1 調査結果の分析

(1)

小学校の特別活動

 小学校の特別活動の事前調査
 今回の調査研究を行うに当たり事前調査を行った。目的は,現在小学校の特別活動における現状を探ることである。そして,調査項目を設定する際の資料とするためであった。以下はその結果である。これはまた調査結果を分析する際のポイントにした。
(ア)  全体指導計画は学校経営計画の中に位置づけられているが,形式的になりがちで,評価に基づいた全体指導計画の見直しを進めることが課題である。
(イ)  児童の発達段階や実態を,教師が十分に把握できていない場合が多く,学年学級における特別活動指導の重点化を図れていない。
(ウ)  一度作成した年間指導計画の見直しが不十分であるために,時代の変化などに対応できない。
(エ)  学級担任の力量で工夫されている指導計画も見られるが,活動内容の(2)を取り扱うことが多い。これは内容的にかなりの量があり,新しく加えられる活動内容(たとえば環境教育,ボランテイア教育など)もあるために,その活動内容の消化におわれるためである。活動内容(1),(2)の指導のバランスに悩むものもある。活動内容の(1)を速やかに行うための計画委員会の時間がとれないのが課題である。
(オ)  児童会活動については,委員会活動や集会活動に熱心に取り組む学校は多い。異年齢集団活動を実施している。低中学年の集会活動への意欲と高学年におけるリーダーの育成が課題である。
(カ)  クラブ活動は,いわゆる異年齢集団活動の一つであるが,まだ児童の自主性より教師の教え込みが強い。
 活動がマンネリ化しており,教師全体の研修と創意工夫が必要である。
(キ)  学校週5日制の完全実施に向けて,学校行事では地域社会との連携,行事の精選,子供を主役にした行事づくりが行われている。
(ク)  係活動が児童の自発的活動になっているものが少ない。当番活動のようなものだけが行われていることが多い。
(ケ)  他教科や道徳との連携が十分に図られていないものが多い。学級活動などは今後特に配慮したい。
(コ)  体験活動の重視が強調され,特別活動では積極的に導入されている。
と言った現状の一端を見ることができた。これらの情報を提供してくれた各小学校の現状を参考にしながら茨城県内の小学校への調査研究を開始することにした。

 全体の指導計画等における現状と課題
 全体の指導計画等については,各学校における現状として,一度作成した全体の指導計画の見直しは不十分であることが多く,時代の変化などに対応する指導ができていない部分のあることが指摘されている。今回の調査においても,そうした点を究明しようとした。
(ア)  全体の指導計画等の見直し
図1 図1は特別活動の指導計画の作成にあって,特に重視していることは何か,を調査したグラフであり,前述の問題を垣間みることができる。たとえば,自主的,実践的態度を育てることに重点をおくと回答した学校が,全体で83.8%見られる。また,学校の実態に即して,が64.8%と続いている。このことから,各学校とも特別活動の目標に迫ろうとして,その指導計画等を作成していることが分かる。
 その反面,予備調査で指摘があった「時代の変化に対応すること」への対応が鈍いことも分かる。回答の「学校の創意工夫を生かすこと」を見てほしい。これを重視することは,もちろん,地域の願いや児童の実態を指導計画に生かしていくこともあろうが,やはり,社会の変化や時代のニーズを敏感に取り入れるということも含まれるはずである。
 この項目を重視している学校が全体の50.9%の小学校のみであった。これは,約2分1の学校でしか,「その時代の変化に対応する」ことができていないのではないかという危機感を感じる。
 中央教育審議会の答申などを見ても分かるように,これからの21世紀を生きる子供たちにとって,ますます時代の変化にともなう要求が増えてこよう。当然,特別活動の中で取り扱わねばならないことが,現行の内容に付け加えられたり,新たに登場することは間違いない。
 教育庁指導課は,例年「学校教育指導方針」を年度始めに提示しているが,その中で特別活動の指導計画等は総合的な視点から検討することとしている。学校現場において全体の指導計画を含めて一度見直せば良いというものではなく,こうした変化の激しい社会だけに,学校の教育目標の具現化のためには,随時見直す必要があるのではないだろうか。
(イ)  見直しと校務分掌
 次に,その見直しを進めるであろう中心的役割を担う人,あるいはその会議はどうなっているのだろうか。今回の調査結果を見てみよう。(設問1)
(a)  全体の指導計画は,規模の大小に関わらず66.8%が,特別活動主任が中心になり作成されている。
(b)  学級活動計画は,特別活動担当が中心になって作成されている。
(c)  児童会活動計画は,児童会の担当が中心になっているが,特別活動主任が作成しているところが34.5%ある。
(d)  クラブ活動計画は,クラブに所属している児童と担当が協議して決定していることが多い。(74.8%)
(e)  学校行事の年間計画は,その特性上,教務主任が作成することが多い(86.1%)という結果である。

