刊行にあたって

茨城県教育研修センター所長
増田 一也
 平成8年度から本研修センター教科教育第二課が主体となって進めてきた「観察・実験,実技に創造的に取り組む学習の指導」に関する研究が本年度をもって完結し,このたぴ研究報告書を刊行する運びとなりました。
 本研修センターでは,平成6年度から「主体性の育成を図る学校教育」を統一研究主題として教科や領域に関する研究を進めてきましたが,理科,図画工作・美術,家庭及び技術・家庭などの実験・実技を伴う教科については,平成6〜7年度に「主体的に活動できる観察・実験,実技の指導の在り方」を主題とする研究を行い,その成果をすでに公表しているところであります。平成8〜9年度には,その研究を更に深め発展させる観点から標題の研究を行ったものであります。
 創造性とは,「子どもが自からの課題を解決するにあたり,主体的に考え,判断し,それを表現して,子ども自身にとって新しい価値あるものを創りだすこと,或いは創り出そうとする資質や能力をもつこと」でありますが,それはとりもなおさず,社会の変化に主体的かつ柔軟に対応して生きていくために必要とされる資質や能力,即ち中教審答申の言う「生きる力」であり,それをはぐくむことがこれからの学校教育の目標であります。
 この研究を進めるにあたって学校の協力を得て実態調査を行いましたが,例えば理科では,創造性育成の手だてとして教師は「課題や問題を子ども自ら見つけること」や子どもが「予想や仮説をたてたり実験方法を子どもが自ら考えられる」ことが特に重要であると認識しているのに,実際は「子どもの発想を生かした課題作りや子どもの考えた観察・実験方法をよく取り入れている」割合が小・中学校,高等学校を通して少ないという実態が明らかになりました。
 本研究では,以上のような実態を踏まえ,指導法の改善や教材・教具の開発等を通して創造性を育てる授業を構築し,実践することによって「創造性を育てる授業の在り方」を究明しました。これからの課題とすることも多々ありますが,少なくとも現状を改善する一つの指針となって学習指導の充実・改善に資することができると確信しています。先生方の積極的な本冊子の活用を期待したいと思います。
 最後になりましたが,本研究を進めるにあたり意識・実態調査にご協力いただいた関係学校及び研究協力員の先生方に心から感謝の意を表します。


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