で,自己評価や相互評価の方法を具体的に理解することができた。
 
お わ り に
 教育課程審議会答申(平成10年 7月29日)では,「子どもたちが自分で考え、自分の考えをもち、それを自分の言葉で表現することができるような力の育成を重視した指導を一層進めていく必要がある」とし,さらに「知的好奇心・探究心をもって、自ら学ぶ意欲や主体的に学ぶ力を身に付けるとともに、試行錯誤をしながら、自らの力で論理的に考え判断する力、自分の考えや思いを的確に表現する力、問題を発見し解決する能力を育成し、創造性の基礎を培い、社会の変化に主体的に対応し行動できるようにすること」の必要性について述べている。
 以上のことを踏まえ,教科に関する研究主題「創造性を培う学習指導」を受けて,国語科では「表現力の育成」の面から研究を進めることとし,「一人一人の豊かな表現力が育つ国語科学習の指導の在り方」を研究主題として設定した。本研究では,児童生徒,教員を対象に行った意識・実態調査をもとに,小学校,中学校及び高等学校における表現力の育成に関する問題点を明確にし,授業の実践を通して,国語科学習の指導の改善・充実を図りたいと考える。

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