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クラブ活動の課題

 クラブ活動は学年や学級を離れて自分の興味関心を追及する活動であるから,特別活動の中でも最も伸び伸びと楽しく,豊かな集団活動が自発的に展開できる場である。ただ,中学校と高等学校のクラブ活動は放課後の部活動による代替措置が認められているので,運営上小学校と区別して考える必要がある。
 まず,小学校のクラブ活動を見ることにす。図49はクラブ活動への所属の方法を調べようとした。
図49児童のクラブ所属(小学校設問24) クラブの所属は児童の希望に従って進めることは活動のねらいからすれば当然であるが希望の極端な片寄りや施設や指導者の面で,運営上さまざまな問題を含んでいる。それをどう克服しているかの回答が図49である。
 ア.はすべて希望通り,イ.はクラブ設置は教師の手で,ウ.は希望調査をして教師が調整する,というようにいろいろな運営が想定されたが,結果は,クラブの設置は学校側が行い所属は児童の希望,という教師と児童の折衷案が半数近くを占める。次に,希望調査のあと教師の側の調整,という無難な選択が34.0%と3校に1校の割合。そして,すべて希望通り,が2割弱である。ここでは,すべて児童の希望通り,の実施校が意外に多くしかも,鹿行地区と県西地区の小規模校では4校に1校の割合で実践されていることを評価すべきであろう。また,「設置は教師,希望は生徒」の折衷案と「希望調査のあと教師の調整」の選択の比率が中規模校で逆転しているのが目につく。(大規模校44.1%対34.2%,中規模校40.9%対41.4%,小規模校48.2%対28.3%)学校規模は教員数と児童数を表わしているのだからその大きさが児童の期待に応える関数として働くのかもしれない。
図50クラブ活動指導の現状(小学校設問25) こうして児童の希望を尊重して取り組む小学校のクラブ活動の指導の現状は,図50に見るように,「学校全体で熱心に取り組む」が73.9%と圧倒的選択である。「担当教師によって取り組みに差が見られる」は規模別に見てもいずれも2割程度であり,「教科指導よりも手を抜く」や「教師も児童も遊び」の項目がほとんど選択されなかったことを見れば,小学校では,おおむねクラブ活動にていねいに取り組んでいると評価できるように思う。学校全体で取り組むから学年や学級を越えた活動が効果を発揮するのであり,逆に言えば,クラブ活動の指導に取り組むことが学校の指導体制を確かなものにしていくのである。
 いっぽう中学校,高等学校のクラブ活動では,放課後の部活動による代替が認められているのでクラブ活動の運営は大きく部活動に関係づけられたと考えられる。
 すでに分析したように,中学校では229校中102校が部活動代替を実施している。一部代替を含めると,ちょうど5割が部活動による代替措置をとっている。学校規模による差異は,ほとんどなく,地域的に見れば県北地区や県西地区での代替率が高く,県南地区が20%台と低くなっている。これは部活動参加率が関与しているのかもしれない。
 高等学校では一部代替も含めて部活動による代替措置は60%を越えている。完全に部活動代替率は中学校の方が多いのは部活参加の割合が中学校の方が高いことを示しているようだが,一部代替の割合は高等学校がはるかに大きい。これはクラブ活動実施時間の計算の繁雑さを嫌う傾向が中学校に強いことと,高等学校の運営が弾力化していることが背景になっていると考えられる。
 さらに,クラブ活動を実施している学校の所属方法では,中学校では小学校と同様に,「クラブ設置は教師側で生徒の希望優先」が多いが,中,小規模校では比較的「設置からすべて生徒の希望」が増えてくるのは,できるだけ生徒の自主的な活動にしようとする工夫が可能な規模であると言えるかもしれない。それに対して,高等学校のクラブ活動の所属は,すべて生徒の希望」が皆無であることが目につく。クラブ活動のねらいとする,共通の興味,関心を追及することを通して生徒の自発性や自治的態度を育てる視点から生徒の希望を大事に運営する工夫が求められると考える。
 そしてそのことは部活動による代替措置をとっている部活動の指導にも要求される事柄である。
図51部活動の指導の現状(中・高設問25) 代替措置をとる場合にはクラブ活動実施と同等の教育的効果が認められる場合に限るして,学校の教育計画に基づいた教師の適切な指導下にあることなど,いわゆる代替9条件が提示されているが,その部活動評価が図51である。
 中学校と高等学校の部活動の指導の現状を比較すると,「学校の教育計画に基づいた教師の適切な指導下」が共に60%程度,「共通の興味や関心の生徒で組織」が同じく両者とも60%程度で,「生徒の自発的,自治的な活動の助長」には3割半ば過ぎ,であり,中学校も高等学校も同じような指導の現状にある,と考える。高等学校の方が,「特別活動の目標や方針の達成をめざした活動」であり,中学校の方が「生徒の健康や安全に配慮」しているのは中学生と高校生の発達段階の違いによるものであろう。
 問題は,生徒の自発的,自治的な活動の助長」の項目が3割程度しか選択されない状況である。そもそも,自発的,自治的な活動として伸ばす,というのはクラブ活動の本質的な部分であり,指導の現状がこの趣旨に即していない状態ではクラブ活動の存在理由が問われるところである。