 これから分かるように,いわゆる「調和のとれた学校運営」が行われ,それぞれの主任あるいは担当が,それぞれ校務分掌上の分担に従って仕事をしていることがうかがえる。
図2 さらに,分掌の組織の人数を図2(設問2)で見てみる。各学年から1名ずつという考えからか,5人以上で組織されている学校が多い。しかし,中規模の学校(12クラスから18クラスの学校)では3,4人で組織されていることが分かる。
 次に,この組織を動かす主任の年齢を見てみると,年齢的には40才前後が最も多い。学校のおかれている事情(職員の年齢構成)によっては,もっと若くても主任になっているところも見られる(鹿行,県南,県西)が,やはりここでも「調和のとれた学校運営」が行われている様子がうかがえる。また,特別活動に関する会議は,必要に応じて開かれることが多く,全体の89%を占める。
 こうしてみてくると,組織はしっかりしていて,しかも運営上の大きな障害も少ない。それなのに,(1)で見たような問題が存在するのはなぜだろうか。
 ここに,小学校の特別活動における課題の一つが見えてきたように思う。それは,組織の形骸化という問題である。確かに全体の指導計画等は一度できあがると,それを見直すには相当の時間と労力が必要になる。まして,学校教育の現場では,特別活動だけやっているわけには行かない。教科における指導,さらには生徒指導等々,多くの指導に追われる。これでは,とても現在使用されている全体の指導計画等に大きな支障がなければ,そのまま継続して使用しようと言うことになってしまうことは明らかである。
 今回の調査では,特別活動の指導計画を作成する時に何を重視するかという問いに対して,自主的・実践的態度を育てることに重きをおくと答えた学校が多かった。この考え自体に問題はないが,先にも述べたように,その一面において「時代の変化に対応する」ような,新しい流れを全体の指導計画を含めた,それらの特別活動の計画の中に取り入れていく難しさになって現れたきているのではないだろうか。一度作り上げられたものを見直すということは,確かに労力のいることである。しかし,昨今のような先行き不透明な,変化の激しい時代に,今のままで良いのだろうか,大きな課題が残っていると言えまいか。

