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学校行事等の課題

 学校行事は,小,中,高等学校とも設問31で行事の企画立案の中心者を尋ねたが,儀式的行事,学芸的行事,健康安全・体育的行事,旅行・集団宿泊的行事や勤労生産・奉仕的行事のそれぞれに企画立案の中心者がおり,校内の役割分担が明確になっている学校が多かった。
 ただ,それぞれの学校行事の企画立案に,児童・生徒の意見や要望を取り入れているかどうかについては,次の通り,各行事によって取り入れ方に差が見られた。
 儀式的行事においては,小中学校では78.0%,72.1%,高等学校では91.8%もの学校が生徒の意見や要望を取り入れていないとの回答である。「取り入れている」との回答は,小,中,高等学校それぞれ2.7%,4.8%,1.8%に過ぎず,教師主導型で実施されていることが伺える。
 学芸的行事では,中学校の56.3%が「取り入れている」と回答し,「ある程度取り入れている」も含めると97.7%の学校で取り入れていることになる。小学校,高等学校での「取り入れている」「ある程度取り入れている」の合計した割合は,それぞれ77.8%,87.3%であり,この行事では校種を問わずに全体的に,児童・生徒の意見や要望を取り入れていると言えよう。
 健康安全・体育的行事は,「ある程度取り入れている」の項目が校種を問わず,それぞれ67.3%,55.9%,60.9%と高い割合になっている。しかし,「取り入れている」の項目では,小学校と中学校,高等学校で差がみられ,小学校は9.3%と低いが,中学校では34.5%,高等学校では21.8%の割合を占めている。児童・生徒の意見を行事に反映させようとするのは,小学校より中学校,高等学校であり,発達段階に応じた対応と言えよう。「取り入れている」と回答した学校の割合が高等学校より中学校の方が高いのは興味深い。
 遠足・集団宿泊的行事は,「ある程度取り入れている」の割合が校種を問わず,60.1%,54.1%,65.5%と高い。また,「取り入れている」は小,中,高等学校それぞれ20.0%,38.9%,19.1%であり,高い割合で児童・生徒の意見や要望を行事に取り入れている。「取り入れていない」とした回答は中学校が6.6%と最も低く,発達段階に応じる形だが,高等学校では小学校の割合に近い数値を示している。これは,健康安全・体育的行事にも同様の傾向がみられたが,高等学校での生徒指導に関連しているのかもしれない。
 勤労生産・奉仕的行事については,「ある程度取り入れている」と回答した学校は,小,中学校とも54%であるのに対し,高等学校は36%だけである。「取り入れている」の項目では中学校の割合が16.2%で最も高い。反対に,高等学校は「取り入れていない」の項目が高い割合となっており56.4%に上っている。小中学校が児童・生徒の意見や要望を取り入れながらより身近な行事として自主的な活動を促そう努力しているのに対して,高等学校では生徒の意見や要望よりも行事をこなすことに精力を注いでいる感がある。いずれにしても,儀礼的行事を除くと,この勤労生産・奉仕的活動は生徒の意見や要望を取り入れている割合が全体的低く,小,中,高等学校とも改善の余地を残していると考えられる。
 また,学校行事の実施にあたって,児童・生徒が中心になって活動できるように配慮しているかどうか(小,中,高等学校とも設問33)について見ても,儀礼的行事と勤労生産・奉仕的行事での配慮は低く課題を残している。
 儀礼的行事に生徒が中心になって活動できる配慮をしている,と回答した学校は小学校で12.5%,中学校では14.4%,高等学校で10.0%と低い割合だが,「ある程度配慮している」を含めると小,中学校では5割を超えている。子どもを主役とした学校行事づくりの努力が表れていると考えられる。それに対して,高等学校では,「ある程度配慮している」を含めても14.5%に過ぎず,儀式の厳粛さを強調するにしても検討の余地を残している。また,勤労生産・奉仕的行事についても同様の傾向が見られ,儀礼的行事以外の活動とは際立った対照を見せている。校種の比較では,中学校が「配慮している」とした回答が31.4%と3割を超えているのが注目される。生徒会を中心とするボランテイア活動との関連が想定されるが,これからさらに開拓すべき分野であると言えよう。教師主導になりやすい学校行事の原点は,特別活動の大きな目標である自主的,実践的態度の育成にあることを確かめたいものである。
図54学校行事の減少(設問34) 学校週5日制月2回実施に伴う課題として,学校行事の精選の問題は避けて通れない。学校行事がどの程度減少したかの設問34(小,中,高等学校)の回答を図54にまとめた。(小,中は回答の平均割合を掲載)それによると,学校週5日制月2回実施に伴って学校行事数が「1〜3減少した」と回答した学校が圧倒的に多いが,校種により大きな差異が見られた。小学校では76.5%が「1〜3減少した」と回答し,さらに2割弱の学校が「3〜4減少した」を選んでいる。中学校では8割半ばの学校が「1〜3減少した」を選んでいるから,小学校と比べると,中学校は「1〜3減少した」ところで踏みとどまっていると考えられる。
 学校行事を数多く減少させて対応を余儀なくされたのは小学校で,小学校こそ学校行事精選の波を被って苦しい学校運営に直面していると想像される。同様に,減少した時間数をみると,「1〜10組み込む」とした学校は,小学校が約7割,中学校が約8割であり,「11〜20時間組み込む」とした小学校は2〜3割,中学校が1〜2割である。小学校の苦慮している様子が浮かび上がってくる。
 ところで,高等学校の対応は明らかに違っている。学校行事数が「1〜3減少した」との回答が37.3%に上っていることから学校週5日制移行への影響の大きさが伺えるが,行事数の減少に結びついていない学校が6割に及んでいる。
