【授業研究2】 中学校第1学年「創作の活動」における一人一人の創造性が生きる支援の在り方

(1)  授業研究のねらい
 創作の活動の中で一人一人の創造性を育成するには,発想や着想を表現へと導く過程において,教師のかかわり方や生徒の見通しをもった活動への支援の仕方などに工夫が必要であると考える。
 本研究は,生徒一人一人の創造性を育成し,それを生かすための支援の在り方について,創作活動に関する授業研究を通して明らかにするものである。
(2)  創造性を生かすための手だて
 すべての表現活動の過程において,創造性を分析してみると,図1で示すように,表現に至るまでの着想→発想→構想→計画の段階で,生徒一人一人の取り組みの中に創造性が生かされていることが分かる。
 つまり,よりよい表現とは何かを探求するる生徒を育成するためには,それぞれの段階において,教師が見通しをもった支援や活動の工夫をすることが,非常に重要であると考える。
 さて,創作の活動では,生徒が本来もつ着想のよさを表現するまでには,発想・構想・計画という,いくつかの壁を乗り越えなければならない。
 そこで,リズムの創作について,次のよううな段階による手だてをとることにした。
図1 創造性が生かされていく過程

図1 創造性が生かされていく過程

 着想の段階
 リズムづくりでは,さまざまなリズムパターンを実際に演奏したり,参考作品を鑑賞したりすることで,多くのアイデアを身に付けることができる。
(ア)  即興的なリズムづくり
 音楽づくりの第一歩として,即興的なリズムづくりを行うこととした。リズムまわしゲームは,リズムをその場で即興的に聴いたり,つくったりする力を育てることができる。(図2)
図2 即興的なリズムづくり

図2 即興的なリズムづくり
(イ)  リズムの記録の工夫
 授業の始めに毎回一人ずつリズムをつくり,その作品を手拍子やひざ・足,かけ声など,体を使った音でリズム打ちを全員で行うこととした。つくったリズムは黒板に掲示し,その記録を見ながら演奏することで,今後の活動での記譜の参考とする。
(ウ)  学習カードの活用
 学習カードを活用することで,生徒は自分たちの作品づくりのヒントに気付き,そのヒントを具体的に記述することによって,活動の見通しをもつことができる。
 発想の段階
 作品を発想する段階では,音探しをする中で,音そのものの質に着目することが先行する場合と,漠然としたイメージに着目することが先行する場合との二つがある。
(ア)  音素材への着目
 身の回りにはいろいろな音があり,音そのものに興味をもつことで,楽器以外からも音探しをしながら,多様な音を組み合わせたリズムづくりが可能なことに気付くことができる。(図3)
図3 音を探す