 学級活動における現状と課題
 
(ア)  学級活動の年間指導計画の学級化の見直し
 特別活動の中心的役割を担うのが学級活動である。その年間指導計画になかなか地域性や学級の独自性が出せないまま,現在も学校の特別活動年間指導計画に示されたままのものを安易に使用している学級が少なくない。前述の事前調査でも児童の実態を教師自身つかみきれず,学年学級の特別活動での指導の重点化が図られないことが多いことが出されている。
図3  図3は学級の年間指導計画は担任する児童の実態に合わせてあるかという問いに対する回答である。年度始めに学級の年間指導計画を学級化するという学校が全体の36.4%,それ以外の学校は学級の実態などが加味されることなく使用されているという調査結果である。学級の実態は,その学級を構成する児童によって,同年齢児童であっても大きく異なることが多い。そのため指導すべき時期も当然計画通りに行かないことが予想できる。年間指導計画の学級化もデータ的にかなり浸透してきているように見える,その反面,学級の実態が加味されていないことがうかがえる。
 では,なぜ多くの学校で学級の実態を加味しない計画になってしまうのだろうか。そこを掘り下げる必要がある。その原因として3つ考えられよう。
 まず,年間指導計画そのものが学級化しなくても使用できるということ。2つめに年度当初では児童の実態をつかみきれないこと。3つめに1年間の間に修正や変更が難しいことなどが挙げられよう。
 まず年間指導計画が学級化しなくても使用に耐えうる問題であるが,どこの学校の年間指導計画もかなりの整備が見られ,大きな問題のある指導計画は,教育事務所等の指導により激減したこと。それにより,特別活動が大きく推進した。しかし,その反面,年間指導計画がどこの学校でも画一的になるという問題点を露呈してしまったと考えられる。そのために,「いつでも」「どこでも」使用できる万能年間指導計画になってしまった。
 教育研修センターで行っている「特別活動研修講座」の中で,この年間指導計画の学級化を取り上げ,研修の中に取り入れていたが,その時,受講者から集められた年間指導計画も,まさに画一的なものであった。この「画一」は,教育の機会均等,あるいは指導の差をなくすことには有効であったが,不幸にして学級の独自性を消してしまった。言い換えるならばそんな冒険をしてまでも特別活動を進めなくても良い,という消極論に立つ先生がたを増やしてしまったのではないだろうか。
 次に,2つ目の問題点であるが,確かに年間指導計画の学級化について最初に考えなければならない時期に,学級の実態がつかみ切れていないと言うことは大変問題である。また年度当初は特別活動以外の校務も多く,こればかりにかかわっていられないと言う一面もあろう。その結果,前述のように学級化しないままでの使用となってしまっているのではないだろうか。
 しかし,そんなにも年間指導計画は固定的なのだろうか。これは,3番目の問題点とも共通することだが,もっと年間指導計画を柔軟に扱えないだろうか。例えば,年度当初の4月5月はは,これこそどこの学校,学年,学級でも,指導内容や指導順序においてそう大差はないと思われる。この時期には十分学級の児童の実態を見つめ,その特徴をメモしておき,5月中旬から学級化への動きをはじめれば良いのではないだろうか,そして,それは絶対的なものでなく,月の反省や学期ごとの反省に基づき,加除修正していけばよいのではないだろうか。案外一度で決めてしまうと,これでなくてはいけないとか,一度決めたのだからということで加除修正をするということが疎かになっているのではないだろうか。もっと学級の実態を見ながら,年間指導計画と付き合わせてみることも大事だろう。そして,最初は学期1回でも学級化への取り組みができれば大きな前進となるだろう。
 ここで大事なことは,この学級ではなにを指導することが必要なのか,あるいは今何を指導しなければならないかと言ったことを教師の意識に中に,いつでも持つことではないだろうか。そして,学級の児童のために思い切った手だてを講じる勇気が必要である。またこのことに関しては,学校教育指導方針でも「学級の全員が個々のよさを発揮しながら協力して,自分たちの力で課題解決が図れるように努める」ことが努力事項として挙げられている。
(イ)  学級活動の内容の見直し
図4 図4は,「 学級活動の『活動内容の(2)』は意図的,計画的に行われていますか」(設問12)についての調査結果である。これについての事前調査では学級担任の力量で工夫されている指導計画も見られるが,「活動内容の(2)」を取り扱うことが多い。これは内容的にかなりの量があり,新しく加えられる内容(たとえば環境教育,ボランテイア教育など)もあるために,その内容消化に追われるためである。「活動内容(1),(2)」の指導のバランスに悩むものもあるという結果が得られている。これに対してグラフを見て分かるように小学校低学年では,ある程度意図的,計画的に「活動内容の(2)」を行っているという学校が64.6%,中学年では,ある程度意図的,計画的であるという学校が68.2%,高学年ではある程度意図的,計画的であるという学校が64.8%見られた。これから,「活動内容の(2)」については年間指導計画通り,ほぼ実施されている姿がうかがえる。しかし,「活動内容の(2)」で取り扱うことの増大,そのために現在の内容への圧迫があることが予測できる。その理由として,前述のように「ほとんど学校の年間指導計画のまま実施している」と答えた学校が22.3%あり,その年間指導計画は形式上の見直しをしたものであることが多いからである。
 今後,教育課程審議会の答申などがまとまるに従い,特別活動の活動内容に,新しい内容が加わることが十分に予想される。もちろん現行の活動内容も学校週5日制への移行で厳選されるに違いないが,学級活動の「活動内容の(2)」において新活動内容の導入と活動内容の厳選は,今後さらに重要になってくるだろう。
 今回の調査では,このほかいくつかの課題が見えてきた。例えば,学級活動の「活動内容の(1)」をめぐる活動内容で,学級活動の「活動内容の(1)」を活発にするための計画委員会の時間の確保についてである。低学年では学校での生活時間(在校時間)が高学年と比べて短いこともあり,計画委員会の時間の確保が難しい。中学年になると話し合いのために計画委員会を不定期でも実施する学校が,全体の29%あるが,これ以外の学校では低学年同様計画委員会の時間の確保が難しいと言う問題を抱えている。それから考えると,高学年は比較的計画委員会の時間の確保がされている。これは計画委員会なしでは話し合いができないこともその理由として挙げられる。いずれにしても,学級活動の「活動内容の(1)」を活発にするためには計画委員会の時間の確保は大きな課題である。