図52クラブ(部)活動計画の自主的運営(中・高設問26) 次の図52では,クラブ活動(部活動)の活動計画の自主的な運営に関する評価の中学校と高等学校の比較を見る。
 中学校と高等学校の選択には大きな隔たりがある。自主的運営について,「どちらかと言うとそうである」の消極的肯定派も含めて肯定する割合は,中学校の68.1%に対して高等学校は,48.1%で20ポイントの開きがある。
 これは,中学校の活動にはクラブ活動のねらいに即して指導しようとの立場が強いのに対して,高等学校では,生徒の自主性に頼らない厳しい訓練が指導の基本になっていつ傾向が強いことを示すものであろう。厳しさは行き過ぎに陥る場合もあり,甘えは怠慢に通じる事態もあり,集団活動の指導には一筋縄ではいかない困難さも付きまとうが,少なくても,特別活動の大きな目標である,自主的,実践的態度の育成の観点を離れた活動は論外であるし,活動の成果も期待できないであろうから,例え部活動の伝統と言えども,改めて生徒を自主的な活動意欲を高める指導の基本に立ち戻ることが課題であろう。
 また,高等学校と比較して肯定的評価が高い中学校の現状でも,「どちらとも言えない」との回答を含めると30%以上の学校で活動計画の改善を迫られていると考えるべきである。特に,希望や関心を膨らませて個性を伸ばす時期の中学生のクラブ活動(部活動)に強制的な要素があってはならないし,高等学校とのクラブ活動(部活動)との連続性を考慮して指導の在り方を研究すべきであるが,第15期中央教育審議会第1次答申には,「特別活動については,教科の学習や学校外学習との関連を考慮しつつ,その実施や準備の在り方などを見直し,精選を図る。」と表現されて,クラブ活動や学校行事の精選問題がクローズアップされて来たのである。
 そこで,特にクラブ活動の指導の問題について意見の集約のため小,中学校や高等学校共通で設問30を設けて「クラブ活動が学校でやらなくてもよい」という意見の是非を求めたのである。(図53)
図53クラブ活動の是非(小・中・高設問30) 図53から,小,中学校や高等学校の校種ごとにかなりの開きがあることが分かる。
 クラブ活動を学校でやらなくてもよい,ことの積極的賛成,消極的賛成を合わせた率が,小学校では10.5%に過ぎないが,中学校では27.6%に上昇し,高等学校ではさらに42.7%と半数に迫るのである。
 また,「どちらとも言えない」の態度保留の割合が小,中,高等学校とも3割後半に達して,3校に1校は,クラブ活動の是非問題に迷いが見られることも特徴的であろう。
 学年や学級を超えて共通の興味関心を追求する,というクラブ活動の理想が,今日の学校教育の現状に照らして再検討される時期に来ている,という認識が拡大しているのかもしれない。
 それは,クラブ活動の指導は学校教育の負担になっているともとれるし,世上うたわれる「開かれた学校」を目指して学校外活動との接点を模索していく努力が求められているようだ。
 図53を逆に読めば,クラブ活動は学校でやるべきだ,という意見が小学校では半数以上に上っているのに対し,その意見を支持する立場は中学校では3割程度,高等学校ではわずか2割程度となる。小学校と,中,高等学校で大きく意見が分かれる基は部活動の指導の問題であろう。部活動が中,高校生の豊かな生活体験となって充実した学校生活を生み出している現状を認めながら,放課後の慌ただしい日常生活に結びついていることは周知のとおりである。
 ゆとりある学校生活を取り戻し,生きる力を育成しようとする中教審答申を受けて,現在審議中の教育課程審議会の中間まとめが,平成9年11月に公表された。その中で特別活動のクラブ活動について,次のように整理されたのである。

「クラブ活動については,部活動や学校外活動との関連や,創設される「総合的な学習の間」(仮称)において児童生徒の興味・関心を生かした主体的な学習活動が行われることなどを考慮して,小学校においては,地域や学校の実態に応じて一層弾力的に扱うことができるようにするため,学校において適切な授業時数を配当できるようにし,中学校及び高等学校においては,部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ,廃止する方向で検討する。」(各教科・科目の内容)

 「中間まとめ」の公表により,中学校と高等学校のクラブ活動については廃止の方向,小学校については年間の授業時間割から切り離して学校の創意工夫で計画運営していく方向が濃厚になった。中間まとめの特別活動の改善のねらいとされる次の観点を踏まえて,小学校のクラブ活動や中学校及び高等学校の部活動の指導は改めて捉え直されるべきである。「好ましい人間関係の醸成や豊かな体験的な活動の充実,基本的なモラルや社会生活上のルールの習得,集団の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的,実践的な態度の育成などを重視する観点から・…内容の勧善を図る。」児童・生徒の自発的,自治的活動として発展させることが「ゆとり」と「生きる力」のテーマである。


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