 このことは,元来,小学校では学校行事の数が多く,中学校,高等学校となるに従って少なかったということを示しているのか,あるいは,小学校の方が「学校生活のゆとり」への対応がスムースであるのか不明である。もし,小学校に学校行事の数 が多く,児童の発達段階と学校行事数に因果関係が認められないなら,小学校が最も減少させる割合が高いのは当然と言えよう。しかし,中学校や高等学校で,ゆとりある学校生活が生み出されたとは到底考えられないそうにもない状況から,学校行事精選の問題は学校運営の基本に深く関わっていると考えざるを得ない。
学校行事を精選する視点は,校種を問わずに「形骸化している活動は除く」の割合が約6割と最も高い。次に高い割合を示している項目は,小学校は46.5%の「家庭や地域に任せられる活動はできるだけ任せる」,中学校は41.0%の「できるだけ活動を簡素化する」,高等学校は55.5%の「伝統的な活動を大切にする」である。これは,小学校が地域との連携に傾いているのに対し,中学校は行事簡素化や生徒の負担軽減,高等学校は「伝統的行事」の維持が課題となっている。
図55学校行事精選の苦慮(設問36) 学校行事の精選で苦慮していることで最も高い割合を示している項目は「授業時間数の確保」で,小学校が76.7%,中学校が69.9%,高等学校が64.5%と高い数値である。図55に見るように,第2は各校種とも「学校生活のゆとりの確保」である。
 精選を困難にさせている要因としてよく引き合いに出される理由がそのまま数値となって表れた形である。「授業時間数の確保」と「学校生活のゆとりの確保」は,相反する課題が内包されており,学校運営に苦しんでいる様子が伺われる。「学校生活のゆとりの確保」には授業時間数の削減は避けて通れないであろう。昨年11月に公表された教育課程審議会の「中間まとめ」にも授業時間の削減と指導内容の厳選が盛られた。その中間まとめには,各学校が学校の実態に応じて創意工夫をして教育課程を編成することが重要だと提言されており,新しい学校づくりの観点から学校行精選に取り組みたいものである。それにしても,また「学校行事の取捨選択の基準設定」の項目の回答率が高く,これは,「学校中心に考える教職員の意識改革」の選択率が,小,中,高等学校と上昇していることと合わせて注目すべきである。
 学校行事の指導上の今後の課題についての設問37(小,中,高等学校)では,校種を問わず「新しい時代に応じて児童の活動にふさわしい企画を立てること」「児童・生徒中心の行事に作り変えていくこと」の項目が高い割合で選択されている。新しい時代にふさわしい新時代の学校に再生させること,それには子どもを主役とした生き生きとした学校に作り変えようとの熱意を感じるが,それが現在の各学校が抱える教育課題と結びついているようである。しかし,この設問37では,「校内研修を積極的に行う」がそれほど選択されなかったことと,「家庭や地域社会への働きかけ」の選択率が小学校で最も高く,高等学校が低いことなどが気になるところである。新しい学校づくりには,思い切った家庭や地域との連携を踏まえた新しい発想が必要であり,各学校の教職員の真剣な研究が期待されている。
 本調査に見られるように,各学校が特別活動の課題を克服して,具体的に教育活動を展開しようとしている時,中央教育審議会答申では,「総合的な学習の時間」の活用や選択制の導入などの教育への新たな提案を行っている。学校行事づくりにじっくり取り組めない状況が発生することが予想される。学校が対応の遅い教育機関にならないためにも「総合的な学習の時間」と学校行事をはじめとした特別活動や「ゆとりの時間」との関係などを,具体的に例示すべきではないかと考える。
図56育てたい資質や能力(設問38) 特別活動の指導上,今の児童・生徒に最も育てたい資質やや能力についての設問38に関して,小・中学校と高等学校を比較したのが図56である。
 図56によると,校種を超えて一貫して高い選択率を示したのは,「自分の考えを発表したりする積極的な態度」であり,「協力しながら役割を遂行する力」である。前者は現行指導要領の特別活動の目標として付け加えられた「自己を生かす力」そのものである。自分の個性を見つめ,自分を積極的に生かしていくところに自分の将来の展望が開けて来るのであり,この項目が小,中学校で「最も育てたい資質や能力」の第一に選ばれたことは意義のあることである。しかも中学校にいたっては62.4%の高率であった。
 後者は仲間と手を取り合って集団活動する能力であり,特別活動の特質である「望ましい集団活動」そのものの力量である。自主的で実践的な活動を成立させている基本的態度と考えられる。この資質や能力を育てたいというのは不足を痛感していることであり,特に高等学校で60.9%の高率になったことも見逃せないところである。特別活動の指導は最も基本的で,最も根本的な指導の在り方が問われていると考えるべきではなかろうか。
 また,小学校での「異年齢集団の中で協力する態度」,中学校での「自分の将来を切り開く意欲」,高等学校では「家庭のしつけなど基本的生活習慣」などが,それぞれ特徴的に選択されている。同級生としか遊べない小学生,自分の将来を見つめようとしない中学生,自他の別をわきまえられない高校生,など現在の学校教育の奥底に巣くう病巣が浮き彫りになっている感じがする。本来特別活動がめざし,発達段階を踏まえて伸ばしていく自己実現の支援の有り様が提起されている。青年の自立の遅れ,耐性の欠如,心の荒廃などの今日的状況を反映しているとはいえ,特別活動の目標に照らしてみると極めて深刻な課題である。
 特別活動部(係)の大きな課題としては,最後の設問に見るように,小,中,高等学校とも「学級・ホームルーム活動の指導の充実」「児童会・生徒会活動活動の活発化」などが挙げらている。従来からの課題が依然として高い割合で取り上げられている。


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