 児童会活動の現状と課題
 
(ア)  児童会への参加
図5 図5は,児童会活動は全校児童が参加できるようになっているかという問いである。
 事前調査でも,児童会活動については,委員会活動や集会活動に熱心に取り組む学校は多く,異年齢集団活動を実施している。低・中学年の集会活動への意欲と高学年におけるリーダーの育成が課題となっているという。図5を見て見ると,全児童がよく参加していると答えている学校が65.0%ある。しかし,高学年はよく参加しているが26.9%と全体的に関心が低く代表委員委員会の活動だけが目立っているに,それぞれ3.4%ある。
 事前調査での予測通りのデータが出てきている。高学年の参加態度などはその典型である。しかし,代表委員のみが目立っていると答えがあるように,まだまだリーダーの育成や低・中学年の参加態度については,各校とも,さらに力を入れていかねばならない課題であるようだ。児童会は「一人一人の希望や願い,意見等を活動に反映させるとともに,各学級との連携を密にすることを配慮し,児童生徒の全員が児童(生徒)会活動に積極的に関心が向けられるよう工夫する。」ことが,「特別活動の充実」の具現化のための視点になっているように,全校児童の積極的参加は,今後も重要な課題となるであろう。
 さて,そんな意味から一つここで考えておきたいのは,低・中学年の児童の児童会への参加意欲の問題である。5年生6年生と比べると,どうしても重要なポスト,あるいは役割が与えられない中学年以下の児童には児童会活動への興味関心は低く参加意欲が落ちる。自分たちで運営し自分たちのことを考えるという参加意識に欠けることが大きな問題であろう。さらに児童の実態から考えれば,どれだけの児童が集団の一員として,児童会活動に関わっていこうという立場に立てるかというところに問題があり,これまでの児童会活動の低迷を招いてきた。
 この問題の解決の鍵は,やはりそれぞれの学級での取り組みに掛かってはいないだろうか。 つまり,3年生でも4年生でも「高学年のお兄さん,お姉さんに任せておくだけで良いのか」という,参加意識を改革していくことが,まず必要ではないだろうか。その原点として学級活動におけるいわゆる「たがやし」が重要になってこよう。それぞれの学級における話し合いや協力の仕方の指導によって,児童会への参加意欲は大きく変わると予想される。一人一人の児童が課題を持って参加するようになればこの問題が少しでも解消できるのではないだろうか。
(イ)  児童会をめぐるその他の課題
 まず,代表委員会の議題の硬直化が挙げられる。つまり,学校行事を進めるにあって代表委員会が活躍する。それはそれ自体問題はないが,今回の調査結果から分かるように「学校行事への協力」が議題全体の67.3%を占めている。本来,特別活動の目標「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図るとともに,集団の一員としての自覚を深め,協力してよりよい生活を築こうとする自主的,実践的な態度を育てる。」に迫るために,全ての活動がある。しかし,代表委員会の議題が「学校行事への協力」に集中してしまっては,代表委員会の多様な活動ができなくなる恐れがあると言えよう。

