T.主題設定の理由

 これからの教育は,家庭や学校や地域社会が緊密に連携を図り,「ゆとり」の中で,子供たちに「生きる力」をはぐくんでいくことが重要であると,第15期中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育のあり方について」の中に示されている。さらに,「これからの子供たちに必要となるのは,いかに社会が変化しようと,自分で課題を見つけ,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力であり,豊かな人間性である。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は,こうした資質や能力を変化の激しいこれからの社会を「生きる力」と称することとし,これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要である」と記されている。(21世紀を展望した我が国の教育のあり方について第15期中央教育審議会第一次答申一部抜粋)
 近年,身体的な面については,身長・体重などの体格面での着実な向上はみられるが,運動不足や食べ物の偏りなどによる肥満傾向を有する者の増加,成人病(生活習慣病)の予備軍など新たな健康問題が生じており,適切な生活行動についての知識やそれを実践する力が子供たちに不足しているという指摘もある。
 茨城県の過去10年間の体力・運動能力の推移をみると,中学校においては,反復横とび・背筋力(体力診断テスト)・懸垂・斜懸垂(運動能力テスト)は,横ばいの傾向が見られるものの,立位体前屈・踏み台昇降運動(体力診断テスト)・走り幅とび・持久走(運動能力テスト)などは,下降傾向にある。これらは,日常生活において,身体を使っての遊びなど基本的な運動の機会が著しく減少しているからではないかと考えられる。
 現在,健康で豊かな生活を送るために,生涯体育・スポーツをめざした学校体育のあり方が問題にされており,自主性に根ざした体育・スポーツの充実が求められている。今後,ますます情報化,高齢化が進む社会状況の中で生ずる健康や体力の問題を考えるとき,現在から将来にわたって,それぞれの年齢や発達段階・能力に応じて,自分の健康や体力の問題を認識し,解決できるように,体操の知識や理論,運動の行い方を実践しておくことは,大変重要なことであると思われる。
 そこで,日常的な手軽な運動の一つとして,いつでも,どこでも,誰とでも実践できる体操領域に焦点をあて,各中学校の体操領域について,現状を探り,主体的に体力の向上に取り組むための指導方法・指導内容を研究し,さらに,運動の生活化を目指した授業のあり方を究明すれば,体操領域における指導に役立つであろうと考え本主題を設定した。

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