3.家庭及び技術・家庭における創造性に関する実態調査

 研究主題の基本的な考えに基づき,家庭科及び技術・家庭科の学習指導上の諸問題などの実態について,実態調査を実施した。
(1)  調査対象
ア 教師 無作為に抽出した県内の小学校100校・中学校100校から,小学校については家庭科主任及び第5・6学年の家庭科担当者,中学校については技術・家庭科担当者を対象とした。回答者は小学校99人,中学校101人の計200人である。
イ 児童生徒 県内の公立小学校10校の第5学年,第6学年と公立中学校8校の第1学年,第2学年,第3学年からそれぞれ1学級を抽出し,小・中学校計44学級を対象とした。回答数は,小学校の児童550人,中学校の生徒787人の計1,337人である。
(2)  実施時期 平成8年10月21日(月)から平成8年10月25日(金)まで
(3)  調査項目,調査結果及び分析
【 表中の数値は全て回答者数に対する各問の回答数の割合(%)である。】
 教師の実態調査
(ア)  創造性育成の必要性(表1)
 創造性を,「子供が自らの課題を解決するにあたり主体性をもって,子供自身にとって,新しい価値を創り出すことであり,創り出そうとする能力・態度のことである。」として考えると,「自己実現のため」と回答する教師が多い。新しい学力観による考え方が浸透し,子供自身が自ら考え解決していく中で新しい発見をしていくことに,教師も価値を見い出していると考えられる。「生活向上のため」と回答した教師の割合が他教科より多いのは,本教科の目標や特性を考えて回答したためと考えられる。また,教師の創造性育成の関心の高さがうかがえる。
 表1 
 子供の創造性を育てる必要性をどのようなところで感じますか。 全体
ア 生活の向上のために必要 23.3 31.7 27.1
イ 社会的な問題解決のために必要 20.2  5.0 12.5
ウ 自己実現のために必要 41.4 47.5 44.4
エ 社会の変化に対応するために必要 15.1 15.8 15.5
オ 必要性を感じない  0.0  0.0  0.0
カ その他(感性を育てるため)  0.0  1.0  0.5
(イ)
図 創造的な授業の実施率(円グラフ)

図 創造的な授業の実施率
表2 子供が創造性を発揮していると感じるとき
 子供が創造性を発揮しながら学習しているとどんなときに感じますか。  (二つ回答) 全体
ア 子供が自分から課題を立てた 25.3 23.7 24.5
イ 教師の発問に予想外の意見が出た 16.2  7.9 12.1
ウ 発想豊かな意見がでた 44.5 22.8 33.6
エ その子なりの工夫で作品作りをしている 66.5 77.1 72.8
オ 友達同士で相互に学び合っている 12.5 12.9 12.5
カ 授業を振り返っての自己評価から  1.0 14.0  7.5
キ 子供が自分自身の力で思考している 34.4 39.6 37.0
 創造的な授業を意図的に行ったことのある教師の割合は全体で68.0%をしめる。中学校では,76.2%の実施率で,59.6%の小学校より高い結果となっている。技術・家庭科担当の教師は,各領域・題材の学習において意識して創造する能力が高められるような学習活動を行っていることがうかがえる。また,どんなときに児童生徒の創造性が発揮されると感じるかについては,表2の結果が得られた。「その子なりの工夫で作品作りをしている」「発想豊かな意見が出た」等,児童生徒が主体的に個々の思いを実現しようとしている姿に創造性が発揮されたと感じている。
(ウ)  創造性育成と問題解決的学習(表3,4,5)
 創造性を育てるための学習指導法としてほとんどの教師が問題解決的学習は有効であることを認めている。理由として「子供が課題意識をもって主体的に学習ができる」「問題解決をする過程でいろいろな発見をし創造性を伸ばせる」「論理的な解決は創造性につながる」等の理由をあげている。特に中学校では,問題解決的学習の有効性を高く評価している。一方で有効性を感じない理由としては「基礎力としての技術や体験がないと問題解決的学習は無理である」としている。しかし,技能・技術にかかわる基礎基本の習得の際にも創造性は発揮されると考えられる。
 実際の学習過程では表4の結果のように,生活の中から問題を発見し,解決のための見通しを立てる段階と生活に発展させていく段階の指導に難しさを感じている。特にア〜ウの問題発見から計画立案について65.5%見られる。ア〜ウの段階がその後の児童生徒の問題解決の成否や主体的・創造的活動を左右する大切な段階であることを,教師は日々の指導で実感しているためと推察される。
 表3 創造性育成における問題解決的学習の有効性について
 家庭科及び技術・家庭科において,問題解決的学習は創造性を育てるのに有効であると考えますか。 全体
ア 有効であると考える。 92.9 99.0 96.0
イ 有効であるとは考えない。  7.1  1.0  4.0


 表4 問題解決的学習で難しいと思われる段階
 問題解決的学習の流れの中で難しいと思われるのはどの段階ですか。 全体
ア 生活の中から問題を発見する段階 19.2 19.8 19.5
イ 問題から自分なりの課題を作る段階 20.2 30.7 25.5
ウ 課題解決のための見通しを立てる段階 21.2 19.8 20.5
エ 課題を追究し解決している段階 11.1  5.9  8.5
オ 学習のまとめをし生活に生かす段階 28.3 23.8 26.0