 クラブ活動の現状と課題
 
(ア)  クラブ活動の存続
 クラブ活動については,今回の教育課程審議会の出した「中間まとめ」を読んだ限りでは,今後中学校及び高等学校での廃止が言われているが,そう言った状況も見据えながら現状と課題について分析して行きたい。
 クラブ活動は,いわゆる異年齢集団活動の一つであるが,まだ児童の自主性より教師の教え込みが強く,活動がマンネリ化しており,教師全体の研修と創意工夫が必要であるという事前調査の結果があった。
図6 図6はクラブ活動を充実させるための課題を挙げる問いである。
 この中で出てきた課題は次のようであった。
(a)  指導計画をしっかり立てて計画的に指導する 51.9%
(b)  活動の時間に余裕を持たせる 30.8%
(c)  指導技術を向上させて活動を充実させる 11.3%

 「指導計画をしっかり立てて計画的に指導する」と回答した学校に見られるように,まだクラブ活動の実施計画の段階で,苦慮しているクラブ活動の実態がうかがえる。そのため,事前調査結果にも見られるような活動のマンネリ化に結びついているのではないだろうか。
 また,「活動の時間に余裕を持たせる」が多いことから,クラブ活動の時間の運営そのものに余裕がなく例年通りの展開ということになってしまっていまいか。
 確かに,クラブ活動を毎週実施していくというためには,並々なる問題があることが予想される。こうした調査には出てこない問題がある。例えば天候に左右される活動を余儀なされているクラブ,会場のスペース等から,会場が一定でなく転々としなければならないクラブ,あるいは急な学校行事によるクラブ活動の中止から起こる問題等々。こうした様々な問題を抱えながら毎週の活動が行われている。
 しかし,異年齢集団活動で,しかも児童自ら主体的に活動できるのは,学校教育の中ではそうはたくさん存在しない。児童にとってクラブ活動は重要な時間であると言えよう。教育課程審議会は過日の「中間まとめ」で,中学校・高等学校でのクラブ活動廃止を提言した。クラブ活動の存続が危ぶまれている。現在異年齢集団活動をする場としてのクラブ活動を守るのは,小学校だけになってしまいそうである。クラブ活動が各教科の延長としての活動や個人的な技能を高めることに加え,自発的,自治的に運営し,協力して活動できるようなものにするために小学校のクラブ活動を,今後さらに工夫改善して行かねばならないだろう。
(イ)  クラブ活動と社会人講師
 地域と密着した学校,開かれた学校といわれ,地域社会との連携が学校教育のもう一つの課題とされてきた。しかし,学校教育施設の開放は進んだが,まだ学校教育の中に地域の人材を生かす教育が行われている場面は少ない。
 生涯教育も盛んに進められているが,まだまだ,少年団活動に代表されるようなスポーツ関係ぐらいでしか地域の有能な人材が生かされていないのではないだろうか。
 今回の調査の中に,クラブ活動に社会人講師を依頼していますかという問いがあったが,依頼していないが圧倒的に多く(89.8%),社会人講師の依頼の難しさが浮き彫りになった。これは人材バンク等の不備などがあるにせよ積極的活用に向けての方法を,今後とも研究していく必要があると言えるだろう。

 学校行事等の現状と課題
 
(ア)  学校行事の現状
図7 学校行事の精選は,昭和50年代ごろから各方面で実施されてきた。しかし,様々な問題が入り組んでいて,なかなか精選されないできてしまったのが現状である。しかし,ここにきて学校週5日制の拡大により,精選が進んでいる。
 図7は,学校行事の指導にあたって,今後の課題を探ったものである。
 学校週5日制の完全実施に向けて,学校行事では地域社会との連携,行事の精選,子供を主役にした行事づくりが懸命に行われている様子がうかがえる。調査結果を見ると,
(a)  新しい時代に応じて児童の活動にふさわしい企画を立てること(75.5%)
(b)  準備の時間をかけずに簡素化すること(37.6%)
(c)  児童中心の行事に作り変えていくこと(60.1%)

