研究主題「インターネットを利用した教員研修について」
2 TV会議
研究の概要  茨城県教育情報ネットワークシステムの「TV会議機能(Live On システム)」は,USBカメラとマイク,イヤホン(ヘッドセット)があれば,遠隔地にある複数のPC間を結んで相手の顔を見ながら会話をすることができる便利なシステムである。
 次の2つの事例は,教員研修や授業等において,このTV会議機能をいかに有効に活用できるか,その可能性を模索するために,本研究の中で試行したものである。
事例1
(教員研修への活用例)
高等学校情報科採用教員(参加者5名)の所属校及び茨城県教育研修センターをTV会議で結び研究協議を行った。
事例2
(授業への活用例)
日立市立諏訪小学校とミュージアムパーク茨城県自然博物館とをTV会議で結び授業を行った。

事例1 茨城県教育情報ネットワークシステムのTV会議機能の教員研修への利活用
日 時 平成21年11月25日(水) 16:00〜16:50
内  容
[事例1]  茨城県教育情報ネットワークシステムのTV会議機能を利用して,高等学校情報科の初任者(1人)と平成17〜20年度情報科採用教員(参加者4人)の所属校及び本教育研修センターをTV会議で結び研究協議を行った。
概要  高等学校情報科の初任者が情報科の授業の近況を報告し,授業での悩みを情報科の先輩教員に相談する形式で研究協議が行われた。なお,本教育研修センター指導主事が進行役を務めた。
参加者の感想  TV会議が終了した後,参加者からは,下記のような感想が寄せられた。
○移動の手間が省けて,校務が忙しいときなどにも時間さえあれば開催可能。出張ではないので,授業交換などをする必要がない。
○画面上に全員の表情が見えるので,目線が気になり発言する際に緊張した。しかし,それが臨場感なのかなという気がした。
○ノイズが入り,参加者の声が聞き取りにくかった。
○ネットの特性を生かし,時間と場所の概念がない。コストもかからない。ネットでの会話も,かなり有効と感じた。
○音が遅れなければ良く聞こえるので,会議等で充分使えるのではないかと思った。
○動画がもう少しなめらかだと,より臨場感が出ると感じた。
○ヘッドフォンではなくスピーカーだと音が二重に聞こえてしまうのは,多人数対多人数の交信では不便である。
○離れた場所どうしで気軽に会話できるのは素晴らしい。
○顔や仕草が見えるので,誤解も少なく,同意の確認も一目瞭然である。
○どのタイミングで発言していいのか,難しいと感じた。
○TV会議システムでの会話内容に関して,システム管理者がどの程度関与(いわゆるのぞき見)できるのか,少し不安である。
○TV会議の司会進行はものすごく難しいのではないかと感じた。
○何か議題があって議論を深めるという形式の会議は難しいと感じた。単純な報告を聞くだけなら上手くいくと思った。
成果と課題   参加者の感想にもあるように,スピーカーで音を出した場合には音が二重に聞こえてしまったり(スピーカーの音をマイクが拾ってしまう関係と思われる),動画の動きが遅いなど,いくつか問題点もあるが,コストをかけずに離れた場所どうしで気軽に会話ができるメリットは大きい。なお,研究協議の後,参加者の協力で検証したところ,音が二重に聞こえてしまうことについては,参加者全員がスピーカーを用いずにヘッドセットを利用すれば防止できることも分かった。
 なお,すべての学校でTV会議を行うために必須のアイテムであるUSBカメラやヘッドセットが揃えることが最大の課題であり,未整備の学校に対してUSBカメラ等の整備を促す必要があろう。
 上述したような問題点や課題はあるものの,今回の試行により,TV会議システムが教員研修における研究協議等において充分活用できることが検証できたと考える。
研究の様子
TV会議の画面(研究協議) TV会議の様子(茨城県教育研修センター)

