3.音楽科における創造性に関する実態調査

 児童生徒の音楽学習や活動に関する興味・関心及び実技の実態を調べるため,アンケートを実施した。
(1)  調査対象
ア 児童生徒  県内の公立小学校10校の第2・4学年,公立中学校8校の第1学年から各々1学級を対象とした。回答数は小学校652人,中学校345人,計997人である。
イ 教師  無作為に抽出した県内の公立小学校100校・中学校100校から,小学校については第2学年,第4学年の各担当者1人,中学校については音楽担当者1人を対象とした。回答数は小学校96人,中学校100人,計196人である。
(2)  実施時期 平成8年10月21日から平成8年10月25日まで
(3)  調査項目,調査結果及び分析
 児童生徒を対象にした調査内容と結果については表1〜6に示し,教師を対象とした調査内容と結果については表A〜Fに示す。また,児童生徒と教師を対比した内容と結果は表3と表Cのように示した(以下同じ)。なお,表中の数値は全て調査対象者数に対する回答者数の割合(%)である。表の中で調査の設問については,罫線で囲んで示した。また,設問については,スペース関係上,設問の趣旨をそこなわない範囲で省略した表現になっている。

 児童生徒についての調査
(ア)  表現について(表1,表2)
 児童生徒が発想やよさを発揮し,表現していくには,児童生徒一人一人に応じた支援や働きかけ,場の設定を行うことが大切である。また,児童生徒にとって主体的,意欲的な学習活動を行うには,友達と一緒に(全体で34.7%)コミュニケーションを図りながら,取り組んでいくことが大切であることが分かる。次の,自分が好きな活動のときでは,学年が高くなるにしたがって上昇が(小2は17.6%→中1は30.3%)見られる。
 表1 発想やよさの表現
いつ表現しようとしていますか。 小2 小4 中1 全体
いつも 13.0  9.8 10.4 11.0
ほめられたとき 17.6  7.0  5.4 10.0
指名されたとき 18.7  8.8  2.5 10.0
友達と一緒のとき 26.6 39.6 37.9 34.7
好きな活動のとき 17.6 23.2 30.3 23.7
気に入ったとき  6.1 11.6 12.1 10.0
その他  0.4  0.0  1.4  0.6
(イ)  評価について(表2)
 児童生徒にとって,自分のよさを教師や友達に認めてもらえることは,大きな自信につながる。また,自分では気付かない自分のよさを,他からの指摘によって分かるのも,本人にとっては,大きな励みになる。ときどきあるが小2は32.0%,小4は43.5%,たまにあるが中1は48.6%で,全体としては年齢が上がるにしたがって,その割合が下がる傾向にあるのが分かる。
表2 発想やよさの評価
授業で自分のよさを認めてもらえていますか。 小2 小4 中1 全体
いつもある  7.9  1.8  1.1  3.6
だいたいある 26.6 21.4  9.6 19.2
ときどきある 32.0 43.5 26.8 34.1
たまにある 25.9 30.2 48.6 34.9
もらえていない  7.6  3.1 13.9  8.2
 教員についての調査
(ア)  創造性の必要性(表A)
 「創造性は,児童生徒が自らの課題を解決するにあたり,主体性をもって,児童生徒自身にとって新しい価値あるものを創りだすことであり,創り出そうとする能力・態度」として定義した上で,質問したところ「自己実現のため」が全体で,79.1%と最も多かった。これは,学習指導要領の方針にそって指導が進められている結果であることが分かる。
 表A 創造性の必要性
児童生徒の創造性を,どのようなところで育てる必要性を感じますか。 小学 中学 全体
生活の向上のため  7.2 11.0  9.1
社会的な問題解決のため  5.2  3.0  4.1
自己実現のため 81.4 77.0 79.2
社会変化に対応するため  6.2  6.0  6.1
その他  0.0  3.0  1.5
(イ)  評価について(表B)
 創造的な学習活動を,音楽科の授業に位置付けると,主にどんな活動が考えられるかを聞いたが,「既存の作品とのかかわりを通して,児童生徒がより広がりのある音楽表現を工夫していく活動」を選んでいるのが一番多く,全体で67.0%になっている。
 これは,具体的には,既存の作品を模倣したり異なる作品をつないだり,足りない部分を補ったり,新しいものを加えたりする活動である。これをさらに進めて,音楽をつくって表現する活動や創作へとつなげていきたい。
 表B 創造的な学習の評価
創造的な学習活動を授業に位置付けると,どんな活動が考えられますか。 小学 中学 全体
工夫した演奏や感じとって聴く活動(創造力) 13.4 20.0 16.8
音楽表現を工夫していく活動(思考力) 71.1 63.0 67.0
新しい作品をつくり上げる活動(表現力) 15.5 16.0 15.7
その他    0  1.0  0.5
 児童生徒と教員の共通項目での調査と比較
(ア)  学習領域について(表3,表C)
 自分のイメージや思いを生かしやすく,よさを教師や友達に認めてもらえるのは,自分の得意な領域での表現活動や,教師の授業に対する取り組む姿勢とのかかわりによって異なってくると思われる。また,教師自身は音楽をつくって表現する活動や創作を児童生徒が発想やよさを生かしやすい学習ととらえ,全体では42.1%(表C)になっている。しかし,学校行事やこれまでの授業計画の流れなどから,実態としては歌唱が中学校で37.0%,器楽が小学校で35.1%(表C)あり,これらが授業の中心になっている。
 そして,音づくり・曲づくりが中学校で22.1%と多いのは,授業の手だてにおいて教師の工夫があると考えられる。教師は児童生徒自身が感じたことにもとづき,発想やよさをどの領域が生かしやすいか考える必要があるが,これまでの授業計画の流れや学校行事等によって,器楽や歌唱中心の授業が多いことが分かる。
 そこで,内容を少しずつ転換し児童生徒一人一人の発想やよさが生きるように,創作的な活動(全体で42.1%)を増やしていくとともに図形等の自由な表記の仕方から,段階的に五線譜まで理解をさせ,表記や音楽の意味等も押さえる必要がある。