 という結果であった。学校行事をただ精選するのでなく,時代の要求を踏まえながら,そのねらいを達成しようと苦心している様子がうかがえる。
 その現れとして「新しい時代に応じて児童の活動にふさわしい企画を立てること」と答えた学校が多かったのではないだろうか。教育課程審議会でも自然体験,異年齢集団活動や高年齢者との触れ合いなどの重視をあげ,時代のニーズとも言える内容を加えようとしている。ますます新しい時代に対応する取り組みが大切になってくるだろう。
(イ)  学校週5日制と学校行事
 前述のことに重きをおき,今回の調査では,学校行事の精選についても調査を行っている。(設問35)学校行事は,月2回の学校週5日制実施に伴い減少していると考えられるが,その減少した学校行事数は設問34を見ると,1〜3とする学校がほとんどであった。
図8 そして,設問35での学校行事精選の視点は図8に示すように,「形骸化している活動は除く」が24.8%で最も多く選択され,次いで,「家庭や地域に任せられる活動はできるだけ任せる」が19.9%で続き,「できるだけ活動を簡素化する(16.0%)」「児童の負担を軽減する(14.3%)」の順に並んでいる。
 これを見ると,やはり学校行事の精選の余地は十分にあるようである。
 たとえば,「形骸化している活動は除く」とあるのは,形骸化している学校行事などが,かなり存在していることを示している。学校行事は長年続いていると,見直しや吟味をする機会を失う。あるいは疑問すらもたず,いつの間にか形骸化してしまうことが多い。
 もう一つ注目したいものに設問36での「学校行事を精選する上で苦慮すること」に対する選択の割合である。「学校生活のゆとりの確保(32.9%)」「授業時間の確保(38.3%)」が上位を占めている。
 昭和50年代における教育界のキャッチ・フレーズ「ゆとりと充実」であったが,まだまだ学校現場では,「ゆとり」の確保が不十分であることを示している。
 さらに「授業時間の確保」も依然として大きな問題として残っていることを示している。学校行事の増大は,授業そのものを圧迫し行事に追われると言う悪循環を招く。さらに学校週5日制の完全実施を目指す今日,さらに,授業時間の確保に大きな影を投げかけていることは事実である。
 学校教育指導方針でも「学校行事の精選や重点化に当たっては,各行事のねらいと各学校の教育目標実現との関連を踏まえ,教育課程全体の中で具体的な検討に努める。」ことを推進している。
(ウ)  「今,特別活動の指導上,今の児童たちに最も育てたい態度や能力は」
図9 今回の調査には「今,特別活動の指導上,今の児童たちに最も育てたい態度や能力は」として設問38を用意した。これは特別活動で非常に重要な部分への質問であり,今後の特別活動の在り方を左右するかもしれない部分を含んでいるが,図9により見てみよう。
 各学校が高い割合で回答してきたものは,「自分の考えを発表したりする積極的な態度」 が57.9%と最も高い。次いで,「協力しながら役割を遂行する力」が53.8%,「異年齢集団の中で協力する態度」43.7%,「集団生活に適応することのできる力」36.2%と続いていく。
 小学校における特別活動では,教師の適切な指導の下に,自主的,実践的に活動することが挙げられている。その目標に迫ろうとする姿勢が「積極的態度」であり「協力」であるから,これらに各学校の回答が高い割合を示したのではないだろうか。
 中央教育審議会が第二次答申の中で「『生きる力』は,自ら学び,自ら考える力など,個人が主体的に・自立的に行動するための基本となる資質や能力をその大切な柱とする」と述べているように,「積極的態度」,「協力」などはまさにこの範疇であり,各学校の進むべき道に誤りはないといえるだろう。
 また,異年齢集団については,クラブ活動のところでもふれたが,今後クラブ活動の中学校,高等学校での廃止の方向を踏まえるなら,小学生の時期に,様々な集団活動を通して,個性を発見し,理解し,そして個性を伸長していくことが重要になろう。異年齢集団はまさにそれを実現する絶好の場であろうと思う。
 また,小学生の時期から「集団の一員として自覚を深め,協力してよりよい生活を築こうとする」という社会性の育成の観点からも,異年齢集団での活動は重要なものになろう。
 「集団生活における適応する力」もまた,「いじめ」や「登校拒否(不登校)」など問題を抱える小学校において十分育てて行かねばならない能力ではないかと考える。それには,児童一人一人が互いに尊重し,理解しあうという原点に立ち戻って指導する必要があり,学級活動その他の特別活動がますます重要になろう。

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