【授業研究2】 小学校第2学年「みんなのまつり」における創造性を培う支援の在り方

(1)  授業研究のねらい
 「まつり」の単元は,子供たちが意欲的に,思い切り自己表現できる活動が多い。子供一人一人が,まつりへの夢をもち,自己実現のために,試行錯誤し,自分のよさを生かしながら発展的な活動をしていくことから,創造性を育てることができると考える。そこで,一人一人がまつりへの思いや夢をふくらませながら活動できるように,一人一人に応じた適切な支援の在り方について研究をする。
(2)  創造性の基礎を培うための手だて
 補助簿の活用と一人一人に応じた適切な支援
 多様な方法で子供一人一人を理解し,適切な支援をすることにより,一人一人のよさを生かすことができると考える。そのため,T・Tの指導も計画的に実施する。
 他教科・他領域との関連を図った活動
 時間を十分にとり,連続的な活動の展開により,「まつり」の学習内容や子供の活動に広がりや深まりができ,子供の多様な自己表現が期待できる。
 身近な人々の協力を得た学習の展開
 地域の祭りのことを教えてもらったり,活動への助言をしてもらったりすることにより,まつりへの思いや夢をふくらませ,活動への意欲を高めることができる。
 互いのよさを認め合う場の設定
 友達のよさや,他のグループの工夫している点や活動のよさに気付いたり,認めたりする時間を確保することにより,活動に対する喜びを味わい,さらに工夫した活動をしようという意欲を高めることができる。
 気付きを促し,活動意欲を高める学習環境の構成
 まつりのための活動に没頭できるような活動場所を整備し確保することにより,活動意欲を高めることができる。
(3)  授業の実践
 単元  みんなのまつり
 単元について
 「まつり」は,子供たちがそれぞれ自分の思いや夢をふくらませながら,思い切り自己表現できる活動である。「楽しいまつりにしたい」「みんなを招待したい」「こんなこともしてみたい」と,まつりへの思いや夢をふくらませ,自分のよさを生かしながら発展的な活動をしていくことが,創造性を育てることになると考える。自分たちの力でまつりを創り上げていく楽しさや喜びを味合わせ,みんなで活動する素晴らしさや自分自身のよさに気付くようにしていきたい。
 単元の目標
<関心・意欲・態度>  自分たちのまつりに対して,それぞれの思いや夢をふくらませながらみんなで力を合わせてまつりを創り上げていこうとする。
<思考・表現>  友達と協力して自分の思いを存分に表現し,まつりを創り上げていくことができる。
<気付き>  みんなで力を合わせてまつりを創り上げていく素晴らしさと,まつりを創り上げていくことができた自分自身のよさに気付くことができる。
 活動計画(関連:生活14 国語1 図工4 体育1 音楽2 学活1 道徳1 ゆとり1 計25時間)
活動計画
 本時の活動
(ア)  目標  楽しくにぎやかなパレードにすることを考えながら,パレードの準備をすることができる。
(イ)  支援  本時の活動では,みんなで楽しくにぎやかなパレードにすることを考え,自分のよさを生かし,友達と協力して活動できるようにすることが大切である。子供一人一人が自分のよさを生かして自己表現ができるように,活動のよさを認め,励ます支援をするとともに,相互評価の場を設け,友達の活動のよさや自分のよさに気付くことができるようにしていきたい。また,活動の場を広くとり,二人の教師で支援にあたり多様な活動ができるようにする。
  (場の支援)
   自分の思いが表現できるように多様な素材・用具を準備する。
   製作した物を使ってパレードの練習ができる場所を確保する。
  (思いへの支援)
   まつりへの思いをふくらますことができるように,「祭りの思い出コーナー」や「こんなまつりにしたいなコーナー」に,今までの自分たちの活動の記録や祭りの写真,パレード作りのアイデアを掲示しておく。
(ウ)  評価
場 面 評 価 の 観 点 求める子供の姿
活 動 中 関心・意欲・態度 ・自分で必要な材料を探し,進んで作ろうとしている。
・製作活動に没頭し,楽しく活動している。