 表3 発想を生かしやすい学習領域
自分の発想を生かしやすく,自分のよさを認めてもらえる学習はいつですか。 児童生徒
小2 小4 中1 全体
歌を歌うとき 33.5 30.2 36.4 33.3
楽器演奏するとき 30.9 40.7 35.7 35.9
音づくり曲づくり 15.1 15.1 22.1 17.4
曲を聴くとき 13.7  6.3  1.1  7.0
課題を調べるとき  6.8  7.7  4.7  6.4
 表C 発想を生かしやすい学習領域
自分が指導にあたる上で,一人一人の発想やよさを生かしやすい学習内容はどれですか。 教 師
小学 中学 全体
歌唱  8.2 37.0 22.9
器楽 35.1 22.0 28.4
創作 54.6 30.0 42.1
鑑賞  0.0  5.0  2.5
調べ学習  2.1  6.0  4.1
(イ)  学習領域について(表4,表D)
 児童生徒にとって自分の発想を生かしやすく,よさを認めてもらえるものとして,歌を歌うときを多くあげており全体で36.0%(表4)である。これは児童生徒がすべての領域を十分に経験しているわけではなく,現在の授業をもとにしているためと考えられる。基本となる四つの領域の中で,児童生徒の発想やよさが生かしやすいと思われるのは,小学校で創作が34.0%であるが,中学校では52.0%となっている。
 自分の発想やよさを創造性へとつなげていくためには,音楽的な経験をより多くすることが必要であるので,教師は児童生徒が自分の発想やよさを発揮しやすいように配慮していくことが大切であると考える。
 鑑賞においては,中1で曲を聴くときが22.1%(表3)と多い。これは授業が感想文だけで評価をするのではなく,手だてをする際に他に指導の工夫があると思われる。