図3 音を探す
(イ)  漠然としたイメージへの着目
 音探しをすると,音のもつ性格(明るるさや暗さ)や特徴(生徒がこれまでに体験した音に似た音)などの,ある漠然としたイメージが湧いてくる。そのイメージに向かって,音楽的に音を組み合わせていくことで,ある種の方向性をもつ音楽づくりをすることができる。しかし,イメージを探究しすぎると,いかに本物の音に近づけるか,という効果音づくりに陥りやすいので,パターン化された音などの活用等で音楽的な表現に近づける工夫を適切に助言していく必要がある。
 構想の段階
 リズムのアイデアを互いに発表する中間発表会が構想の段階に位置付けられる。発表し合う中からリズムづくりのヒントを見付けたり,実際に演奏したりすることで,自分たちの作品がよりよいものになることに気付くことができる。この段階では,自分たちのアイデアがどの程度聴き手に伝わるかを,友人の感想から考えるように教師が助言し,別な観点から作品を見つめられるようにしたい。
 計画の段階
 曲の構成をまとめることで,作品に対するイメージのまとまりや,統一感を意識したリズムづくりに入ることができる。自分たちの作品の構成を考えることで,強弱・テンポ等の曲想を工夫して演奏することが,ここではじめて可能となる。中間発表で録画したものを客観的に鑑賞し,友人の感想を参考にすることができる有意義な機会である。
 表現の段階
 これまでの段階を着実に取り組むことで,より深い表現活動を導くことができる。次に,できた作品を自ら振り返り,自己評価をしていく表現の段階である。ここでの教師側の評価は,作品の出来ではなく,次のような点に着目して評価することが,ポイントとなる。
(ア)  意図したものが表現されているか。 (表現力・集中力)
(イ)  独創的・個性的な表現はみられるか。 (創  造  力)
(ウ)  聴く側も表現する側も作品のよさを認めることができるか。 (構成力・評価力)
(エ)  次の活動への意欲が高まっているか。 (持続力・知的好奇心)
(3)  授業の実践(発想の段階)
 題材   身近な音で,リズムをつくろう
 目標
 音楽づくりの楽しさを味わいながら,進んで表現しようとする。 (関心・意欲・態度)
 自由な発想によるリズムを創作し,音素材を工夫して表現することができる。 (感受や表現の工夫)
 曲の構成を考えたリズムをつくることができる。 (表 現 の 技 能)
 参考作品や互いの発表の中で,工夫された点や構成・アイデアのよさを感じ取ることができる。 (鑑 賞 の 能 力)
 指導計画(6時間扱い)
指導計画
 本時の指導
(ア)  目標
 一人一人が自分の発想や工夫をもとに音楽づくりをしようとする。
 アイデアを出し合い,音素材を探しながら表現の工夫をすることができる。
(イ)  準備・資料
 音楽ファイル,記録用紙,音楽カード,打楽器類,掲示用楽譜,参考作品
(ウ)  展開
展開
(4)  授業の分析と考察
 音素材選びについて
 音の素材を身近にあるものから探すことをルールとして活動を始めたため,積極的な音探しをすることができた。生徒の選んだ音素材には,リコーダーや打楽器等の教室内にある楽器を音素材に選んだグループもあるが,声・ボディーパーカッション,ビン・ベルト・釣り糸・新聞紙・文房具など,多様なものを組み合わせたリズムづくりに発展したグループが多くみられた。楽器を選んだグループでは,通常の演奏方法以外の独創的な音の出し方を工夫することができた。
 これらは,着想の段階での参考作品の鑑賞や,演奏した参考作品の中から得たアイデアをもとに,行っていた活動であると考える。
 表現方法の工夫について
 各グループは,2人から6人までの自由な構成で活動したが,どのグループも生徒一人一人が1パートの役割をもって,リズムをつくることができた。音のもつ印象から作品のイメージをふくらませたグループは,途中でアイデアにつまってしまう場面もみられたが,もう一度リズムパターンづくりという基本を思い起こすことで,次の活動へとつなげることができた。これらは,毎時間行ってきたリズムづくりが生きた結果であるといえる
 学習カードの活用により,作品をつくるためのイメージのもち方や作品の構成の仕方などについての見通しがもてるようになり,進んで表現しようとする意欲が高まった。(図4)
図4 学習カード

図4 学習カード
(5)  授業研究の成果
 音楽づくりの活動では,創造性が生かされていく過程を明確にすることによって,各段階に応じた支援を工夫し,生徒の苦手意識を克服することができた。
 参考作品の鑑賞や演奏等を通して,生徒の着想をふくらませることができた。
 これまで意識しなかった音にも興味をもつことで,よく聴こうとする態度が身に付いた。
 小人数での活動により,自分の役割を明らかにした具体的な課題に取り組むことができた。
 互いに発表し合う活動を通して,曲の構成を意識した学習を展開することができた。
(6)  今後の課題
 創作での気付き(音楽の基礎・基本や音楽の諸要素)を,鑑賞や他の表現活動に生かす支援の在り方を研究する。
 他領域(歌唱・器楽・鑑賞)での創造性の生かされる過程を明確にし,生徒一人一人の着想や発想が生きる教師の支援について研究する。

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