 表5 児童生徒の創造性を高める学習方法
 個性や創造性(自分らしさ)を発揮できるにはどんな学習方法がよいですか。(二つ回答)
選 択 肢 教師 児童 生徒 選 択 肢 教師 児童 生徒
ア 本や資料で調べ学習 34.4 38.3 30.8 キ 実験・実習 45.5 40.2 50.5
イ 話し合いによる学習 14.5 25.0 18.2 ク 自作の教材・教具
(上級生の見本含む)
23.0 23.3 12.1
ウ グループ学習 18.0 31.3 33.5
エ コース別学習 34.5  6.3  7.6 ケ 既成の教材・教具  0.5
オ VTRの活用  6.1 12.5 18.1 コ 発表会 11.0  5.9  5.5
カ コンピュータの活用 12.0 17.2 23.2 サ その他  0.5  0.5
 児童生徒の創造性を高める学習方法の結果をみると,教師と児童生徒のとらえ方に違いがみられる。調べ学習や実験・実習についてはどちらも高い割合だが,グループ学習や視聴覚教材の活用を児童生徒が希望しているにもかかわらず教師の意識は薄い。逆に教師がコース別学習をよいとしているが,児童生徒に十分活用されていない。同様のことは教師の自作の教材・教具につい ても言える。もっと児童生徒の実態をとらえ,教師の支援が生かされるような学習を展開したい。
 児童生徒の実態調査
(ア)  創造することへの興味・関心(表6,7)
 表6から,児童生徒は工夫したり,新しいアイデアを考えたりすることに興味・関心を抱いていることが分かる。表1の結果からも教師は創造性の必要を感じており,児童生徒も創造性を伸ばすような授業を期待していることが分かる。表7から自分らしさを発揮できるのは「実験・実習等のとき」「友達やグループで学習したとき」である。教師も実験・実習等の体験的学習を重要視しているが,児童生徒相互の学び合いの大切さをより見直す必要があると考える。
 表6 創意工夫への興味・関心
 工夫して作ったり,新しいアイデアを考えたりすることに興味がありますか。
選 択 肢 小学生 中学生 全体
ア ある 86.6 69.5 78.1
イ ない 13.4 30.5 21.9


 表7 自分らしさを発揮できるとき
 あなたはどんな授業のとき,工夫して自分らし さを発揮できますか。(二つ回答)
選 択 肢 小学生 中学生 全体
ア 自分で課題を決め解決 21.5 43.0 32.2
イ 先生からの課題を解決 22.0 22.2 22.1
ウ 友達やグループで学習 60.4 51.6 56.0
エ 実験・実習のとき 55.8 62.1 59.0
オ 先生からのアドバイス 40.3 21.1 30.7
(イ)  創造性を発揮しやすい領域や題材(表8,9)
 表8 創造性を発揮しやすい学習内容(小学校)
選 択 肢 教師 児童
ア 衣服の手入れ  3.0  9.4
イ 被服製作 78.8 70.5
ウ 栄養と食事  6.1 13.1
エ 調理実習 54.6 64.1
オ 家族の生活  3.0 14.6
カ 住居と環境 42.4 20.9
キ 実践報告 12.1  7.4


 表9 創造性を発揮しやすい領域(中学校)
 工夫してものを作ったり,新しいアイデアを考えたりするとき,どの学習に興味がありますか。(二つ回答)
選 択 肢 教師 児童 選 択 肢 教師 児童
ア 木材加工 63.4 34.8 キ 家庭生活 20.8 12.0
イ 電気  8.8 13.6 ク 食物 27.8 37.8
ウ 金属加工  6.0  6.0 ケ 被服 29.7 15.2
エ 機械  6.0 13.6 コ 住居  6.9  3.6
オ 栽培  0.0  5.9 サ 保育  7.9 25.7
カ 情報基礎 18.7 30.3 シ 実践報告  4.0  1.5
 児童生徒が工夫して作ったり,新しいアイデアを考えたりするとき興味・関心のある内容・題材は表8,9に示す通りである。創造性を発揮しやすい題材について小学校では教師と児童が一致する回答が多くみられた。小物作りや袋製作,エプロンやカバー類等の被服製作は児童の創意工夫が生かせる好題材であるといえる。研究授業では製作や実習を含む題材を中心に創造性の育成について追究したいと考える。中学校では,教師の考える創造性を発揮しやすい領域と生徒の考える領域は異なっている。栽培領域で創造性を発揮しやすいとする教師は0人であるが,生徒の787人中47人は創造性を発揮できるとしている。一人一人の発想や思いを大切にしながら創造性を育む学習指導に努める必要を感じる。言い換えれば,どの領域においても創造性を育む学習は可能であると考えられる。中学校においては,各校によって興味・関心のある領域はかなり異なることも分かった。各校で生徒の実態をよく把握して学習指導に生かす必要を感じた。
(ウ)  学習したことの生活への発展と創造性(表10)
 本教科では学習したことを生活に生かすことによってさらに創造的能力や態度が深まると考える。生活への実践化について意識は高いが,中学生にとっては課題が多いことが分かった。
 表10 日常生活への実践化について
 学習したことを日常生活に生かしたいと思いますか。また,実践していますか。 全体
ア はい,生活に生かしたいと思う。
イ いいえ,特に思わない。
85.9
14.1
87.8
12.1
86.8
13.2
ア はい,日常生活で実践している。
イ いいえ,実践していない。
79.7
20.3
59.1
40.9
69.4
30.6

家庭及び技術・家庭目次に戻る