4.授業研究

 研究主題に関する基本的な考えと実態調査の結果を踏まえ,児童生徒が主体的に問題解決に取り組めるような体験的活動や場の設定,教材・教具の工夫等の支援について授業研究を行った。

【授業研究1】 小学校第5学年「気持ちよく生活するための工夫をしよう」の指導

(1)  授業研究のねらい
 教師対象の実態調査で,問題解決的学習の指導では課題を作る段階や見通しを立てる段階で問題を感じていることが分かったので,その実態をもとに第1年次は課題形成や計画立案の段階についての研究を行った。題材選定については,実態調査を参考に,教師や児童から創造性が育まれやすい実験・実習的な内容や被服領域等に焦点をあて検証授業を試みた。(小学校第6学年「『家族の日』に贈るプレゼントを作ろう」,中学校第1学年「室内の整備と美化に関する仕事」)その結果,平成8年度の創造性を育むために行った支援と成果は下記のとおりである。
 イメージやアイデアを豊かにする体験的学習の導入
 アイデアスケッチをしたり,分解標本を使って作り方を確かめたり,実際に布やテープを使ったり,ミシン操作等の試行体験をすることにより自分に合った課題や計画が立てられた。
 視覚的イメージを広げる豊かな教材・教具の開発
 多種多様な材料,先輩や教師の製作見本,リフォームに関するビデオ,作り方ヒントカードや製作計画のための学習カード等の教材・教具の活用により自分らしい解決方法を見いだせた。
 児童の学び合いを高める学習形態や場の工夫
 解決にあたっては製作する種類別のグループ学習とし,互いのアイデアを広げたり取り入れたりすることができた。各コーナーを自由に活用しながら楽しく,意欲的に解決に取り組めた。

資料1 見通しを立てる段階での場の設定の工夫例(平成8年度の検証授業から)
小学校第6学年「『家族の日』に贈るプレゼントを作ろう」
資料1 見通しを立てる段階での場の設定の工夫例

