1 調査研究にあたって

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研究の趣旨

 教職教育課の研究事業
 教育に関する専門的,技術的事項の研究事業として,教職教育課では,平成4年度から3か間にわたって「家庭や地域社会との連携を図る学校経営の在り方」に取り組んだ。
 さらに,平成7年度から2か間,領域に関する研究「道徳資料の開発と活用に関する研究」を掲げて,小中学校の12人の研究協力員と共に取り組んできた。
 今次の研究事業を開始するにあたって,本研修センター研究事業の統一研究主題「主体性の育成を図る学校教育」の4か年総括年度であることから,平成9年度は1か年調査研究とした。

 研究主題
 領域に関する研究「望ましい特別活動の指導の在り方」を研究主題とし,その趣旨は,本県における特別活動の指導上の問題点を探り,望ましい特別活動の指導の在り方についての課題を明らかにすることとした。

 主題設定の経過
 特別活動は,望ましい集団活動を通して自主的,実践的な態度を育むことをねらいとして教育課程に位置付けられている。中学校や高等学校では,人間の生き方を探り自己を生かす能力育成も大きな目標に掲げているが,実際はどんな状況であろうか。
 平成8年度小・中学校教育課程実施状況調査によると,特別活動の充実に関して,全体指導計画の重点目標の設定や全職員の共通理解などは概ね満足すべき水準にあるが,特別活動の校内研修は半数近くが実施せず(小学校47.6%,中学校35.2%が実施していない),学級ごとの学級活動指導計画についても十分に活用している割合は, 小学校24.0%,中学校21.5%にとどまっている。また,指導上の課題としては,活動の時間確保が十分にできないとの回答が圧倒的である。そして,今後特に力を入れて取り組む必要がある内容として,児童会・生徒会活動(小学校44.1%,中学校30.1%)と学級活動(小学校46.5%,中学校61.3%)をあげているのを見ると,必ずしも特別活動のねらいに即して学校の教育活動が実践されているとばかりは言いきれないのである。
 また,本研修センターで実施している特別活動研修講座を通して,次のような学校の実態が予測された。
 小学校では,全体指導計画は学校経営の中に位置付けられているが形式的になりがち,学級活動の指導は各学年毎の指導計画が曖昧で時間に追われて計画をこなすのに精一杯の状態,児童会活動では異年齢集団の縦割り班活動が流行っているので高学年でのリーダーシップ養成が課題,クラブ活動では教え込みに頼らずに,自発的,自治的能力を伸ばしていく指導の在り方,学校行事では,地域社会との連携や学校行事精選の問題を抱えながら,子どもを主役にした行事づくりに懸命になっているのが実情であろうか。
 中学校では,生徒指導の対応や部活動指導に追われて,生徒の自主的,実践的な態度を育てる視点に立った指導計画が,十分できていないのではないか。生徒会活動では,生徒を主体とした集会活動や委員会活動に取り組むことに熱心な学校が多くなってきたが,自主性を伸ばしリーダーを育てることが生徒指導上からも課題になっている。クラブ活動については部活動による代替の問題,学校行事の取り組みでは学校週5日制月2回実施のもとでの授業時間の確保と学校生活のゆとりのバランスなどが課題となっているだろうと考えられる。
 また高等学校では,特別活動部の組織を校務分掌上明確に位置付けて,高校教育が抱える課題に具体的対応を模索する動きも目だってきた。生徒指導対策や進学指導体制と特別活動の共存を図りながら,学校生活を充実させていく問題や,ホームルーム活動の指導計画を明確にしてホームルームを単位とした学校生活改善の努力が求められている。その中で生徒会活動など生徒の自主的な活動を育てながら,特色ある学校づくりに取り組む課題などに直面しているようだ。
 さらに平成8年夏に第1次答申を出した,第15期中央教育審議会の動向も特別活動の今後を考えるに見逃せないものがあった。
 この答申では,これからの子どもたち必要となるのは変化の激しい社会を「生きる力」であり,この資質や能力を育てるために学校にゆとりを取り戻すことを提言し,教科内容等の厳選を求めたものである。そして21世紀初頭の学校週5日制完全実施に向けて教育課程審議会が動き出したわけであるが,第1次答申には特別活動に係わる大切な指摘もあった。
 次の表現は,答申第2部第1章「これからの学校教育の在り方」について,これからの豊かな人間性とたくましい体をはぐくむための教育の改善について述べた一部である。
 「これまでにもしばしば指摘されてきたことであるが,よい行いに感銘し,間違った行いを憎むといった正義感や公正さを重んじる心や実践的な態度,他人を思いやる心,生命や人権を尊重する心,美しいものに感動する心,ボランテイア精神などの育成とともに,学校教育においては,特に,集団生活が営まれているという特質を生かしつつ,望ましい人間関係の形成や社会生活上のルールの習得などの社会性,社会の基本的なモラルなどの倫理観の育成に一層努める必要がある。」
 「また,子供たちの発達段階をふまえながら,人間としての生き方や在り方を考えさせる「また,子供たちの発達段階をふまえながら,人間としての生き方や在り方を考えさせることも大切であり,特に勤労観や職業観の育成を図ることの重要性も指摘しておきたい」
 「このような豊かな人間性をはぐくむための教育は,道徳教育はもちろんのこと,特別活動や各教科などのあらゆる教育活動を通じて一層の充実を図るべきであるが,その際には特に,ボランテイア活動,自然体験,職場体験などの体験活動の充実を図る必要があると考える。」
 このような課題を明らかにしようと,「望ましい特別活動の指導の在り方」を研究主題に設定し,特別活動の指導の在り方に関する現状と課題を探るために実態調査に取りかかることにした。統一研究主題の総括年度の関係上,1か年の調査研究になるが,本県の小,中,高等学校の教育活動に生かされることが大きなねらいであるから,指導上の問題点を整理して特別活動の目標に迫るための課題を明確にしたいと考えた。

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