表4 発想やよさを認めてもらえる学習領域
発想を生かしよさを認めてもらえる学習はどれですか 児童生徒
小2 小4 中1 全体
歌を歌うとき 32.0 36.5 39.3 36.0
楽器演奏するとき 26.6 33.0 22.9 27.5
音づくり曲づくり 25.2 19.3 30.0 24.8
曲を聴くとき 15.5 10.2  5.7 10.4
その他  0.7  1.0  2.1  1.3
 表D 発想やよさを生かせる学習領域
発想やイメージを生かした指導をどの領域で行っていますか 教 師
小学 中学 全体
歌唱指導のとき 26.8 52.0 39.6
器楽指導のとき 29.9 12.0 20.8
創作指導のとき 34.0 16.0 24.9
鑑賞指導のとき  9.3 20.0 14.7
その他  0.0  0.0  0.0
(ウ)  学習形態について(表5,表E)
 児童生徒一人一人が自分の発想やよさを発揮しながら,自由にミュニケーションを図り,児童生徒同士がお互いに高め合うためには,小編成のグル−プで学習活動を展開できることが望ましい。
 児童生徒と教師とを比較すると,児童生徒の方は全体で52.5%(表5)と低い率を示しているが,教師の方は全体で83.3%(表E)と高いことが分かる。これは教師がグループ編成する際に,グループの人数を平均化したり,指導しやすい人数を前もって決めていたりして,児童生徒の側に立った意識になっていないことを示している。

 表5 発想やよさを生かしやすい学習形態
発想やよさを一番生かしやすいのはどれですか。 児童生徒
小2 小4 中1 全体
一人で  7.2  8.4 10.7  8.8
二人で 21.9 22.5 11.1 18.5
グル−プで 48.2 51.6 57.8 52.5
全員で 22.7 17.5 20.4 20.2
 表E 発想やよさを生かしやすい学習形態
発想やよさを生かしやすい学習形態はどれですか。 教 師
小学 中学 全体
個人  7.2  8.0  7.6
ペア  9.3  7.0  8.1
グループ 82.5 84.0 83.3
全員  1.0  1.0  1.0
(エ)  表現形態について(表6,表F)
 児童生徒と教師の意識の差について比較してみると,現在小2の授業では鍵盤ハーモニカを使っているが,児童はリコーダー等の管楽器を求めている。だが,小4になると鍵盤ハーモニカにも慣れたり周囲の様子も分かり,数字が他の項目と同様に平均化されている。
 教師の意識をみると,小学校では打楽器や手づくり楽器が共に32.0%(表F)と高い。これは児童生徒にとって,低学年から旋律や和声を指導するより,リズムから入った方が分かりやすいとの意向が読み取れる。しかし,児童生徒は1.2%,0.6%とどちらも低く,発想やよさがあまり発揮しやすい形態ではないと判断していることが分かる。

 表6 発想やよさが発揮しやすい表現形態
発想やよさが発揮しやすいものはどれですか。 児童生徒
小2 小4 中1 全体
歌唱 19.8 20.3 34.6 24.9
鍵盤楽器  2.9 24.5 28.9 18.9
管楽器 43.2 26.7 12.9 27.5
弦楽器 10.8 12.3  9.3 10.8
打楽器  1.1  0.7  1.8  1.2
和楽器  2.9  4.6  8.2  5.2
手づくり楽器  0.0  0.4  1.4  0.6
コンピュータ 18.7 10.5  0.4  9.8
その他  0.7  0.0  2.5  1.1
 表F 発想やよさを受け取りやすい形態
発想やよさを受け取りやすいものはどれですか。 教 師
小学 中学 全体
歌唱 15.5 51.0 33.5
鍵盤楽器 12.4  5.0  8.6
管楽器  1.0 14.0  7.6
弦楽器  0.0  1.0  0.5
打楽器 32.0  5.0 18.3
和楽器  0.0  0.0  0.0
手づくり楽器 32.0  9.0 20.3
コンピュータ  1.0  8.0  4.6
その他  6.1  7.0  6.6

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