図1 見通しのもてた試行体験

図1 見通しのもてた試行体験
中学校第1学年「室内の整備と美化に関する仕事」
 課題として,評価の在り方,被服製作的な題材以外での創造性の育成及び問題解決的学習における他の解決段階での創造性の育成のための支援の在り方等があげられた。
 そこで,本年度の授業研究では平成8年度の実践を踏まえ,問題解決的学習でのまとめをしたり,生活に生かそうとする段階を中心に取り組む。小学校第5学年「気持ちよく生活するための工夫をしよう」の題材では,不用品やごみの適切な処理の仕方などについて,児童一人一人の興味・関心,生活経験や技能の実態,地域環境を総合的にとらえ指導を進めていきたいと考える。
 この題材の学習では,児童の主体的な学習をうながすために,児童の実態調査で希望の多かった不用品の活用を取り上げ問題解決的な学習を展開していく。不用品の活用を通して,気持ちよく生活するための課題や方法を児童が自分なりのアイデアや発想から見いだし,実行し,意見交換を通して自分の考えを深め,日常生活で実践しようとする態度を育てることをねらいとする。
(2)  創造性を育む問題解決的学習における支援の手だて
 発表形態の工夫
 自分らしい発表ができるよう,また自分にとって新しい価値を積極的に発見できるよう発表の形態を1対1で行う。A,Bの2グループに分け,事前に発表マップを配り,興味・関心のある作品の発表を体を動かし(移動して)質問をし合ったりして時間内に自由に聞く。
 児童の学び合いを高める教材・教具の工夫
 1対1で発表するときに発表を聞く側は,自分の興味のある発表を効率よく聞くために,各自の発表の位置を表す「発表マップ」を活用する。また,発表する側は,自分らしさを相手によく理解してもらうために事前に作品の作り方や使い方をまとめた児童の手作りによる「使い方パンフレット」を活用する。
 「振り返り」(自己評価)を重視した学習ノートの工夫
 学習を振り返る(自己評価)部分を重視した学習ノートを製作し,それを使用することで学習状況をとらえたり,次への取り組みを明らかにしたりして,新たな疑問や願いをもち,主体的な学習を展開する足がかりとする。
(3)  授業の実践
 題材 気持ちよく生活するための工夫をしよう
 題材の目標
 自分の持ち物や住まい方に関心をもち,家族に協力して清潔で気持ちよく生活するために進んで実践しようとする。 <関心・意欲・態度>
 気持ちよく生活したり,ごみを少なくするための工夫ができる。 <創意工夫>
 身の回りの整理整とん及び材質や汚れに応じた清掃,不用品の活用ができる。 <生活の技能>
 ごみや不用品の処理や活用の仕方が分かる。 <知識・理解>
 学習計画
学習計画
 本時の学習
(ア)  目標
 作品のアイデアや工夫したところを自分らしく発表したり,友達のよさに気付いたりして不用品のいろいろな活用法やごみを少なくするための方法について知る。
 物や資源を大切にすることの必要性に気づき,自分の生活に役立てることができる。
(イ)  展開
展開
 授業の実践における児童の反応
抽出児童 ー  A子  家庭科に対する興味・関心が高く,知識も豊かで創造的技能に優れている。
B男  製作することが好きでアイデアが豊富であり,興味をもつと積極的になる。
C男  発表は好まないが,課題が明確になると一生懸命に取り組む。
授業の実践における児童の反応
(4)  授業の結果と考察
 発表形態の工夫
 全員をA,Bの2つのグループに分け,Aグループが発表の時にはBグループの児童が興味のある作品の発表を聞き,またその逆も行った。1対1の発表だったので発表する側はリラックスしながら,自分のアイデアを自分らしい方法で発表できた。また,発表を聞く側も興味のある作品の発表を聞くことができるので,聞きたい場所へ移動しながら大変意欲的に活動でき,満足感も得ることができたようだ。この発表形態は互いを支え認め合う温かいムードの中で自分のもち味を生かしながら発表ができたので,創造性を育むためには有効であった。
 児童の学び合いを高める教材・教具の工夫
 発表を聞く際,各自の発表位置を示した「発表マップ」を活用したことで,自分の聞きたい友だちの位置がすぐ分かり機敏に移動できた。また,発表する側は資料2のような「使い方パンフレット」を使用しながら発表することで自分らしさを強調でき,活発な質問や意見交換をする様子も見られた。このようなカードを活用することで,お互いを認め合ったり学び合ったりすることができた。

 資料2 「使い方パンフレット」
資料2 「使い方パンフレット」
 「振り返り」を重視した学習ノートの工夫
 学習を振り返る(自己評価)部分を重視した学習ノートを製作し,活用した。自己評価は児童が学習状況をとらえたり,次時につなげるための大切なものである。自由記述の欄を設けたこのノートを活用することで,児童の新たなよさを知ることができ一人一人を支援していく上で大変役立った。
 授業後の調査結果から
(ア)  アイデア調査
 思考の広がりを見るために学習前と学習の終了後同じ質問をした結果が図4である。明らかに学習後の方が,創造的思考力が向上したと言える。
図4 思考の広がりを見るためのアイデア調査
 図4 思考の広がりを見るためのアイデア調査
(平成9.10.18実施 5年1組37人)
(イ)  実践に対する調査
 学習後,実践カードを自由に持っていけるよう準備した。実践した児童には賞賛のシールを貼り,意欲付けとした。1カ月後に,図5のようなアンケートをしたところ実践化につながった児童は37人中28人という結果だった。児童の主体的な学習を進めたので比較的定着したようである。
図5 実践に対する調査
図5 実践に対する調査
(平成9.11.5実施 5年1組37人)
(5)  授業研究の成果
 発表形態を工夫したことで児童は温かいムードの中,自分のアイデアを自分らしく発表することができ,主体的な学習活動につながった。
 教材・教具(カード類)を工夫したことで互いに認め励まし,学び合いを高めることができさらに実践への意欲も高まった。

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