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提言/特別活動の指導の在り方

 特別活動の指導の現状と課題を探るために,県下すべての小,中,高等学校を対象にアンケートを実施し,ほぼ100%近い回答率を得た。その貴重なデータを整理し,各校種毎に特別活動の指導に関する現状分析を試みた。そして,特別活動の全体指導計画と4つの内容である,学級(ホームルーム)活動,児童会・生徒会活動,クラブ活動及び学校行事等における課題をまとめた。
 申すまでもなく,望ましい集団活動を通して自主的,実践的態度を培っていこうとする特別活動は,小,中,高等学校の学習指導要領第1章総則の冒頭に共通して掲げられている「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成」を図る教育活動推進に大きな役割を担っている。また,昨年11月に発表された教育課程審議会の「中間まとめ」には,各学校段階・各教科等を通じる主な課題に関する基本的な考え方の道徳教育の中で,「体験的・実践的な指導を充実する上で重要な機能を果たす特別活動」と表現されているように,豊かな人間性育成に特別活動の果たすべき課題は大きい。
 こうした特別活動に期待される理念を踏まえ,本研修センター統一研究主題「主体性の育成を図る学校教育」に4か年にわたり取り組んだ成果に立って,特別活動の指導の在り方に係る5つの問題を提示したい。
  1. 特別活動の基本に立って指導計画の見直しを進める。
     「望ましい集団活動」の体験が特別活動の特質であり,自主的,実践的な態度を培い,青年期に入る中学校や高等学校では「自己を生かす」積極的な能力育成も特別活動の目標である。これらは一朝一夕に培われる力ではなく,長い年月をかけた体験活動から徐々に獲得されるものであることを考えれば,特別活動の基本に立って指導計画の見直しが必要不可欠である。
     指導計画の見直しの問題は,学年末や年度当初の形式的なものに傾いており,学年や学級を越えてこまめに研究されるべきである。その見直しの観点をはっきりさせておきたい。
     第1に,目の前の子供の実態の把握であり,第2に成長の姿の見極めである。その意味では,家庭教育との連続性の上で小学校の指導計画は重点化されようし,中学校へ継続されていくべき内容でなければならない。同様に,中学校の指導計画は,小学校の特別活動の成果と高等学校の集団活動の基本を育てていくことが大きな柱であり,高等学校では,中学校までの自主的実践的な態度の成長に合わせて指導計画を更新していく努力が求められていると言えよう。小,中,高等学校での指導計画を連続的に把握していくことが特別活動の成果を積み重ねる上で最も課題とされるべきである。

  2. 学級(ホームルーム)活動こそ学校生活の基盤である。
     学級(ホームルーム)活動は特別活動の中でも中核的な活動であり,他の内容を充実させるためにも学級(ホームルーム)活動が生き生きと展開される必要がある。
     そのためにも求められていることは,計画委員会を大切にした,子供主体の活動計画づくりである。活動のねらいは,為すことによって学ぶ趣旨を踏まえて,「何を行う」かではなく「どう行うか」の観点を最大限に評価したい。また,計画委員会を生かすためにも,活動時間の確保を最優先の課題としたい。特に,中学校や高等学校では,生徒の活動を中心にした学級やホームルームでの活動の工夫が求められている。

  3. 児童会・生徒会活動は学校を生き生きとさせる基である。
     児童会・生徒会活動は,学校生活の充実と向上を目指し,自発的,自治的な活動として発展させる特質を担っている。小学校から中学校へ,さらに高等学校へ問題解決能力を育て,学校を活性化させるためには児童会・生徒会活動を子供たちの運営に委ねていく努力が求められている。
     まず,「自発的,自治的活動」の中身に共通理解が必要である。そして,学校行事への協力に傾きがちな活動内容を見直して,自分たちの学校生活での諸問題を話し合い,地道に取り組む実践が大切になる。そうした活動環境を整えていく中で,集団活動のリーダーシップを育んでいくことが課題であろう。

  4. クラブ活動は学校生活のゆとりと充実の狭間にある。
     学年や学級を離れて楽しく活動するクラブ活動は,中学校や高等学校の部活動による代替措置も含めて学校生活を豊かに保障するものであるが,現在進行中の教育課程審議会の中間まとめに中学校と高等学校のクラブ活動廃止の方向が示され,教育課程の厳選のあおりを受けている。学校生活を充実させるか,ゆとりを取り戻すかの岐路に立っていると言える。
     こうした状況を踏まえて,小学校のクラブ活動は,より一層子供を主体とした伸び伸びとした活動の工夫を図ること,中学校や高等学校では「部活動が一層適切に行われるよう配慮」する努力が求められている。活動の計画づくりから子供中心に取り組ませ,自発的な活動意欲を伸ばしていく工夫こそ,これからの指導に必要な方法である。

  5. 学校行事を中心とした学校づくりの推進を求めたい。
     学校行事は単調になりやすい学校生活に色彩を添え,児童・生徒が協力して優れた校風を育て,児童・生徒が豊かで充実した学校生活を体験できるという,他の活動では得がたい内容を含んでいる。
     その教育的意義を実現するには,生徒が積極的に参加することが大切であり,特に,儀礼的行事や勤労生産・奉仕的行事などでの参加意欲を高めるために,活動計画づくりに子供の主体的取り組みを促す工夫が必要であろう。
     また,学校行事精選に苦慮している現状を踏まえ,新しい学校行事の創造に取り組む時期に来ている。その際,「学校生活のゆとり回復」を前面に出して,地域に開かれた学校づくりという,新しい学校パラダイム創造を学校関係者が全力で取り組むことこそ21世紀に向けた大きな課題である。この課題克服のためには,現在審議中の教育課程審議会が「中間まとめ」で各学校の主体的取り組みに大きな期待を寄せていることを踏まえ,「創意工夫を生かす教育活動の充実のために教職員の意識改革」が必要であろう。

 以上の各活動内容に関わる大きな課題は,いずれも特別活動の活動原理に根ざしている問題である。「自ら学び,自ら考える子供の主体性の育成」を図る教育を大切にして,活動の計画や実践を子供の立場に立って進め,子供を主体にして活動過程を評価していく工夫こそ指導の基本にしたいものである。子供と教員が共にあゆみ,共に創造する,そうした教育環境が生み出されるためにも,望ましい特別活動の指導が一層推進されることを期待したい。

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