思 考・表 現 ・楽しくにぎやかなパレードになることを考えて,工夫して作っている。
・その子供なりの発想を生かし,工夫して表現している。
気 付 き ・友達の工夫しているよさや自分の活動のよさに気付く。
(エ)  展開
展開
 教師の支援と子供たちの活動
 どの子供も意欲的に活動していた。友達と相談しながら協力して活動したり,互いの工夫を認め合ったり,それらを自分の活動の中にも取り入れようとする姿も見られた。
 ここでは,抽出した2人の子供と1つのグループの子供たちの活動の様子について述べる。
教師の支援と子供たちの活動
◎子供の活動   ■教師の支援
(4)  授業の分析と考察
 補助簿の活用と一人一人に応じた適切な支援
 評価のチェックリスト一覧表と子供のつぶやきや行動を自由に記入できる補助簿を活用し,子供一人一人のまつりへの思いや夢を生かして支援をしようと考えた。行動の観察からだけではなく,作品,振り返りカード,つぶやき,作文などから子供のよさを知ることができ,よさを生かした活動への支援もすることができた。また,T・Tの役割分担や支援計画を立てる際にも活用でき,多様な支援をすることができたと考えられる。
 他教科・他領域との関連を図った活動
 国語・図工・体育・道徳・学級活動・ゆとりとの総合的な学習を計画し,時間を十分にとり,連続的な活動の展開ができるようにしたため,子供が思いや夢をふくらませながら,意欲的に活動し,子供の多様な自己表現を引き出すことができたと考えられる。
 身近な人々の協力を得た学習の展開
 おはやしの練習をしている6年生からおはやしを聞かせてもらったり,リズムの取り方を教えてもらったりしたことにより,自分たちのまつりも楽しくにぎやかにしていきたいと考えるようになり,活動の意欲を高めることができた。竹を叩いてリズム打ちの練習をしたため,まつりのパレードの楽器作りに竹を使用した子供もいた。
 手作りおもちゃボランティアの方々から,身の回りの素材でのおもちゃ作りを教えてもらったことにより,工夫することの楽しさが分かり,出店やパレードの準備も工夫した活動が見られるようになった。また,たくさんの種類の素材集めにも意欲をもって主体的に活動できた。
 互いのよさを認め合う場の設定
 活動の後に,友達の活動のよさを紹介したり,自分で工夫した点を発表させたりするようにした。自分の思いを実現するための工夫や協力して活動しようとしている友達の活動のよさの発表から,新しい気付きや工夫を生み出していくことができた。始めは,教師が紹介することが多かったが,やがて子供たちからの発表が増えた。振り返りカードにも,自慢したいことや友達のよさを書くようにさせ,帰りの会や授業等で教師が紹介するようにしたため,活動意欲を高めることができたと考えられる。
 まつりへの夢をふくらませていけるような学習環境の構成
 「祭りの思い出」や「おもちゃ作りの写真や活動後の感想文」等を,生活科室に掲示したり,製作した物を飾ったりして,自分たちのまつりをイメージできるようにしていった。また,「こんなまつりにしたいなコーナー」には,子供たちのつぶやきや意見を大切に掲示していった。これらを見ながら時間をかけて意志決定ができるようにした。また,新しいアイデアが生み出せるようにすることもできたと考えられる。
(5)  授業研究の成果
 生活科学習において子供の創造性を培っていくには,以下のような総合的な取り組みが有効な手だてであることを明らかにすることができた。
 補助簿やチェックリストを活用し,子供一人一人を深く理解した上で,特性やよさに応じた適切な支援をすることができた。
 学習が発展的な活動として展開できるように他教科・他領域との関連を図った単元の構成をすることができた。
 身近な人々や複数の教師の協力体制による支援などにより,個に応じた多様な学習の展開ができた。
 教師による場の設定や環境の構成により,子供同士が互いのよさを認め合い活動意欲を高めるようにすることができた。
(6)  今後の課題
 子供の創造性を培うための支援の在り方について研究を深める。
 子供の活動や追究が広がり発展的な活動を展開できるようにするため,他教科・他領域との総合的な単元構成について研究していく。

生活目次に戻る