事例2  茨城県教育情報ネットワークシステムのTV会議機能の授業への利活用
日 時 平成21年11月25日(水) 10:40〜11:25
内  容
[事例2]  茨城県教育情報ネットワークシステムのTV会議機能を利用して,日立市立諏訪小学校とミュージアムパーク茨城県自然博物館を結び授業を行った。
概要  小学校 第4学年 理科 「人の体のつくりと運動」
○動物の骨や筋肉と比べてみよう
  11月19日午後4時20分より,本教育研修センターが進行役となり,諏訪小学校と自然博物館とを結び授業展開について事前打合わせを行った。約30分のやりとりの中で以下のような展開で実施することに決定した。(その後出てきた細かい内容や疑問等については教育情報ネットワークの電子メールで行うこととした。)
○展開
1 動物の骨や筋肉の様子を映像や模型などを使って,人と比較しながら調べる。(30分)
2 児童から骨についての疑問を,自然博物館に質問する。(10分)
3 昆虫の骨について自然博物館に質問する。(5分)
日立市立諏訪小学校の感想 ○4年生の先生から
・子どもたちの質問にすべて分かりやすく答えてくれたことがよかった。専門的に研究している先生でないと対応できないことに答えていただいて,子どもたちが納得することができた。
・普段見られない骨の標本をたくさん見せてもらえたので分かりやすかった。
・機会があったらまたお願いしたいです。
・クイズはとても興味をもって取り組めた。
・骨の標本を見せてもらったときに,小さいものと大きいものを見せてもらえたが,大きさの実感ができなかった。画面いっぱいにでると鶏がダチョウに見えた。
○4年生児童から
・同じ骨でも動物によって付き方が違うことが分かった。
・昆虫は,骨が外側にあることが初めて分かった。
・新しいことがたくさん分かってよかった。
・TV会議は,顔が見えるので,すごく伝わりやすかった。
・遠いところにいる人なのに,時間をかけずにすぐにお話を聞けてよかった。
・音声がもっと聞きやすいとよい。
・お互いに声が少し聞きづらいので,話し方をはっきりさせなければならないことに気付いた。
・緊張していたが,だんだん慣れていくと,聞いたり話したりできるようになったので,またやってみたい。(全員)
○情報主任の感想
 音声の聞きづらさの問題があった。パソコンを利用するので,スピーカーが小さく,高音が強調されてしまいがちであった。学校には外付けのものがそろえづらい。音声のやりとりで,簡単な方法をTV会議入り口Webあたりに,なにか具体的に示してはどうだろうか。
 逆に,上にもあるとおり,はっきりとした音声,声の大きさなどをわれわれも子どもたちも意識できたことは,情報伝達ということを意識できたという点で収穫となった。
 なお,音質をよりよくする設定があったかどうか確認していませんが,重要だと思います。
自然博物館久松正樹学芸員の感想 ○TV会議システムについて
 相手の画面,音声等,不具合なく通信できたと思います。解像度を必要としない授業ならば,活用できると思います。ホワイトボードの機能は優れていると感じました。今回は,準備した骨の図を入れ込んでみましたが,操作も容易なので,工夫次第では,さらに発展的に使えると考えられます。それから,図を挿入してから文字入力で“相同器官”と入れようとしましたが,できなかったため,ペイントで記しました。使い方のマニュアルがダウンロードできると良いかもしれません。博物館側からの映像のピントが,甘かったような気がします。これは道具の使い方ができなかったのかもしれません。ファイル送信機能やチャット機能も面白いと思いました。使える場面があると思いました。
 全体的に,さまざまな工夫があり,指導者の工夫次第で,いろいろな授業形態に対応できる機能も備えていると感じました。若干,音声や動作が遅れたりずれたりすることがあります。こんな時,こんな使い方ができるといった事例集があると利用しやすいと思います。モバイルパソコンの導入が可能ならば,野外からの質問にも答えられるでしょう。
○TV会議を利用した授業について
 大荷物を抱えて学校訪問をすることなく,授業が行えた点,よかったと思います。最初の構想では,博物館から一方的に話した後に,質問のやりとりを行う予定でした。しかし,双方向通信の醍醐味は,お互いに話せることなので,授業の始めにクイズを行いました。キリンやビーバーの頭骨を子どもたちの反応にあわせて見せることができたのは,よかったと思います。動機付けになったと思います.博物館の研究者の話ということなので,ちょっと難しい“相同器官”についても触れてみました。
 博物館が,TV会議等で外部講師として授業にかかわる場合,今回のように1時間全部でなく,「今日の授業ではこのことについて説明してほしいので,こんな役割をしてほしい」という明確な指示をしていただければ,お互いにあまり負担なく,普段の授業での効果的な交流が可能かと思われます。
成果と課題  近年は,学校の授業の形態も多様化し,地域の人材の活用や関係機関との連携など外部講師の利用も活発に行われている。その効果については異論のないところではあるが,事前の打合わせや経費等の面で先生方や学校への負担は増加しているのが実状である。今回の事例は,第一にその点での負担軽減がみこまれるものである。TV会議システムを利用すれば,教室にいながらにして,事前打合わせが可能になる。
 第二に,授業においては,本物の資料(骨格標本等)を目の当たりにできるばかりではなく,研究者の視点による,ポイントを絞り込んだ観察等も可能になる。児童の疑問等にも豊富な資料を基にした臨機応変な対応が可能となる。さらには双方向の会話ばかりでなく,お互いに文章を打ち込んだり図を描いたり,資料をファイルで送ったりと数多くの機能を効果的に利用できることも確認できた。
 児童の感想からも,楽しく意欲の高まるものであることは間違いない。授業の中での利活用はとても発展性のあるものである。今後も企画実践を進め,各校の事例を紹介したいと考える。
研究の様子
TV会議画面(サルの骨格標本の提供) TV会議画面(ホワイトボードの利用)
児童から自然博物館学芸員への質問 日立市立諏訪小学校児童の様子

※ TV会議を利用したつくば市の研究発表会の様子



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